女性嫌悪・ハラスメントの問題を“妖怪目線“で描く『妖怪シェアハウス』の秀逸さ

2022.6.18


ドラマ版ベストエピソード3選

ここからは、事前にチェックしておくと『映画 妖怪シェアハウス—白馬の王子様じゃないん怪—』をさらに堪能することができる、ドラマ版のベストエピソードをご紹介する。

シーズン1第二怪「お菊さん」

ブラックな出版社にアルバイトとして入った澪が、ステップアップのために仕事を手にしたいと必死になり、カリスマ編集者に気に入られようと近づく。しかし、その男は、仕事を求めて近づいてくる女性をターゲットにした関係を求めてくる権力や立場を利用した就活セクハラ男だった。

このエピソードに登場する妖怪は、怪談『皿屋敷』で知られるお菊さん(佐津川愛美)。所説あるものの、お菊さんは江戸時代に上司のパワハラ、セクハラによる嫌がらせで心を病み、井戸に飛び込んで自殺した女性の幽霊ともいわれる。権力を盾に、圧力をかける男たちの意識は江戸時代から何も変わっていない。

その犠牲者の代表のようなお菊さんが、澪や仲間の妖怪たちと共にセクハラ男を撃退する本作のシーンは、見ていて爽快な気分になる。

シーズン1最終怪「座敷わらし

結婚をチラつかされて男に尽くし騙されてきた澪は、自分の将来について本気で考え、作家の道へ進むことを決断する。しかし妖怪たちと一緒にいる時間が長過ぎたことで、妖怪化しかけていた澪。阻止する方法は人間の男とつながる、つまり結婚することだった。偶然にも会社の上司・原島(大東駿介)と、シェアハウスの管理者・譲(味方良介)に同時に告白され、どちらも気になる存在であったことから、妖怪たちは天狗大王の力を借りて、それぞれの相手との未来を澪に見せる。

どちらの未来も幸せではあったものの、自分のやりたいことができていないということに不満を持った澪は、結婚して人間でいるよりも、妖怪になってもいいから自分の道を進みたいという気持ちを優先させた。シリーズ前半では思い描く幸せの先が男性主体だった澪だったが、最終怪(最終話)では自分が主体となる人生を歩むことを選んだのだった。人々の幸せは「結婚」にあるという、ステレオタイプな考え方を打ち破るエピソードといえるだろう。

シーズン2第一怪

シーズン1のラスト、作家を目指し修行の旅に出て、実際に『妖怪シェアハウス』という本を完成させたものの、資金が底をつきバイトに明け暮れながら日々の生活に追われるどん底に戻ってしまった澪。シーズン2の冒頭では、いきなり「夢だけでは生活できない」という現実に叩き落される。シェアハウスの妖怪たちと再会を果たすものの、大きなことを言って出ていった手前、合わせる顔がない。創作活動ができるほどの余裕がない澪は、たまたま見つけた高時給のスイミングスクールでバイトすることになり、優しくてマッチョなイケメンの運営者・川辺(小久保寿人)に恋をしてしまうが、川辺の正体は闇落ちした河童だった。

シーズン1最終怪で成長したかに思えた澪が、また振り出しに戻ったかのように男に騙されるエピソードからスタートするというのも、かなり皮肉である。会員の尻子玉を抜いて食べている様子や、高額なインチキサプリを売りつけてはぼろ儲けしていたことを知ってしまった澪は襲われそうになるが、妖怪たちによって助けられる。元の河童に戻ったものの、闇落ちした原因はわからない。気づいたら我を忘れていたと語るが、その謎はシーズン2の全編を通して描かれ、映画版で真相がわかるというもの。

河童の闇落ちを浄化する際に、大量のプラゴミを吐き出した河童を見て、ぬらりひょんが「プラスチックは悪くなくて、ポイ捨てが悪い」と言うド正論。この何気ないのにズバッと的確な指摘が自然と配置されているのも、『妖怪シェアハウス』という作品の魅力だ。

『映画 妖怪シェアハウス―白馬の王子様じゃないん怪―』

2022年6月17日(金)公開
出演:小芝風花、松本まりか、毎熊克哉、豊田裕大、池谷のぶえ、佐津川愛美、長井短、井頭愛海、尾碕真花、小久保寿人、片桐仁、安井順平、望月歩、池田成志、大倉孝二ほか
監督:豊島圭介
脚本:西荻弓絵
音楽:井筒昭雄
主題歌:ayaho「アミ feat. 和ぬか」
制作プロダクション:角川大映スタジオ 
配給:東映
(C)2022 映画「妖怪シェアハウス」製作委員会

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    『映画 妖怪シェアハウス―白馬の王子様じゃないん怪―』

    2022年6月17日(金)公開
    出演:小芝風花、松本まりか、毎熊克哉、豊田裕大、池谷のぶえ、佐津川愛美、長井短、井頭愛海、尾碕真花、小久保寿人、片桐仁、安井順平、望月歩、池田成志、大倉孝二ほか
    監督:豊島圭介
    脚本:西荻弓絵
    音楽:井筒昭雄
    主題歌:ayaho「アミ feat. 和ぬか」
    制作プロダクション:角川大映スタジオ 
    配給:東映
    (C)2022 映画「妖怪シェアハウス」製作委員会

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バフィー吉川

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バフィー吉川 

2021年に観た映画は1100本以上。映画とインドに毒された映画評論家(ライター)、ヒンディー・ミュージック評論家。2021年9月に初著書『発掘!未公開映画研究所』(つむぎ書房)を出版。Spotifyなどで映画紹介ラジオ『バフィーの映画な話』、映画紹介サイト『Buffys Movie & M..

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