ぺこぱ独占インタビュー【前編】「ノリツッコまないボケ」はこうして生まれた

2020.2.5


「いやおかしいだろ……って言ってる俺はなんなんだ!」

──過去の動画なども拝見して、ド派手な着物にローラーシューズという奇っ怪な出で立ちでキザなキャラクターを演じる松陰寺さんがものすごいインパクトでした。

松陰寺 漫才中にも「キャラ芸人になるしかなかったんだ!」と叫んでますが、あれはかなり本心で、僕自身は顔もおもしろくないし、とにかく武器や特長が欲しかったんですよね。鳴かず飛ばずで、これで売れなかったらもう辞めようと思ってたくらいの時期だったので、もう思いつくことは全部やろうってなって、着物キャラのままツッコミをやってたんですよ。

松陰寺が着物を着ていたころのぺこぱ
松陰寺が着物を着ていたころのぺこぱ

シュウペイ 僕は一切おもしろいとか思わなくて、「大丈夫なの?」みたいな感じでやってました。2年に一度ぐらい「売れるネタできた!」って言ってくるんですけど、出たよ、また出たよー、みたいな(笑)。それでどんどんキャラ変していったんですけど、一応ネタを書いてもらってるんで、そこはちゃんとやろうっていう気持ちで。

──正直(笑)。

シュウペイ お客さんの反応を見ていろいろ気づくという感じでした。僕よりお客さん目線でやったほうが笑いやすいものになると思うんですよね。それで「あ、これっておもしろいんだ」って方向に進んでいってたら今のスタイルに至ったという。

松陰寺 着物姿で「なんでだよ!」「フォカしいだろ!」とかってツッコミを入れてたわけですが、「いや、おかしいのはお前だろ」って話じゃないですか。

シュウペイ お客さんの目線がツッコミになってたよね。

松陰寺 そうそう。お客さんの中にある「こう来るだろう」っていうのをさらに裏切りたいと思って、「いやおかしいだろ……って言ってる俺はなんなんだ!」みたいに言ってみたら、今まで感じたことのないようなウケ方をしまして。それで「これを突き詰めてみよう」と思ったのが今のスタイルになったきっかけです。

わりと軽めな動機でお笑いの世界に飛び込み、幾度とないキャラ変や試行錯誤の積み重ねによって「ノリツッコまないボケ」を発明したぺこぱのふたり。あの斬新なスタイルは「人と違うことをやらねば」「お客さんの予測を裏切りたい」という芸人魂の結晶とも言えるのかもしれない。インタビュー後編では、M-1ファイナリストに至るまでの苦労話や、ぺこぱの漫才に宿る優しさの秘密に迫る。

ぺこぱ独占インタビュー【前編】「ノリツッコまないボケ」はこうして生まれた

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清田隆之

(きよた・たかゆき)1980年東京都生まれ。文筆業、恋バナ収集ユニット「桃山商事」代表。早稲田大学第一文学部卒業。これまで1200人以上の恋バナを聞き集め、「恋愛とジェンダー」をテーマにコラムやラジオなどで発信している。 『cakes』『すばる』『現代思想』など幅広いメディアに寄稿するほか、朝日新聞..

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