m-floが語る差別とアイデンティティ「日本人にも韓国人にもなりきれない」「目の色が違うからダメ」

2020.1.15
m-flo_main

取材・文=春日正信


20周年記念ライブを成功させ、LISA復帰後の初のアルバム『KYO』をリリースするなど、2019年はアニバーサルイヤーに相応しい活躍を見せた3人組ユニット、m-flo。

コロンビア人の母親と日本人の父親を持つLISA、在日韓国人のVERBAL、インターナショナルスクール育ちの日本人TAKUという出自の異なる3人が、1999年のメジャーデビュー時に『クイック・ジャパン vol.25』に初登場し、“差別”や“アイデンティティ”について赤裸々に語り尽くした。

そのインタビューをウェブで初公開する。

※この記事は1999年6月に発売された『クイック・ジャパン』vol.25に掲載されたインタビューの転載です。


日本に住んでるのに日本になじめない

クイック・ジャパン vol.025
『クイック・ジャパン』vol.25

―――まず、みなさんの子供の頃の話から聞きたいんですが、いいですか?

VERBAL じゃ、僕からはじめに。僕、生まれた頃に横浜から目黒に引っ越して、それ以来ずっと目黒区に住んでたんですけど、幼稚園の頃、いじめっていうのを受けまして。それは幼稚園内のいじめじゃなくて、僕が韓国人だって知ってる近所の中高生から肉体的な暴行を受けたりとかして。

でも、うちに帰って「ママー」って言うとお母さんがフライパン持って出てきてくれたり(笑)。そういう人種差別的な経験があって、自分が韓国人だということにコンプレックスを持っちゃって、日本人みたくなろうとして、でも、なろうとしてもなりきれない。韓国人になりきろうとしても、やっぱりなりきれない。

小学校5年生か6年生の時にお母さんがアメリカで勉強するからついて行って、「日本人になりきれない、韓国人になりきれない」っていうのもありながら、今度はアメリカ人になりたいんだけど、アメリカ人にもなりきれない。

TAKU 俺たちの場合、小学校からアイデンティティ・クライシスを感じてきたとこあるよね。日本に住んでるのに日本になじめない。

LISA 私、見た目こうなんですけど日本人なんで、やっぱ、いろいろありまして。ちっちゃい時とか、「地元の子と遊びたい、みんなと一緒にカンケリしたい、かくれんぼしたい」っていうのがあるんだけど、「おまえだけ目の色が違うから、だめ!」って言われたり、目の中に唐辛子入れられたり。バケツに唐辛子がいっぱい砕いてあって、その中に頭ガーッて突っ込まれて、目がこんなんなって腫れちゃって、家に帰ったらうちのお母さんも「なんでうちの娘がこんなことされてしまうんだろう」って泣いちゃって。

そこで、「LISAって周りと違うのかなあ、みんなと遊びたいのに、違うのかなあ」って意識しはじめたんですよ。でも、パパも日本人だし、家でしゃべる言葉だって日本語だし、食べるものも、納豆も寿司のお魚もみんな一緒なのに、「違う」っていう扱いをされて。人種差別的なことって、私の人生の中ですごい大きなエピソードなんですけど……。

―――よかったら、話せる範囲でいいんで聞かせてください。

LISA もう、全然(笑)。もうね、強くなりました。 私、16ぐらいから学校を辞めて音楽の仕事を始めてるんですけど、いつも言われるのが、「日本人なのにそういう顔だと、どういうふうに売り出せばいいのか分からない」。私の音源を聴いてレコード会社の人が来るんですけど、「こんな外人の顔じゃ、仕事はできない」。ちょっと失礼極まりないっていうか、「あなた、私、日本人なのよ。私のことを“イエロー・ニガー(※1)”な扱いするんじゃないよ」って。でも、今はm-floがあるから、それで見返したい人っていうのはいっぱいいるんですよ、この業界で。フフフッ(笑)。

―――見返してくださいよー(笑)。でもよかったですね。つらいことがあったから出会えたのかもしれないですね。

LISA ほんとにそうなんです。

憎しみ、嫌い、人種差別をオブラートに包んで曲にする

※1:LISAの造語。ニガーは黒人の蔑称だが、ここでは「黄色人種同士で行われる人種差別」の意味として使用している。


この記事が掲載されているカテゴリ

春日正信

Written by

春日正信

(かすが・まさのぶ)1970年広島県生まれ。音楽雑誌『remix』元編集者。DJ/ギタリスト/アマチュアモデラー/ライター。

CONTRIBUTOR

QJWeb今月の執筆陣

酔いどれ燻し銀コラムが話題

お笑い芸人

薄幸(納言)

「金借り」哲学を説くピン芸人

お笑い芸人

岡野陽一

“ラジオ変態”の女子高生

タレント・女優

奥森皐月

ドイツ公共テレビプロデューサー

翻訳・通訳・よろず物書き業

マライ・メントライン

毎日更新「きのうのテレビ」

テレビっ子ライター

てれびのスキマ

7ORDER/FLATLAND

アーティスト・モデル

森田美勇⼈

ケモノバカ一代

ライター・書評家

豊崎由美

VTuber記事を連載中

道民ライター

たまごまご

ホフディランのボーカルであり、カレーマニア

ミュージシャン

小宮山雄飛

俳優の魅力に迫る「告白的男優論」

ライター、ノベライザー、映画批評家

相田冬二

お笑い・音楽・ドラマの「感想」連載

ブロガー

かんそう

若手コント職人

お笑い芸人

加賀 翔(かが屋)

『キングオブコント2021』ファイナリスト

お笑い芸人

林田洋平(ザ・マミィ)

2023年に解散予定

"楽器を持たないパンクバンド"

セントチヒロ・チッチ(BiSH)

ドラマやバラエティでも活躍する“げんじぶ”メンバー

ボーカルダンスグループ

長野凌大(原因は自分にある。)

「お笑いクイズランド」連載中

お笑い芸人

仲嶺 巧(三日月マンハッタン)

“永遠に中学生”エビ中メンバー

アイドル

中山莉子(私立恵比寿中学)
ふっとう茶☆そそぐ子ちゃん(ランジャタイ国崎和也)
竹中夏海
でか美ちゃん
藤津亮太

QJWebはほぼ毎日更新
新着・人気記事をお知らせします。