ぱいぱいでか美も共感。ゆりやんの失恋トークに「こんなにおもしろい女はいない」

でか美ちゃん

ぱいぱいでか美が「テレビから聞こえてきた金言」について考える連載、第5回。今回は2021年10月22日に放送された『ジンギス談!』より。


1週遅れで放送される『ポケモン』を観て育った私

私の地元・三重県には大変な格差があった。

同じ学区内でも地域によってテレビ愛知の番組が映ったり映らなかったりしたのだ。それはそれは一大事だった。このテレビ愛知が映るかどうかで『ポケモン(ポケットモンスター)』の進捗状況が変わってくるのだ。

一大事扱いできるということは、私はもちろん“映らない側”の人間だった。そのせいか、ネタバレが大丈夫な人間にもなってしまった。

三重テレビにて1週遅れで放送される『ポケモン』を観て育った私は、当然三重テレビでしかやってない、ローカルタレントが津市や松阪市のカフェをくまなく巡る番組なんかも観てた。そもそも田舎にはカフェ自体が少ない。しらみ潰しに行くしかないのである。

そんな格差社会から早20年。今はむしろ地方のバラエティも、全国放送に負けず劣らず、注目される機会も多い。

千鳥のロケ力の高さを知らしめたのはテレビ埼玉の『いろはに千鳥』だし、関西テレビの『怪傑えみちゃんねる』は残念ながら終わってしまったが、出演者が大阪でも認められるための場所として機能してた。

(『怪傑えみちゃんねる』終了後、海原やすよ・ともこさんMCのさまざまな番組が登竜門のようになっているのもおもしろいなーと思って観てます)

片思い相手に振られた、ゆりやんレトリィバァの金言

さて、今回の金言はHBCテレビ『ジンギス談!』から。

HBCテレビは北海道のローカル局で、MCは北海道出身のタカアンドトシが務める。

あぁ、もうこの時点でたまらないですね。私は芸人やタレントが地元のローカル局で活躍してる姿が大好きなのです。なんかいい意味で力抜けてるし、心なしかいつもより楽しそうだし(たとえ収録自体は東京でも)。

『ジンギス談!』は、毎回ゲストをひと組迎えてトークを繰り広げていくバラエティ。

北海道で名刺を配るような番組というか、1週目はゲストの鉄板ネタを話したりと、自己紹介的な側面が多い。そして2週目で基本情報を元にした企画を行い、北海道の皆様により深くゲストを知ってもらうという構成だ。

今回のゲストは、コロコロチキチキペッパーズのナダルさんとゆりやんレトリィバァさん。ナダル軍団の団長と、元団員(バラエティでナダルさんの秘密を暴露し過ぎて現在は除籍)という組み合わせで登場。

2週目の今回は、恋多きゆりやんの恋した男性芸人ランキングを発表するコーナーに。

アキナの山名(文和)さん、今まさに目の前にいるタカアンドトシのタカさんにキュンとした瞬間。そして失恋エピソードを交えながら、振られた憎しみを込めフリップをグチャグチャにしていくゆりやん。

少しの隙間もボケずにはいられないゆりやんを「ゆりやんワールド」と称して、先輩3人がにこやかにツッコんでいく。

「芸人同士の恋だとネタっぽくなるけど、マジの恋はどうなのよ?」と少し踏み込まれたゆりやん。それすらも、「片想いの相手の金玉を少し触った」という笑っていいのかわからないけど笑うしかないようなエピソードで返す。

結局その恋も失恋というかたちで終わりを迎えるのだが、そのときのゆりやんの捨てゼリフが今回の金言です。

「もったいないことしたな。私、R-1チャンピオンやで!!」

ほんっっっっとに男はもったいないことをしたよ。スタジオは笑いに包まれてたし、ダサいダサいと言われたい放題だった。私も、正直なんてめちゃくちゃな捨てゼリフなんだよ、とは思う。

でも、まじでもったいないよ。ゆりやんを振るなんて!!!!

だってこんなにおもしろい女はいない。その証拠の『R-1(グランプリ2021)』チャンピオンであり、つまり日本一なのである。

相手の男性は「恋愛にお笑いの要素いらんねん」とまで言い放ったそうだが、恋愛にお笑いの要素は絶対いるだろ。毎日楽しくないとダメだろ!

恋愛って、愛する人と関わるってことなんだぞ。なるべく楽しいほうがいい。あんなおもしろい女といたら毎日楽しいに決まってる。

「恋愛毎年1回戦落ち」という素晴らしいオチまでついたところが、ゆりやんレトリィバァの芸人として、そして女性としての魅力でもあるのではないか。


芸人として、女性として。ありのままで生きるゆりやんの魅力

女性芸人が恋愛の話をする際に、どうしても芸人としての側面とひとりの人間としての側面をなんとか切り離して、トーク自体を進めようとすることが多いように思う。

たとえば、好きな人の前ではボケられないんじゃないのー?といった具合に。女を捨てられなくなる、という言葉も昔はよく聞いた。

仕事とプライベートを分けるという単純な話以上に、男性芸人に比べて、女性芸人にはこの手の話がつきもののように聞かれている印象だ。

しかし、ゆりやんはゆりやんのまま恋愛に挑み、失恋し、最後にかける言葉も芸人としてのプライドのようなひと言だった。

ひとりの人間がお笑いもして、恋愛もしてるんだから当たり前のことなのに、ゆりやんがそんなふうに言ってくれたことが妙にうれしいというかなんというか。

芸能人が「私もひとりの人間です」と改めて伝えることがあるが、まさにそれを地で行ってるのがゆりやんレトリィバァという人なのかもしれない。

少しの隙間も逃さずにボケつづけるゆりやんを、今まで「お笑いロボット」のように観てたけれど、ゆりやんレトリィバァというひとりの人間を好きになっていたんだなぁ。

北海道ローカル番組『ジンギス談!』の居心地のよさ

しかし、この『ジンギス談!』。どのゲストの回も、いい。

ローカル局特有のゆるやかな空気もあり、ゲストひと組で2週にわたる丁寧さ、そして伸び伸びとしているタカアンドトシさん。セットの和室も相まって、すべての条件がたまらなく居心地いい。

さて、なぜ私が北海道のローカルバラエティを観られてるのか。そう、TVerのおかげです。

TVerって本当に素晴らしいですね。感謝を込めて、TVerの広告が多いだのなんだの言う奴らには「当たり前だろ」と私から伝えておきます。

このコラムが公開になるころには、紺野ぶるまさん&ヒコロヒーさんのゲスト回がTVerで観られるだろう。

ちなみに、番組公式YouTubeではナダルさん&ゆりやんさんゲスト回含む過去の未公開トークを公開中だ。番組の太っ腹なスタンスも、実家に帰った際の両親の張り切り方みたいでかわいいですよね。

あぁ楽しみ。北海道に縁もゆかりもないけど地元みたいな気分になる。あの和室でゆっくりしたい。


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(でかみちゃん)一度聞いたら二度と忘れられない名前と、ふざけた芸名とは裏腹に的確なコメント力を武器に、場所を選ばず大活躍。『有吉反省会』(日本テレビ)レギュラー出演のほか、自身の楽曲の作詞作曲やライブ活動、楽曲提供、グラビア、映画出演、コラム執筆などジャンルやメディアに捉われず活動中。さまざまなユニ..

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