不信感から湧いた、政治への意欲
自由民主党の杉田水脈衆議院議員は「LGBTには生産性がない」と発言したとされる報道がある。子供を産めないのなら人間として劣る、と言いたいのであろう。
人間に対して「生産性」という言葉を使ってしまう無神経さに辟易するが、ならば子供を持たない、持てない夫婦についてはどう考えているのだろうか。
子供が欲しくてもなかなか授かれない人だっている。そういう人たちも、「生産性がない」とひと括りにされてしまうのだろうか。命に優劣をつけ選別する「優生思想」は、残念ながら日本にも暗い影を落としている。
杉田氏は以後も差別発言を頻発して何度も炎上しており、「女性はいくらでも嘘をつけますから」という発言には抗議の署名が13万を超えた。自民党本部は彼女を「指導」したとホームページに発表しているが、これだけ不特定多数の人を傷つける発言を繰り返しておきながら、辞職は免れることにひどく不信感を持った。
しかし、こういった許されないことが積み重なると、政治への意欲も増す。10月末の衆院選は、祈るような気持ちで投票した。
誰もが、性別や国籍に囚われずに人を好きになっていい未来へ
今回の衆院選で争点のひとつとなったのは、夫婦が同姓か別姓かを選べる「選択的夫婦別姓」制度や、LGBTなど性的少数者への差別解消の法整備だ。
選択的夫婦別姓とLGBT理解増進の法案を来年の通常国会に提出するかと聞かれた際、岸田文雄首相だけ手を挙げなかった。1996年にも選択的夫婦別姓導入の民法改正案が答申されたが、自民議員らが「家族の一体感が損なわれる」と反発したため、提出には至らなかった。
自民党には「伝統的家族観」を重んじる保守的な層が多い。公明党、立憲民主党、共産党、日本維新の会、れいわ新選組、社会民主党が同性婚の法整備も公約に掲げるなか、岸田首相は「慎重に検討したい」と発言している。今回の衆院選は、自民党の圧勝で終わった。結果に脱力しながらも、声を上げつづけなければ、と感じた。
はっきり言って政治はわからない。わからないが、まずは知ることが大事だと思う。弱者の声を拾って、誰が何に困っているのかを知ることが、政治への第一歩なのではないだろうか。
近頃、『作りたい女と食べたい女』(KADOKAWA)というマンガが話題になっている。料理を「たくさん」作るのが好きな主人公・野本さんと、たくさん食べたい春日さんが、お互いの部屋を行き来しながら食卓を囲み、親交を深めていく。仲よくなるうちに、野本さんは春日さんへの恋心のようなものを感じる。同性を好きになっていいのか悩む主人公の葛藤も丁寧に描かれていて、今、思い悩んでいる人に勇気を与えてくれる。この作品を取り巻くあたたかい雰囲気は、「誰を好きになってもいい」という強いメッセージから生まれていると思う。
本当にそのとおりで、わたしたちは性別や国籍に囚われずに人を好きになる権利がある。この国が、いつかマイノリティにも対応できる社会を作り出せるように、わたしたちは辛抱強く、権利を主張していくのみだ。
今、世の中は変わりつつあると思う。誰もが個性を重んじる社会になるよう、小さな声に耳を傾けたい。
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