ぱいぱいでか美「涙があふれた」。『キングオブコント』空気階段の優勝コメントを振り返る



「コントしかなかった」から感じる苦労とプライド

さて、ファイナルステージでは男性ブランコとザ・マミィがまさかの同率合計得点を出すなか、空気階段は抜群の爆発力と安定感(と同時に鈴木もぐらさんの脚力の安定感)を武器に、見事ぶっちぎりで優勝。合計点数も歴代最高得点となった。

ついさっきまであんなに勝ち気だったかたまりさんの涙には、思わずもらい泣きしてしまった。

勝利の紙吹雪が舞うなか、もぐらさんがひと言。

「本当にもう、コントしかなかったんで」

この連載では、いつも金言はひとつしか取り上げないが、今回はお祭りなので平気でふたついこうと思う。

この言葉にさらに涙腺が刺激された。空気階段の家族じゃないと説明がつかないくらい涙があふれた。

だって、あんなに魅力的な彼らなのだ。コント“しか”ないわけないだろうって言いたくなるところ。しかしクズキャラとはほど遠い、本当は謙虚で優しいもぐらさんの、これも心からの言葉なんだと思った。

ぱいぱいでか美
喫煙中のふたりをプリントした「anna」ロングTシャツ

大人気のラジオ『空気階段の踊り場』(TBSラジオ)は時間帯も上がり放送尺も増えた。単独ライブは配信チケット1万枚超え。10月からは初の冠番組『空気階段の空気観察』(テレビ朝日)も始まった。

順風満帆な彼らをあと押しするような優勝だと、きっと世間は見るだろう。

でもこの「コントしかなかった」という言葉に感じるのは、今までの苦労やそこにかけてきたプライドだ。

言葉を詰まらせながら「ちょっとでも関わってくれた方に感謝ですね」とつづけるもぐらさんを観て、「こっちが感謝だよ!!!!」と伝えたくなる。

ほんといつも笑わせてもらってます。疲れてるときもメンタルしんどいときも笑わせてもらってます!!!!

「報われたね〜!」と言うのが苦手だった

少し話は逸れるが、誰かを応援する気持ちを持ったときに、対象に向かって「報われる」とか「報う」とかそういう言葉を使うことがめちゃくちゃ苦手だ。

だって、どんなに好きでも、どれだけ熱意を持って応援してても、相手は他人で、その人だけの人生だから。「報われたね~!」なんて偉そうなんじゃないかな、と思ってしまう。

ただ、今回は違った。自分がおもしろいと思ってる人たちが、正当に評価されて、その結果が紛うことなき日本一になるってここまでうれしいのか!と驚きすらあった。

普段はあんまり競争とか順位とかを気にしなくていい世界のアイドルのヲタクしかやっておらず……初めての感覚というか……。

たとえば、推しのオリコンランキングを気にしたこともなかった。「勝ってくれ~!」と願うこと自体、私にとっては珍しい出来事だったのかも。

今まで好きな芸人が賞レースに出ても、別にどんな結果であれ、ずっと「おもしろいし何位でも好きだしなぁ」みたいな気持ちしかなかったのだ。優勝でも最下位でも自分の気持ちは変わらないというか。

でもさすがに「生まれてきた意味」とまで言われちゃうと! 「コントしかなかった」とまで言われちゃうとさぁ!

もしかしたらこれが「推しが報われてうれしい」みたいなことなのかもしれない。それでも「報われる」みたいな言葉は今後もできるだけ使いたくないけど! 感覚だけ、なんとなく理解できました。

(あと本当は、芸人に向かって“推し”という言葉を使うのも非常に苦手です!(笑) これは使ってる人が嫌とかではなくて、自分は使いたくないという意味です)


意味がないからこそ、生きる上で必要不可欠なもの

閑話休題。

素晴らしい大会を観たあとに言うことじゃないなと思いつつ、それでもやっぱり言いたいことがある。

繰り返しになるけど、やっぱりお笑いや音楽って別に意味はない。衣食住に比べたらなくても生きていけるし、何かを削ぎ落とさなきゃいけないときに真っ先に狙われるのもわかる。

それでも、なきゃダメ。意味がないからこそ、生きていくには必要不可欠なのだ。豊かさとは、意味のなさだから。

意味のなさを、それしかないと極めた先に、生まれてきた意味があるなんて……。こんな最高なことってあるんですね。

満を持して私にも言わせてください。

サイコゥ!サイコゥ!サイコゥ!

空気階段さん、本当に優勝おめでとうございます。

ぱいぱいでか美
今年の2月、吉田豪さんと私のトークイベントに出演してもらった際の写真です。第2回やりたい!

この記事の画像(全8枚)




この記事が掲載されているカテゴリ

ぱいぱいでか美

Written by

でか美ちゃん

(でかみちゃん)一度聞いたら二度と忘れられない名前と、ふざけた芸名とは裏腹に的確なコメント力を武器に、場所を選ばず大活躍。『有吉反省会』(日本テレビ)レギュラー出演のほか、自身の楽曲の作詞作曲やライブ活動、楽曲提供、グラビア、映画出演、コラム執筆などジャンルやメディアに捉われず活動中。さまざまなユニ..

CONTRIBUTOR

QJWeb今月の執筆陣

酔いどれ燻し銀コラムが話題

お笑い芸人

薄幸(納言)

「金借り」哲学を説くピン芸人

お笑い芸人

岡野陽一

“ラジオ変態”の女子高生

タレント・女優

奥森皐月

ドイツ公共テレビプロデューサー

翻訳・通訳・よろず物書き業

マライ・メントライン

毎日更新「きのうのテレビ」

テレビっ子ライター

てれびのスキマ

7ORDER/FLATLAND

アーティスト・モデル

森田美勇⼈

ケモノバカ一代

ライター・書評家

豊崎由美

VTuber記事を連載中

道民ライター

たまごまご

ホフディランのボーカルであり、カレーマニア

ミュージシャン

小宮山雄飛

俳優の魅力に迫る「告白的男優論」

ライター、ノベライザー、映画批評家

相田冬二

お笑い・音楽・ドラマの「感想」連載

ブロガー

かんそう

若手コント職人

お笑い芸人

加賀 翔(かが屋)

『キングオブコント2021』ファイナリスト

お笑い芸人

林田洋平(ザ・マミィ)

2023年に解散予定

"楽器を持たないパンクバンド"

セントチヒロ・チッチ(BiSH)

ドラマやバラエティでも活躍する“げんじぶ”メンバー

ボーカルダンスグループ

長野凌大(原因は自分にある。)

「お笑いクイズランド」連載中

お笑い芸人

仲嶺 巧(三日月マンハッタン)

“永遠に中学生”エビ中メンバー

アイドル

中山莉子(私立恵比寿中学)
ふっとう茶☆そそぐ子ちゃん(ランジャタイ国崎和也)
竹中夏海
でか美ちゃん
藤津亮太

QJWebはほぼ毎日更新
新着・人気記事をお知らせします。