バイデン政権の誕生でアメリカはどう変わる?カルチャー面では70年代後半&90年代の活気が復活か

2020.11.9

トップ画像=「Joe Biden」公式YouTubeチャンネル『Joe Biden’s Full Speech After Becoming President-Elect of the United States of America』より
文=粉川哲夫 編集=森田真規


11月8日未明(日本時間)、民主党のジョー・バイデンがアメリカ大統領選での勝利を確実なものとした。世界中を振り回してきたドナルド・トランプが退陣し、バイデン政権が誕生することでアメリカはどう変わっていくのか?

『メディアの牢獄』(1982年)や『もしインターネットが世界を変えるとしたら』(1996年)などの著書を持つメディア論の先駆者として知られ、かつてニューヨークに居を構えていたメディア批評家の粉川哲夫。

彼は「ジョー・バイデンの時代の文化は、70年代の後半と90年代にコロナ的な『距離の文化』で味つけしたような動向を見せるだろう」と予想する。


バイデン政権の誕生を祝福する群衆たち

今、11月8日の午前4時。深夜の「徘徊」散歩から帰ってきてコンピュータをつけたら、出がけに253だった数字が273になっていた。ジョー・バイデンが獲得した選挙人の数である。トランプの数値は214のまま。ざまあみろ、バイデンの勝ちだ。米国国民でもない私がこんなことを言うのは、おせっかいな話だが、この4年間、トランプの嘘八百とハッタリは聞き飽きた。もともと、ハリウッド映画に飽きたので「トランプ劇場」に見物の場を移したのが始まりだ。その腐れ縁で飽きもせず、トランプのプロレス興行的演出を楽しみもしたが、彼が次第に独裁者気取りになってくるのを見て、もう付き合えないと思った。

ワシントンは、今、午後2時過ぎで、少し前から群衆がホワイトハウスの周囲に続々と集まっている。無論、バイデンを祝福する群衆である。その高揚した雰囲気は、すでに祝祭である。いわば、「BLACK LIVES MATTER」のデモが、陰から陽に転換したかのような明るさで張り詰めている。声援に混じってドラムやさまざまな楽器の音も聞こえる。

US election: Biden supporters celebrate his victory in streets across the country

アメリカの「選挙人団」の古い制度のもとでは、選挙人を270人以上獲得したからといって、それが即大統領就任につながるわけではないが、今後トランプがいかに横車を押してもこの民衆の動きは止められないだろう。トランプは、もし自分が負けたら、内戦も辞さないとも言ったが、今この時点で、親トランプの「武装親衛隊」がどこかに集結したというニュースはない。

最高裁に訴えて開票自体をストップさせるだの、郵便操作をするだの彼の汚い妨害工作はすでに失敗に終わっている。トランプの息子のエリックがばら撒いた、トランプ票を燃やして捨てているスマホ映像も、拡大画面で投票用紙がニセモノであることが判明している。なんともお粗末な話だ。

トランプが今後要求するであろう再集計(リカウント)を連邦最高裁が認めず、普通の段取りで進んでも、12月14日に選挙人が投票するまでは大統領は決まらない。選挙人の中には、バイデンに投票すると宣誓していながら、裏切る「フェイスレス(不誠実・当てにならない)な選挙人(“Faithless Elector”)」もいるので(しかも罰則はないに等しい)、この選挙人投票が終わるまでは本当のところはわからない。しかし、今回のような民衆的勢いの果てに選ばれた選挙人が、裏切りをするとは思えない。バイデン政権の誕生は間違いない。

「トランプ劇場」が終幕し、アメリカはどう変わるのか?


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粉川哲夫

(こがわ・てつお)メディア批評家、ラジオアートパフォーマー。著書に『メディアの臨界』『アキバと手の思考』(共にせりか書房)、『RADIO-ART』(UV Éditions, Paris)など。https://anarchy.translocal.jp/

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