『バスカヴィル家の犬』で見せたドラマとは異なる魅力
『バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版』は、ドラマ『シャーロック』(フジテレビ)の映画進出バージョンだが、コナン・ドイルの原作から自由に発想していたテレビシリーズとは異なり、名探偵シャーロック・ホームズが活躍する小説群の中でも最高傑作と言われながら、最もイレギュラーな形式でもある『バスカヴィル家の犬』から出発している。
この小説は、ホームズとワトソンの二人三脚ではなくワトソンの冒険を描いている。だから、今回の映画では、少なくとも前半は、若宮=ワトソン(岩田剛典)の単独行動であり、獅子雄=ホームズ(ディーン・フジオカ)は遠くから見守るリモート相棒なのだ。
このことが、連ドラとは異なる作品風情を醸し出しているだけではなく、バディがソロになったときの本質を垣間見せて実に興味深い。
ドラマ『シャーロック』では、その高い演技技術力で、ディーンとの呼吸を華麗にクリエイトしていた岩田は、映画『バスカヴィル家の犬』においては、【山の上のお屋敷】という舞台設定を得て、精霊的なキュートさと、動物的な純粋好奇心を全面的に発揮して、ぐいぐい事件の謎に飛び込んでいく。
前述したような冷ややかさや、獰猛さは、ここにはない。だが、人間ならざる愛らしさが充満している。
ラストでは、誰もが予想できなったことが起きる。それをここで記すわけにはいかない。
だが、この俳優を見つめてきた者なら、きっと呟くことだろう。
岩田剛典はやはり大自然と相性がいいのだ、と。
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『バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版』
2022年6月17日(金)全国東宝系にて公開
監督:西谷弘
脚本:東山狭
原案:アーサー・コナン・ドイル「バスカヴィル家の犬」
出演:ディーン・フジオカ、岩田剛典、新木優子、広末涼子、村上虹郎、渋川清彦、西村まさ彦、山田真歩、佐々木蔵之介、小泉孝太郎、稲森いずみ、椎名桔平
配給:東宝
(c)2022「バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版」製作委員会関連リンク
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