これぞクドカンドラマ! 親の介護、息子の学習障害と多動症…重い問題をコメディに仕立て上げる『俺の家の話』(てれびのスキマ)


昨日観た番組とそこで得た気づき、今日観たい番組などを毎日更新で綴る、てれびのスキマによる2021年のテレビ鑑賞記録。


『俺の家の話』

待ちに待った宮藤官九郎の新作。これぞクドカンドラマ!これぞ長瀬智也!という最高の第1話だった。宮藤作品はわりと1話で最初から独特の世界観全開で視聴者を振るい落としてしまうイメージがあるけど、今回はテンポもそれほど早くなくかなり間口を広げた感じがする。

能の宗家の息子が、父親との「ただひとつの共通言語」だったプロレスの世界に「父親に褒められたい」一心で足を踏み入れる。「プロレスっていいなあ。反則しても血が流れても、なんか節度があって品があっていい」という父親の言葉に能との共通点を感じずにはいられない。

「初めて長州と対戦した年に結婚、武藤と対戦した年にマンションを買い、蝶野と対戦した年に男の子が生まれた」という経歴からはけっこうすごいプロレスラーであることが想像できるが、そのあと、海外に武者修業に。プエルトリコで大ケガを負う。

プエルトリコへの海外遠征というと日本のレスラーなら若手が行くコースというイメージがあるけれど、きっと「ブルーザー・ブロディに憧れている」という設定だから(ブロディはプエルトリコ遠征中に死去)なのかなとか、そのあと加入した団体「さんたまプロレス」になぜか長州がいるとか、いろいろ設定を深読みできるような小ネタは今回も健在。

長州もちょっとしたカメオ出演かと思ったら「俺たちが勇気を振り絞るのはリングシューズを履くときじゃねえんだよ! 脱ぐときなんだよ!」「お前が決めてどうすんだ!」など印象的なセリフも。

「集まれやすらぎの森」「カトちゃんパターン」「呪いの儀式」とか宮藤官九郎らしいフレーズも満載だし、西田敏行はもちろん、江口のりこや戸田恵梨香のハマりっぷりも最高。自宅など以外、普通にみんながマスクしているのもいい。

扱っている題材は親の介護、相続や跡継ぎ問題、息子の学習障害と多動症、後妻業疑惑……と重い問題ばかり。それをめちゃくちゃ笑えるコメディに仕立て上げるのはさすがとしか言いようがない。

多動症の孫とかけ合いながら行った認知症テストの切なさはものすごかった。野菜の名前が出ず落ち込む父親に「別にいいだろ。あんた八百屋じゃないんだから」とぶっきらぼうに言う息子。本当に長瀬智也でしか醸し出せない味があった。つくづく得難い俳優だと改めて思う。

『かりそめ天国』

ゴミ袋の話から、有吉が「後輩のゴミの専門家」=マシンガンズ滝沢の話をして、「ゴミの専門家の相方」の西堀の話に。

滝沢は小池都知事とも対談しているのに「お前はアイツに比べて何もしてないな」と罵倒していたら、昨年12月「発明学会」主催の「身近なヒント発明展」で西堀は「靴ブラシハンガー」なる発明をして応募総数1304点のうち10点しか選ばれない「優良賞」を受賞したという。

「発明家になろうとしてる(笑)」「僕と同級生のおじさんが家でそんなこと考えてる。笑っちゃってさあ」と話す有吉。「まさか後輩に発明家ができるとは思わないじゃない(笑)」。

発明家とゴミの専門家のコンビは「もうそれ、芸人じゃない」と笑う。ずっと気にかけ仲がいい後輩の思わぬ方向での活躍になんだか終始うれしそうに話していたのが印象的だった。

この話に触発されたマツコは「あたし、それいけるよ。日頃ものすごい不満がありながらやってるから!」と言いつつ、何やら考え始め「ハッ」と閃いた素振りを見せる。有吉「今ここで閃くようなもんじゃないから。発明って。発明、ナメんなよ!」。


『千鳥のクセがスゴいネタGP』

JPと原口あきまさによる松本人志&東野幸治の『ワイドナショー』再現は観るたびにすごさが増す。しかも「台本一切なしのフリートーク一発撮り」だというのにさらに驚いてしまう。

グランプリに輝いたのは瑛人の「香水」を歌って「ドルちゅえ~い♪」と鮮やか過ぎるオチをつけたちゅうえい。大悟「瑛人の『香水』の手をつけてないところ、まだあったんや!」。

今日観たい番組:マヂカルラブリー出演『さんまのお笑い向上委員会』など

『人志松本のすべらない話』(フジ)ジュニア、大輔、小籔、飯尾、麒麟・川島、粗品、アンガールズ田中、兵動、かまいたち山内、R-指定、清塚信也、三谷幸喜。

『勇者ああああ』(テレ東)は「リズム-1グランプリ」。

『ゴッドタン』(テレ東)は「劇団ひとり舎弟オーディション」。

『さんまのお笑い向上委員会』(フジ)向上ゲストにマヂカルラブリー。

『あざとくて何が悪いの?』(テレ朝)に山田孝之。

『伯山カレンの反省だ!!』(テレ朝)に速水もこみち。

『SWITCHインタビュー 達人達』(Eテレ)は「篠原ともえ×春風亭一之輔」。

『SONGS』(NHK)は「密着!大泉洋紅白歌合戦SP」。

小芝風花主演『モコミ』(テレ朝)開始。



  • 【連載】きのうのテレビ(てれびのスキマ)

    毎夜ライフワークとしてテレビを観つづけ、テレビに関する著書やコラムを多数執筆する、てれびのスキマによる連載。昨日観た番組とそこで得た気づき、今日観たい番組などを毎日更新で綴る、2020年のテレビ鑑賞記録。

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てれびのスキマ

1978年生まれ。ライター。テレビっ子。著書に『タモリ学』(イースト・プレス)、『1989年のテレビっ子』(双葉社)、『笑福亭鶴瓶論』(新潮社)、『全部やれ。日本テレビ えげつない勝ち方』(文藝春秋)など。

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