m-floが語る差別とアイデンティティ「日本人にも韓国人にもなりきれない」「目の色が違うからダメ」

2020.1.15


日本ではヒップホップがファッションになっている

―――僕、昔からヒップ・ホップは大好きで、日本のヒップ・ホップで好きなものもあるんだけど、苦手なものはすぐに「俺は日本男児うんぬん」とか言う人たち(笑)。結局、自分のアイデンティティについて深く考えてないから、「日本人」っていう空疎な概念に安易に頼ってる感じがするんですよ。「大和魂」とか(笑)。すると、すごくナショナリスティックなものになってしまう。本来、ヒップ・ホップは自由な音楽なのに。

LISA 自分たちでせばめてるよね、ヒップ・ホップの世界っていうのを。すっごい小さくて、心も狭くて、「先輩・後輩」とかあって。なんでそんなとこで音楽するの? 音楽ってもともとそうじゃないでしょ。もっと(胸を指して)ここが伝わるものなんだから、そんな壁を作って、わざとそういうファッションをして、暴力的な詞を付けてっていうのはよくないですよね。

うちの彼は黒人なんですけど、私、いつもm-floのものを彼や彼の友達に聴かせるんですよ。私たちは黒人じゃないけど、自分たちの音楽をやっていると思ってるから聴かせてるんですけど。私たちはリリック的にも向こうのラップの知ったかぶりとか全然してないし、「昨日、弟が殺された」とか、そういう歌詞っていうのは、向こうにはあっても、私たちがそういうこと書いちゃうと絶対そんなのないわけだし。

だからm-floっていうのは彼らにもすごくリスペクトされてるんだけど、やっぱクラブとか連れていくと、「なんだこれは?」って言うよね。「なんなの、このファッション?」って彼が言うから、「これは日本のヒップ・ホップの子たちが、自分がかっこいいと思ってこういうファッションになってるんだよ」って言うんだけど、そんなの彼からしてみれば、「僕たちが一番貧乏してる時にこういう格好をしてたから、逆に今はそういうことはしたくない」っていう。彼らにとってヒップ・ホップは自分たちの生活なんですよね。日本ではそれがファッションになっちゃってる。

でも、私が言うのは「うれしくないの? あなたたちの文化が、こうやって日本にまで来て、こんなに影響を与えてることって、あなたたち黒人からしてみれば、うれしいはずじゃない?」って。だけど、彼が言うには、「分かるはずがない」って。私たちも一生黒人にはなれないから、 一生分かるわけがないけど、ブラックのフィーリングをいただいてやってるわけだから、いつも感謝して、いつも彼らに聴かせて、「いいものはいい、悪いものは悪い」っていうのを、必ずTAKUとかに伝えてるんです。

VERBAL やっぱルーツが黒人のアーバン(都会的)なものだから、それを取り入れて作んなきゃヒップ・ホップじゃないんだけど、でも、僕は黒人じゃないから、自分のフレーバーやフィーリングを入れてやるしかない。

LISA 「なりきれないんだけども、そのエッセンスはいただきますよ」っていうか、それを大事にして、m-floなりに伝えてくっていう。

VERBAL その「借りた」っていうところを認識しなきゃ。

―――たぶんみんな、言うことがないんだろうなー(笑)。「俺はなんとかなんとかで」っていう自分のレペゼンを、みんなできないくせにやるじゃないですか(笑)。m-floって、例えば、「私はコロンビア人でハーフで」とか、「僕は在日韓国人で」みたいな、そういう主張は一番しやすいのに、あえてやらないのが面白いなと思ったんですけど。

TAKU それは、期待を裏切ってやっちゃうと思います(笑)。

LISA やる。絶対やる(笑)。

後編:「音楽的にも精神的にも違ったものを取り入れたい」に続く

m-flo_kyo

m-flo(エムフロウ)

1998年にインターナショナルスクールの同級生だった☆TakuとVERBALの2人で活動をスタート。後に、ヴォーカルとしてLISAが加入し、m-floとして本格的に始動。☆Takuの卓越したクオリティのトラックにVERBALのフロー、そしてLISAの表現力豊かなヴォーカルが評判となり、インディーズでリリースした曲は驚異的なセールスを記録。

99年7月に1stマキシシングル「the tripod e.p.」でメジャーデビュー、オリコン初登場でいきなり9位をマークした。その後も快進撃を続け、シングル12枚、オリジナルアルバム2枚をリリースし大ヒットをおさめた。2ndアルバム『EXPO EXPO』に至っては80万枚のセールスを樹立し、日本の音楽シーンに強烈なインパクトを与えた。

2002年にLISAがソロ活動に専念するため、惜しまれながら脱退を決断。03年、VERBALと☆Takuの2人となったm-floは、さまざまなアーティストとコラボしていくという”Loves”シリーズで日本の音楽史に旋風を巻き起こした。05年には日本武道館でのワンマンライブを、07年には横浜アリーナ公演をかつてないほどのスケールで大成功させる。また数々のフェスのステージにも登場するなど、アンダーグウランドからオーバーグラウンドまで、縦横無尽な活動で、日本の音楽シーンに新たな風を吹き込んだ。

08年、41組とのコラボレーションを実現した“Loves”シリーズに終止符を打ち、新たな可能性を求め、プロデュースやリミックス、DJ、また自身のブランドや別ユニットなど個々の活動で活躍していた。

2017年、日本を代表する最強のトライポッド「m-flo」が15年振りにLISA・VERBAL・☆Taku Takahashiのオリジナルメンバーで完全復活!! 2018年は新曲リリースや楽曲プロデュース、“ROCK IN JAPAN FESTIVAL”や“SUMMER SONIC”などの出演、テレビ番組出演など、多岐にわたって活動をしてきた。そして2019年。m-floはメジャーデビュー20周年を迎え、新たなアルバム『KYO』をリリース。再び日本のメインストリームに新風を吹き込む。


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春日正信

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春日正信

(かすが・まさのぶ)1970年広島県生まれ。音楽雑誌『remix』元編集者。DJ/ギタリスト/アマチュアモデラー/ライター。

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