空気階段・水川かたまり『キングオブコント』優勝前夜に考えていたこと「害虫じゃなく、おしゃれな芸人になりたい」

空気階段 水川かたまり

文=西澤千央 写真=オノツトム 編集=福田 駿


キングオブコント2021』で、史上最高得点となる「486点」を叩き出し、見事に優勝を果たした空気階段(鈴木もぐら・水川かたまり)。ニューヨーク屋敷は、ふたりのコントを「いいもん見たなぁって気持ちにさせてくれる」と評する。しかし長らく、観客からは「虫を見た」と思われていたという。

ダメな人の中に鈍く光る優しさやおかしさを丁寧に掬い取りながら、「虫」だった彼らはいつしかまごうことなき「いいもん」となった。人生って捨てたもんじゃないと思わせてくれる。空気階段のコントに感じるそんな「希望」の正体を、水川かたまりに聞く。

【関連】空気階段・鈴木もぐらが追求する“コントのリアリティ”。「どっぷり浸かった人をこの目で見ている、嘘はつけない」


「珍しい害虫」のように見られていた

芸人雑誌volume4
空気階段表紙ver『芸人雑誌 volume4』(通常版/全国書店・ネット書店にて発売)

──2年連続で『キングオブコント』の決勝に行かれて、生活は変わりましたか?

かたまり 自分の給料で生活できるようになったのが大きいですね。コントでご飯が食べられたらっていうのが、ひとつの目標としてあったので。

──有名になっていくことの怖さみたいなものはあるのでしょうか?

かたまり 怖さ……。なんですかね。そんな、変わっちゃないですけど(笑)。たとえば、電車乗ってたりご飯食べてたりとか、そういう場面で「いつも見てます」って声をかけていただくこともあるので、いろいろ気をつけようと思いますね(笑)。言っちゃいけないことを言わないとか。吸っちゃいけない場所でタバコ吸わないとか。

ただ、ネタをやる上ではやりやすくなってるのかなって思います。以前は見に来てくれるお客さんも僕らのことを知らない人が大半だったので。だって昔は本当に虫を見るような目で見られてたんですよ。スベりまくってました。

──それは「珍しい昆虫」ですか、それとも「害虫」的な……?

かたまり 「珍しい害虫」ですね(笑)。

──珍しい害虫、一番怖い(笑)。

かたまり 特に無限大ホールは若い女性のお客さんが多い劇場なので、なかなかの害虫でしたね。お客さん投票は全然入らないし。票がもらえたのは作家さんが審査するときだけです。少数の「面白かったよ」って言ってくれる人を心の支えにしていました。

空気階段のコントに希望があるのは

空気階段 水川かたまり
空気階段・水川かたまり(『芸人雑誌 volume4』より)

──かたまりさんはネタを作るとき、人間のどんな部分に着目されていますか?

かたまり もぐらも僕も基本的にあんまりちゃんとした人間ではないんですけど……。でも、曇りもなく「自分はちゃんとしてるぞ」と言える人っていないんじゃないかとも思う。ダメな人がダメなことしてるのをまったく理解できなかったら、たぶん僕たちのネタはウケないと思うんです。でも多少なりとも「なんとなくその気持ちわかるよ」っていうか、そこに共感があるから笑ってもらえているんじゃないかと。

──ああ、それは人間の希望ですね……。

かたまり コントのキャラクターには自分たちの感覚を投影してる部分もあるんです。「自分だったらこうだよな」っていう想像のキャラクターを動かしているので、そいつが不幸になったら悲しいじゃないですか。だからほんと、自己肯定なんですよ。

──自己肯定……。

かたまり 自分のなかのめっちゃダメな部分を抽出したキャラクターなんだけど、そこもまあ、許してよ……みたいな。ストーリー書くうえでは、そうですね。逆に自分で嘘だなって思うことや、自分だったらこうしないなっていうことには気持ちが乗っかんないんです。

──そこにリアリティがあるから、見てる人は共鳴するのかもしれないですね。

かたまり うーん。なんですかね。漫才ってその人の“人となり”が出てるほうが面白いと言われますけど、コントでもそういうのはあったほうがいいかなって思います。自分のなかにないものを演じられるのはすごいことなんですけど、それができないからなんですかね、やっぱり自分のなかにあるキャラクターになる。

空気階段 水川かたまり
空気階段・水川かたまり(『芸人雑誌 volume4』より)

──以前インタビューで「漫才は照れる」みたいなお話をされていましたが、コントのキャラを「演じる」ことに照れはないですか?

かたまり ああ……そうですね……。基本的には自分のなかで無理してんなっていうラインにいったら恥ずかしくなるので、それはやんないようにはしてます。今完全に無理して声出してるなとか、無理して動いてるなみたいな感覚があると恥ずかしいし、ウケないですし。無理なくできる範囲を広げていくっていうのが、今後やっていかなきゃいけないなと思うところです。

昔は女装もしたくなかったんですよ。でも、恋愛のコントとか男女の心理的なやりとりをやろうと思ったら、もぐらはひげ生えてるし、なら僕が女性役やるしかないかって。

──そもそもお笑いと恋愛の相性ってあんまり良くないというか、ネタにするのが難しそうだなと思うんです。でも空気階段さんは純愛コントにチャレンジして成功されてる。

かたまり 純愛コント(笑)。でも僕の感覚としては、恋愛ってすごくたくさんコントにできるシチュエーションがあるなって思います。感情が大きく動くものなので、感情の振り幅があるぶん、面白いシチュエーションとか、そのなかですごい輝くような暴れられるようなキャラクターも出てきますし。

労働環境の良い空気階段の“農園”

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西澤千央

(にしざわ・ちひろ)1976年生まれ。神奈川県出身。実家の飲み屋手伝い→ライター。『クイック・ジャパン』(太田出版)や『文春オンライン』、『GINZA』(マガジンハウス)などで執筆。ベイスターズとねこと酒が好き。

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