山﨑賢人論──エレガンスとフレグランス。山﨑賢人の気品と薫りが、不可能を可能にする。

(c)2021 映画「夏への扉」製作委員会
文=相田冬二 編集=森田真規


1956年にアメリカで発表され、タイムトラベル小説の金字塔として世界中で今も愛されているロバート・A・ハインライン『夏への扉』。その全世界初の映画化『夏への扉 ―キミのいる未来へ―』(6月25日公開)で、主演を任されたのが山﨑賢人だ。

『ヲタクに恋は難しい』『キングダム』『斉木楠雄のΨ難』『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』など、数々のマンガ原作の映画で主演を務めてきた山﨑賢人が持つ稀有な才能とは──。

ライターの相田冬二が、俳優の奥底にある魅力に迫る連載「告白的男優論」の第5回、山﨑賢人論をお届けする。

【関連】豊川悦司論──卑小な人間を形にしてこそ役者。豊川悦司は平然と、すべてを肯定する。


どんな作品もいとも平然と背負い、己の仕事をやり遂げる

彼の出演作をきちんと観たことがない人でも、マンガの実写映画化作品でよく見る名前、という認識はきっとあるだろう。また、そのことを理由に、自分とは縁のない俳優、と決めつけている可能性もある。

爽やかなイケメン。わずか8文字ほどの思考停止した物言いで、山﨑賢人を捉えているのだとしたら、それは大きな損失だ。なんの、損失か。あなたの、芸術体験の損失である。

事実、山﨑賢人は、マンガ原作が多い。マンガ原作が多いのは、日本映画メインストリーム全体のひとつの傾向だから、こう考えるほうが自然だ。

【日本映画は、山﨑賢人を頼りにしている。】

マンガがマンガである以上、その読者であろうとなかろうと、実写化不可能、と形容しがちではある。まあ、それも、ひとつの傾向に過ぎないのだが、マンガ原作アニメーションに対しては(属性が近いからなのだろうか)、たとえ、キャラクターデザインが大きく変化しているとしてもほぼ容認されてしまうのに対し、マンガ原作実写映画には、どうにも風当たりが強い。

アニメが、必ずしも、マンガを十全に【動かしている】わけでもないにもかかわらず、アニメに対してはなぜかかなり甘々だからこそ、その反動として、やっぱり実写じゃ無理、と(キャスティング発表の段階で)断罪してしまう辛めの観客対応が見受けられる。これもまた、ひとつの傾向。そして、そうした人々は結局、観ないで批判(批評ではない)を終了してしまう。消費する、と言い換えてもよい。それもまた、ひとつの傾向に過ぎない。

映画会社は、こうした批判をある程度覚悟した上で、ひたむきにクオリティを追求している。そのとき、託するに値する演じ手のひとりが、山﨑賢人だ。

なぜか。
彼ならば、担ってくれるからだ。

マンガのキャラクターを生身の人間が体現するという、ある意味、無謀な挑戦を引き受け、確かな映画の形に昇華する技量の持ち主だからだ。

彼には、その実績がある。困難な闘いに挑むとき、集団が必要とするのは誰か。間違いのない存在だ。この人に任せれば大丈夫。その確信がなければ、集団は動けない。

だから、山﨑賢人には、常に大きな負荷がかかっている。しかし、彼はいとも平然と、どの作品も背負い、優雅な勇ましさと、新しい余韻を携えながら、確実に、己の仕事をやり遂げている。

『夏への扉 ―キミのいる未来へ―』で主演を務めた山﨑賢人

その演技のアプローチは、映画によって異なる。だが、終わったあとの余韻は不思議に一致している。アクティブな作品も、ナイーブな作品も。

すがすがしい。

彼は、やるべきことを、やった。そのカタルシスに、毎回エンドクレジットあたりで、静かに豊かに満たされる。山﨑賢人の映画を見つめることの感動は、私の場合、この点からももたらされている。

山﨑賢人は、信頼できる。

山﨑賢人が顕在化させる“人間のピュアネス”

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相田冬二

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