小田急線刺傷事件で思い出す、「ミソジニスト」による女性の搾取と甘え(僕のマリ)

2021.9.6

文=僕のマリ 編集=佐々木 笑


今年8月、夜ツイッターを眺めていたら「電車内で包丁持って暴れてる人がいる」という緊迫した書き込みが流れてきた。驚きのあまり、すぐに投稿者のホームへ飛び、事件の成り行きを見ようとした。時刻は20時ごろで、帰宅する乗客で混み合っている時間帯なだけに、「無差別殺人」という言葉が頭をよぎった。

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※写真はイメージです
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小田急線刺傷事件の概要

事件は、小田急小田原線の車内で起こった。川崎市多摩区の職業不詳の容疑者が複数の乗客を刃物で刺傷し、車内をパニックに陥らせた。容疑者は所持していた牛刀で先頭車両から移動して乗客を切りつけ、それ以外にも殴るなどして男性5人と女性5人の計10人が重軽傷を負った。

特に重傷を負ったのは20代の女子学生で、腹部や背中、胸など7カ所を刺された。警察の調べに対し、「勝ち組の典型に見えた」と語っているほか、「6年ほど前から幸せそうな女性を見ると殺してやりたいと思うようになった」「男にチヤホヤされていそうな女性を殺してやりたい」と供述した。 

事件当時の車内を映した動画を観た。「殺人事件だ殺人!」「ドア開けて!」「けが人がいます! 誰か救急関係の方いますか? 止血をしたいです!」という声が次々に響いている。犯人がまだいるかもしれないと、逃げ惑う乗客で車内はパニックになっていた。シャツに血のついた人もいて、事件の悲惨さがよく伝わってくる。医療関係者の女性が「誰か布を持ってる人いますか」と必死に救助している声も聞こえた。その女性の証言の動画も観た。涙ながらに当時のことを話す女性に、心の傷を負った人も多いのだと思った。

報道されてすぐは無差別殺人かと思ったが、「幸せそうな女性を殺してやりたい」と語っていたと知ったときは怒りでいっぱいになった。そんな身勝手な理由で人を傷つけていいわけがない。女性は幸せそうにしているだけで殺されてしまうのだろうか。SNSには抗議の声が多数上がった。

ふと想像してしまう。なんの落ち度もないのに、電車に乗っていたら「幸せそう」という理由だけで何度も刺されてしまう恐怖を。女性が幸せそうにしているのはいけないことだろうか。被害に遭った女子学生は重傷で、回復までに時間がかかるそうだ。心の傷も、きっと深いものだろう。

「ミソジニスト」の、女性が支えてくれるという思い込み

この事件を知り真っ先に思い出したのは、韓国の「江南ミソジニー殺人事件」だ。2016年5月、ソウルの江南駅近くにある建物の男女共用トイレで、23歳の女性がまったく面識のない34歳の男に刺し殺された事件だ。犯行の動機が「女たちが自分を無視したから」というもので、女性を狙った犯行であることがわかった。「ミソジニー」とは、男性による女性嫌悪や女性蔑視のことで、女性や女性らしさを嫌悪する人物のことは「ミソジニスト」と呼ぶ。小田急の事件も江南の事件も、ミソジニストによる犯行だったと言える。

警視庁の調べに「俺はなんて不幸な人生なんだと思っていた」などと話していることが、捜査関係者への取材でわかった。数カ月前から生活保護を受けていたといい、警視庁は経済的に困窮して自暴自棄になった可能性があるとみている。

「俺はなんて不幸な人生」小田急線刺傷、容疑者が供述|朝日新聞デジタル

しかし、それがたとえ「不幸」だったとしても、何故その怒りの矛先が、勝ち組の男性ではなく女性に向くのだろうか。抵抗できない弱い存在に憎悪を向けるのは、失敗することを恐れているのだろうか。自身の不遇を女性のせいにするのは、女性が支えてくれるという思い込みがあるからではないだろうか。甘えるなと言いたい。自分の幸せくらい自分で掴み取るべきだろう。事件の裏には、女性が搾取されてきた歴史がうかがえる。

女性は、甘えるための対象ではない


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僕のマリ

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