ぱいぱいでか美が「テレビから聞こえてきた金言」について考える連載、第4回。今回は2021年10月2日に放送された『キングオブコント2021』より。
【関連】空気階段が悲願の優勝『キングオブコント』上位3組の共通点とは?
目次
「伝説の回」で「伝説の王者」になった空気階段
今年もまた楽し過ぎるお祭りが終わってしまった。
TBSテレビが「お笑いの日」と銘打って行う、8時間にわたる生放送。大トリを務めるのが、そう、『キングオブコント(以下KOC)2021』だ。
お笑いの賞レースってなんでこんなにも楽しいんだろう! 芸人からしたらいろんな思いがあるだろうが、一視聴者からしたらそりゃもう、めちゃくちゃ楽しくて仕方ないクソデカ祭りである。絶対ピザ取っちゃう日でもある。
今年のKOCは爆発力の高い蛙亭がトップバッターだったこともあってか、非常に高レベルな大会になったと思う。ていうか審査員の皆さんがそう言ってました。正直私は専門的なことわかってないです。「おもしろいなー!」って笑ってただけです。蛙亭、まじで最高でした。
でも確かに、体感として全組おもしろくてすご過ぎた。全組500点じゃん……とバカみたいなことを友達と話した。自分が松ちゃん(松本人志)じゃなくてよかったよね、みんなに100点つけて大会終わらせちゃうよね、というバカ過ぎる会話。
でも、それくらいすごかった。新しく審査員になったバイきんぐの小峠(英二)さんも、今年のKOCを「伝説の回」と評した。
そんな伝説の今大会、王者は空気階段。お笑いファンからの期待も大きく、著名人の優勝予想でもたびたび名前が挙がっていた。
そのぶんプレッシャーもあるだろうという心配もなんのその、1本目のコントではKOC史上最高得点を叩き出し、その圧倒的な力の差を見せつけた。
優勝決定直後には「空気階段」のほかに「納得の優勝」「文句なしの優勝」という言葉までツイッターでトレンド入りしていたほどだ。伝説の回で伝説の王者になった、と言っても過言ではないだろう。
「意味がないこと」は「価値がないこと」ではない
今回の金言はそんな空気階段のおふたりから。
「ちょっと……あの、生まれてきた意味がありますね」
コント『火事』の衣装(衣装……?)が上裸のため、本当に生まれてきたみたいな状態でぽつりと呟いたのは、水川かたまりさん。1本目のネタを終え、前述どおり最高得点を叩き出した直後の言葉は心の底から本心だろう。
“生まれてきた意味”って、全員に平等にある気もするけど、死ぬまで感じないような気もする。それを明確に感じて、言葉にできるだけの舞台がKOCなのかもしれない。
日頃から考えてることがある。意味を追っても仕方ないのかな、と。
意味がないことなんて世の中にはたくさんあって、お笑いや音楽なんてその最たる例だとコロナ禍でまざまざと感じさせられた。自分の心の拠りどころでもあり、仕事にまでするくらい好きなものが「不要不急」とまで言われたのだ。
わかっちゃいた。わかっちゃいたはずなのに、あのときの頭をガーンと殴られたようなショックは一生忘れられない。
ただ、意味がないことは価値がないことではないのだ、という気づきもあった。だからこそ救われるし、やり甲斐がある。
歌を歌うのが好きで、田舎から上京してテレビに出たりして、本当に自分の人生は変で、立派にやってるなと思う。不思議な人生だ。
その不思議な人生を過ごす中で、人間はまず生きてるだけでいい、ただそこにいるだけで価値はめちゃくちゃあると考えるようになったからこそ、意味を問われてしまったらやはり少し考え込んでしまうかもしれない。
だから、あの場で自然と意味すら掴んで言葉が出てくるかたまりさんが、ものすごく輝いて見えた。
だって、2年前のKOCでは「お笑いのある世界に生まれてきてよかったです」と言っていた彼なのだ。
それがもう、生まれてきた喜びを噛み締めてる場合じゃなくなった。意味すら見出して、あとは勝つ気しかないのだ。
一点の曇りもなく言い切る姿は完全にKOC2021の主人公。最高得点を出したとかそういうの抜きにして、もう絶対優勝するじゃんって、あと出しジャンケン過ぎるけど思った。
勝つ人のオーラってとんでもないものだ。まじで『BLEACH』とかでしか見たことないギザギザのやつが見えました。こんなんほぼネタバレだろってレベルで勝利オーラがビンビンに出ていた。
しかも優勝後のインタビュー記事を読むと、次点でファイナルステージに進むこととなったザ・マミィの1本目のウケ量を観て「おもしれー大会」とまで思ってたらしい。もうテニプリじゃん。テニプリでしか見たことない人間が本当にこの世にいるんですね。
そんなかたまりさんと後輩の関係に当たる、そいつどいつの松本竹馬さんの言葉も印象的だった。
「キングオブコントでコントできる人生でよかったです」
やっぱりこの舞台は、生まれてきた意味とか、人生とか、そういうスケールのでかさが当たり前に出てくるすごい場所なんだと改めて感じる。
張り詰めた様子の竹馬さんの隣で、相方の市川刺身さんが
「一個だけ言うとしたら、来年もがんばるぞー!」
と大きく叫んだ姿も心に残った。
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