お笑いにおいて、女は「キャラクター」なのか――“女芸人”の葛藤と歴史、そしてこれから

2020.10.25

文・図版=ふたつぎ 編集=鈴木 梢


以前、てれびのスキマに“大学お笑いサークル”の解説をした、テレビ局員兼社会人漫才師のふたつぎ。学生時代には、青山学院大学のお笑いサークル「ナショグル」に所属し、卒業論文は「お笑い番組から考えるテレビ番組のデザイン」をテーマに『ゴッドタン』(テレビ東京)などを題材にし、同番組プロデューサーの佐久間宣行がSNSでコメントをするなど話題となった。

そんな彼女が、自らお笑いの道を志すなかで感じた“女”芸人としての葛藤と、現在に至るまでの女芸人たちの歴史と今を考える。


女芸人のあり方と変化・系譜

お笑いに救われたから、お笑いが好き。
私が今テレビ局で働いているのは、いつか私も人に届くお笑い番組を作りたいからだ。

中学生のころは、ひとりで2時間かけて「ヨシモト∞ホール」に通い、高校生のころは放課後になればセーラー服から私服に着替えて、人力舎の事務所ライブに通った。お笑いが好き過ぎるあまり、「私が舞台に立つなんて、お笑いに申し訳ない」と思っていたが、大学でお笑いサークルに入ったことで、舞台にも立つようになり、今はテレビ局員でありながら『M-1グランプリ』に出たりもしている。

お笑いを観るだけでもたまらなく好きなのに、作るようになってから、もっと好きになった。 ということで、これから文章内で出させていただく芸人さんのお名前はすべて(※敬称略)ということだけでも、覚えて帰ってください。

大学時代に集めていたライブパンフレットの一部

女芸人の活躍

2020年9月10日、『アメトーーク!』(テレビ朝日)で若手女芸人特集が放送された。
放送後に携帯の画面をスクロールしていると、「女芸人界が変わってきてる気がする。新しい時代を感じた」といったツイートが多く流れてきた。ガンバレルーヤのふたりがまわりの芸人にイジられながらも先陣を切って笑いを取りつづけ、ぼる塾のあんりがツッコミでさらに重ねる。3時のヒロインの福田麻貴が少しバカにされるような立ち回りでその場を盛り上げたかと思うと、ラランドのサーヤが全然違う角度から追随し、切り込んでくる。一方、ぼる塾の田辺や3時のヒロインのかなでは、ほわっとしたかわいらしさでスタジオを穏やかな空気で包み込んでいた。

ひと昔前までは「かわい過ぎる女芸人」や「女を捨てたおもしろさ」など、「女」を売るのか、捨てるのか、そんな視点でフィーチャーされることが多かったように思うが、今回の『アメトーーク!』は決してそうではなく、そこには、女芸人という枠組みを超えた「芸人」としてのおもしろさが光っていて、とてもとても、かっこよかった。

女芸人の活躍は、今回の『アメトーーク!』だけに限った話ではない。過去には『しゃべくり007』でも女芸人の特集が放送された。 阿佐ヶ谷姉妹はバラエティ番組の企画で女性誌モデル風のヘアメイクやスタイリングで撮影された写真が話題になり、Aマッソ加納は文才に注目されてエッセイの出版も決まっている。

お笑い好きの私としては、『THE W』の決勝に進んだのにもかかわらず昨年解散した合わせみそが活動を再開したり、人力舎2年目のゆむらが大久保佳代子杯(人力舎所属芸人の大喜利大会)に呼ばれていたりすることがうれしい。しかし、私のようなお笑いフリークでなくとも、世間が今、女芸人に注目していると思うのだ。

お笑いにおいて、女は「キャラクター」なのか


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