悪口を言うのは楽しい。だからこそ気をつけよう。(ラリー遠田)
『テラスハウス TOKYO 2019-2020』(以下、『テラスハウス』)に出演していたプロレスラー木村花が亡くなった。生前の彼女に対し、SNSで誹謗中傷が殺到していたことが問題視されている。
もちろん人を悪く言う行為は道徳的に間違っているが、エンタテインメントの楽しみ方としても間違っていたのだろうか? お笑い評論家のラリー遠田が、エンタテインメントの楽しみ方と悪口の本質について考える。
エンタテインメントの「本来」の楽しみ方
5月23日に女子プロレスラーの木村花さんが亡くなった事件は、日本中に衝撃を与えた。木村さんは恋愛リアリティ番組『テラスハウス』に出演していた。
そこでの言動が一部の視聴者から問題視され、彼女のSNSには誹謗中傷のコメントが殺到していた。生前の彼女はそのことで深く傷つき、悩んでいたと言われている。彼女を死に追いやった直接の原因は、それらの悪意あるコメントだったのかもしれない。なんとも痛ましい事件である。
もちろん、SNSで他人に口汚い誹謗中傷の言葉を浴びせることは、人として正しい行いではない。だが、実のところ、そういう人たちこそが『テラスハウス』というリアリティショーを心底楽しんでいた人であるという側面もあるのではないか。
たとえば、私は幼い頃、戦隊ヒーローものの番組を観ながら、画面の中にいるあのヒーローたちが悪者を倒せなければ、自分が生きているこの世界は悪の組織によって支配されてしまうのかもしれないと半ば本気で心配していた。あのときの私は、事実と異なる信念を持っていたのかもしれないが、あの番組を心から楽しんでいた。
大人になった今では、どんなにがんばってそう思い込もうとしても、あのときのように純粋にフィクションを現実のものとして楽しむことはできない。
「リアリティショーは一種の見世物として一歩引いた目で楽しむメディアリテラシーが大切だ」などと訳知り顔で言う人もいるが、それは本当だろうか。こういう種類のエンタテインメントの「本来」の楽しみ方は、そちらではないのではないだろうか。
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