空気階段のケンカも苦労もブレイクも、すべてが私にとっては“蜜の味”|奥森皐月は傍若無人 #2

2021.5.28


歴史に残るべき音源「水川かたまり号泣プロポーズ」

空気階段 鈴木もぐら 水川かたまり
空気階段(空気階段が単独ライブで決着をつけた離婚話と、かたまり新恋人の真相/写真=長野竜成)

借金やギャンブルという印象の強いもぐらさんの陰で、実はより激しい荒波に揉まれているのがかたまりさんだ。この3年半の印象的な出来事を手短に説明する。

彼女にフラれて、号泣しながらプロポーズをして、失敗して、1年後にはその彼女と復縁して、その後のプロポーズは成功して、幸せな結婚生活を送って、11カ月で離婚して、ビジュ爆発して、新しい彼女(ミニーちゃん)ができた。この間に『キングオブコント』の決勝進出や『踊り場』の枠移動もあったが、今回着目したいのはあくまでかたまりさんの人生だ。

『空気階段の踊り場』の神回といえば第79回「水川かたまり号泣プロポーズ回」だろう。

この放送が波紋を呼び、各所で話題となった。つらくて、悔しくて、悲しくて、苦しい、それでも愛する人に気持ちを伝える。人間剥き出しの声が収録された、歴史に残るべき音源である。

儚くて切ない展開に、心がムズムズした。恥ずかしくて、輝かしいと感じた。

そして、2020年に結婚。この瞬間、かたまりさんのストーリーはひとつ幕を下ろす。以前までの恋愛トークは聞けなくなり、家庭を持つふたりの安定したトークが聴けるようになるということ。これはとても感慨深く、同時に少しだけ心寂しかった。

展開が多くてめまいがするような人生

ところが結婚してわずか11カ月で離婚。人生そう簡単にうまくいかないのだと、16歳の私は思い知らされた。

ただ、ここでもやはりかたまりさんの進化が見えたと思う。今までなら事あるごとに大声を上げ、泣き叫んでいたかたまりさんだが、離婚発表のときは恐ろしく冷静であった。感情の整理がついていたにしても、あそこまで平静を保っていたのはすごい。大人になったね、という今まで味わったことのない感情が芽生えた。

しばらくは、恋愛もないか。またかたまりさんの恋の話もいつか聴きたいな、と思っていた矢先。離婚後わずか3カ月で新しい彼女ができたことが発覚。もはや、リスナーを楽しませるための人生であると言ってほしい。そうでないのであれば、たたみかけ過ぎている。展開が多くてめまいがする。そして、それが最高に楽しい。

新しい事実が発覚すると、すぐにみんなで寄ってたかって真相を聞く。こういうときのもぐらさんのジャーナリズム精神はすごい。リスナーが知りたいことをすべてかたまりさんにぶつけてくれる。

クラス内で隠れて付き合ったカップルが、次の日にはクラス中にバレている。そしてクラス中から茶化される。『踊り場』の空気感は、いつまでも学生のままな気もする。聴いている私も、クラスメイトの男の子を見ているときと同じ気分を味わっている。

空気階段の生き様が自分の原動力だ

“ラジオ変態”奥森皐月インタビュー
奥森皐月(奥森皐月インタビュー「ラジオは永遠に残りつづけるし、一緒に人生を歩んでいきたい」/写真=山口こすも)

「他人の不幸は蜜の味」というが『空気階段の踊り場』に対して思うのは「他人の幸も不幸も蜜の味」だということ。

ふたりが成功すること、売れることは当然うれしい。自分のことのように喜んでしまう。そして反対に、ふたりが苦労しているとき。申し訳ないとは思うが、この時間も楽しい。コンビ間でケンカしていても、つらい出来事に直面していても。

ラジオを通して俯瞰で見ていると、人間らしく必死にもがく姿に元気をもらえる。空気階段の生き様が自分の原動力だ。サイコゥサイコゥサイコゥ。テレビで空気階段を観るたびに、人は変われるのだと実感する。そして私も空気階段を追いかけてがんばろうと思えるのだ。

ふたりの人生をのぞき見していたつもりが、いつしか影響を受ける立場に変わっていた。本当に踊り場で踊らされているのは私たちなのだろうか。

連載「奥森皐月は傍若無人」は、毎月1回の更新予定です。


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奥森皐月

(おくもり・さつき)女優・タレント。2004年生まれ、東京都出身。3歳で芸能界入り。『おはスタ』(テレビ東京)の「おはガール」、『りぼん』(集英社)の「りぼんガール」としても活動していた。現在は『にほんごであそぼ』(Eテレ)にレギュラー出演中。多彩な趣味の中でも特にお笑いを偏愛し、毎月150本のネタ..

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