ジャズやソウル、ヒップホップの要素を取り入れながら、独自のサウンドで日本のR&Bシーンを牽引するバンド・WONK。メンバーの4人は、WONKとしての活動だけでなく、複数の顔を持つ。
ボーカリストの長塚健斗は料理人としても活動し、ベーシストの井上幹はWONKの作曲・編曲だけでなくレコーディングやミキシングエンジニアも務める。ドラマーの荒田洸は個人としてボーカリストやプロデューサーなどの活動も広げ、キーボディストの江﨑文武は所属レーベルのEPISTROPHで各種グラフィックも手がける。
個人でも活動が完結する彼らが、WONKとして、4人で集まって活動する意味はなんなのか。音楽制作やライブ活動など、様々な角度から話を聞いた。
※本記事は、2019年8月23日に発売された『クイック・ジャパン』vol.145掲載の記事を転載したものです。
YouTube時代の音楽制作は、トライ&エラーが分散する
―─昨今のポップ・ミュージックをとりまく状況を、みなさんはどう見ていますか?
長塚健斗(以下、長塚) 僕らみたいにYouTubeで育ってきた世代は、昔より手軽に楽曲制作ができて、その楽曲をすぐに自分で売ることができるので、そういう点では敷居が下がってるように感じてますね。若い人たちも手軽にiPadで曲を作ったりしてるし、より表現しやすくなってきてるんじゃないかな。
─―時代やテクノロジーの恩恵を受けているということ?
長塚 ええ、たしかにそれはあると思います。
井上幹(以下、井上) システム面で言うと、これまでの楽曲制作は「スタジオに集まってみんなで一緒に音を出す」というのが大きな流れでしたけど、僕らのやり方はそれとまったく違っていて。誰かひとりがパソコンで作ったものをネット上にアップロードしたら、それにほかのメンバーが自宅で素材を追加していくような組み立て方なんです。そのやり方だと自分の手癖じゃないところで表現できるし、そこに自分以外の人間が参加できることによって、トライ&エラーがかなり簡単になるというか。
江﨑文武(以下、江﨑) トライ&エラーが分散するんだよね。それってすごくおもしろいなと思っていて。「せーの」で演奏していくセッション形式はバンド全体の総意が形成されてから進んでいくけど、今の僕らの制作スタイルはひとりのトライ&エラーが数時間くらいあって、その成果が上がったら、さらに別の人がトライ&エラーを繰り返して、またその結果が作品に反映されていくんです。個のスキルがあることが前提にはなるんですけど、このやり方だとひとつの作品に対してみんなの頭をそれぞれフルに使えている気がするんですよね。
荒田洸(以下、荒田) それまでの手法に飽きたっていうのもあるよね。それはいわゆるスタジオでの作業に飽きたっていうのもあるし、今回リリースした『Moon Dance』がコンセプチュアルな作品になったのもそう。自分たちのやり方もある程度は確立されたし、ここでなにかひとつ作品のテーマを設けてみようと。そういう作り方って、僕らは今までやったことがなかったんです。
江﨑 軸となる楽器への飽きもありますよね。鍵盤を軸にした作り方に少し限界が見えてきたから、次はギターで作ってみよう、とか。
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