ぺこぱ独占インタビュー【前編】「ノリツッコまないボケ」はこうして生まれた

2020.2.5
ぺこぱ

文=清田隆之 写真=石垣星児
編集=田島太陽


お笑いの「次の10年」を考える、QJWebの「【総力特集】お笑い2020」
ミルクボーイにつづく独占インタビューは、M-1で衝撃的なインパクトを残したぺこぱ。

「ノリツッコまないボケ」(by松本人志)という新しいスタイルが話題となり、年明けから多くのメディアに出演。南海キャンディーズやオードリーなど、優勝を逃しながらも大きな爪痕を残し、その後も最前線で活躍する芸人たちにつづいて、次の10年を牽引するのはこのふたりかもしれない。

M-1以降で初となるロングインタビューを、前後編でお届けする。


結成から12年。今なおつづく“お試し期間”

2019年12月22日。優勝候補のかまいたち、敗者復活戦で勝ち上がった和牛、そしてM-1史上最高得点を叩き出したミルクボーイ。最終決戦はこの3組で決まりか──。そんな空気の漂うなか、最後のひと組として登場した。
あの日のことを、ふたりはこう振り返る。

シュウペイ 舞台裏にいた芸人はみんなソワソワしてました。特に序盤でかまいたちさんと和牛さんが高得点を出して以降、「これどうすんの?」「このあと誰が番狂わせすんの?」みたいな空気になって。みんなタバコぶわーっと行くし、僕なんて途中でミルクボーイの内海さんとふたりきりになっちゃって、でも初めましてだし声かけるのもな……って、ちょっと気まずい思いをしたのを覚えてます。

松陰寺 でも、ミルクボーイさんにすごいのを見せつけられて、逆に力が抜けたよね。あとはもう、自分たちのできることをやるだけだなって。「笑神籤(えみくじ)入ってないのかな?」って疑ってたんですが、結果的にラストの出番でよかったですね。気持ちの準備をしてから舞台に行けるので、ふたりで話す余裕もあって。

シュウペイ これまでで一番リラックスしてたかもね。「M-1に出てるな〜」って、これはもう楽しもうって思って。

松陰寺 3回戦ぐらいから、決勝でやった2本のネタしかやってなかったんですよ。どのライブに出ても、あのネタをちょっとずつ変えただけで。だからネタが飛ぶ心配もまったくなかった。M-1でやるにはこれくらいやり込まなきゃいけないんだなって。

シュウペイ 僕でさえ間違えませんでしたからね。

松陰寺 そうそう、普段はよく間違えるのに(笑)。

ふたりの漫才は尻上がりに笑いを巻き起こし、3年連続準優勝という和牛をわずか2点差でかわしてM-1トップ3に食い込んだ。
コンビ結成12年目。事務所の移籍やキャラの模索など、これまで数え切れない紆余曲折を経験してきたふたりに、まずはフィストリー(ヒストリー)から話してもらった。

ぺこぱ独占インタビュー【前編】「ノリツッコまないボケ」はこうして生まれた
(左)シュウペイ  1987年7月16日生まれ、神奈川県出身。@shupei0716
(右)松陰寺太勇(しょういんじ・たいゆう)1983年11月9日生まれ、山口県出身。@yutamatsui1109

松陰寺 ぺこぱのフィストリーを振り返ると、まずは僕がもともと「松井祭」という名でピン芸人をやってて、どうしてもコンビが組みたくてバイト先で彼を誘って……って、どれぐらいざっくり行こうか。

シュウペイ ちゃんとピックアップするところはしたほうがいいよ。出会いと結成の秘話は絶対に言わないとダメだよ。

松陰寺 ああ、オッケー、オッケー。当時は渋谷の鳥良って居酒屋でバイトをしてまして、新人として洗い場で働いてた彼に声をかけたのがきっかけです。そのころシュウペイは雑誌でしか見たことないようなギャル男で、話しかけたら「あ、エイッス!」って返事もギャル男で。聞けばフリーターだって言うから何か目指してる人なのかなと思いきや、「とりあえず伝説作りたいッス」って(笑)。それで興味を持って「コンビ組まないか?」と誘ったんです。

シュウペイ 最初はずっと断ってたんだよね。だって知らない人がいきなり「お笑いやろう」っておかしいですよね? 試しにライブを見に来いって誘われたけど、行ったら全然おもしろくなくて……そんな人とコンビ組めないよって思うじゃないですか。

コンビ結成当時のふたり
コンビ結成当時のふたり

松陰寺 でもそこから半年誘いつづけて、1回お試しでライブに出ようってなったんです。昔オードリーさんとかも立ってた中野の「Studio twl」っていう劇場だったんですけど、ギャル男の人脈パワーで会場が友だちで満員になっちゃって、しかもライブはお客さんの投票制だったからそのまま優勝しちゃったんですよ。

シュウペイ それで「オリラジ(オリエンタルラジオ)さんみたいに1年目から売れるんじゃね?」って勘違いして、とりあえずお試しで組むことになりました。僕の中では今でもお試し期間なんですけどね(笑)。

シュウペイのツッコミに向けられた「嫌な笑い」


この記事の画像(全18枚)


この記事が掲載されているカテゴリ

Written by

清田隆之

(きよた・たかゆき)1980年東京都生まれ。文筆業、恋バナ収集ユニット「桃山商事」代表。早稲田大学第一文学部卒業。これまで1200人以上の恋バナを聞き集め、「恋愛とジェンダー」をテーマにコラムやラジオなどで発信している。 『cakes』『すばる』『現代思想』など幅広いメディアに寄稿するほか、朝日新聞..

CONTRIBUTOR

QJWeb今月の執筆陣

酔いどれ燻し銀コラムが話題

お笑い芸人

薄幸(納言)

「金借り」哲学を説くピン芸人

お笑い芸人

岡野陽一

“ラジオ変態”の女子高生

タレント・女優

奥森皐月

ドイツ公共テレビプロデューサー

翻訳・通訳・よろず物書き業

マライ・メントライン

毎日更新「きのうのテレビ」

テレビっ子ライター

てれびのスキマ

7ORDER/FLATLAND

アーティスト・モデル

森田美勇⼈

ケモノバカ一代

ライター・書評家

豊崎由美

VTuber記事を連載中

道民ライター

たまごまご

ホフディランのボーカルであり、カレーマニア

ミュージシャン

小宮山雄飛

俳優の魅力に迫る「告白的男優論」

ライター、ノベライザー、映画批評家

相田冬二

お笑い・音楽・ドラマの「感想」連載

ブロガー

かんそう

若手コント職人

お笑い芸人

加賀 翔(かが屋)

『キングオブコント2021』ファイナリスト

お笑い芸人

林田洋平(ザ・マミィ)

2023年に解散予定

"楽器を持たないパンクバンド"

セントチヒロ・チッチ(BiSH)

ドラマやバラエティでも活躍する“げんじぶ”メンバー

ボーカルダンスグループ

長野凌大(原因は自分にある。)

「お笑いクイズランド」連載中

お笑い芸人

仲嶺 巧(三日月マンハッタン)

“永遠に中学生”エビ中メンバー

アイドル

中山莉子(私立恵比寿中学)
ふっとう茶☆そそぐ子ちゃん(ランジャタイ国崎和也)
竹中夏海
でか美ちゃん
藤津亮太

QJWebはほぼ毎日更新
新着・人気記事をお知らせします。