「トランプ劇場」が露わにした“中央”の空虚さと二大政党制の無意味さ(粉川哲夫)

2021.1.9

ホワイトハウスとはその程度の場所だった

トランプについての批判的な評伝『世界で最も危険な男(TOO MUCH and NEVER ENOUGH)』(小学館/2020年)を書いた彼の姪にして心理学者のメアリー・トランプは、「絶対に負けていない」「身を引かない」と言いつづけているトランプに関し、『VICE NEWS』でのインタビューで、彼の特性を「gaslight」という心理学用語で説明している。

「ガスライト」とは、人を騙すために自分を「狂人」に見せることだが、しかし、トランプ問題をひとりの人物の「狂気」や特性の問題に還元することはあまり意味がない。なぜなら、人は誰しも、その特性や独異性を尊重するならばみな「狂人」であり、「正常」とは、各「狂人」が便宜上付き合っているヴァーチャルな領域に過ぎないからである。

トランプ劇場を通じて明らかになったのは、むしろ、国会というような「中央」は空虚であり、二大政党というようなものは個々人にはなんの役にも立たず、そして、大統領は別に特別の政治家でなくても1期ぐらいは務まるということである。この間の「中央」のドタバタ劇の傍らで、今、アメリカの各州では「中央」の形骸化とは裏腹の動きがある。それが、今回のジョージア州での上院議員選挙の結果にも見られる。コロナ禍も「中央」では解決のしようがない。そういう時代なのだ。

【追記】
1月8日の夕方になって、編集の森田さんから、トランプが最終的な「敗北宣言」を出したと知らされ、映像を観た。が、それは、まるで悪さをして叱られたワルガキがしょげながら惰性で模範原稿を読んでいるだけのスピーチで、もし、これが「トランプ劇場」の最終場面だとすると、この「劇」は、段取りの悪いただのドタバタ劇だったことになる。そうであれば、なおさら、ホワイトハウスとはその程度の場所だったということにもなる。

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