バイデン政権の誕生でアメリカはどう変わる?カルチャー面では70年代後半&90年代の活気が復活か

2020.11.9


「トランプ劇場」が終幕し、アメリカはどう変わるのか?

では、バイデン政権のもとでアメリカはどう変わるのだろうか? トランプは「名悪役」を演じたが、リアルポリティクスの側から見れば、彼は、アメリカの旧時代の要素を露出させる「功績」があった。工業化の時代が終わり、陽の当たらなくなった地帯とその産業をあたかも再興できるかのようなかけ声で表に呼び出し、束の間、旧時代のホワイトプアーや脱工業化とグローバリズムを仇と思っている人々に偽りの救いを与えた。これで得をしたのは、そういう場所に既得の権益を握る富豪たちだが、同時に、アメリカのどこが「未開発」なのかを教えもした。

トランプが、本当にそうした人々を救えると考えていたとは思えない。ニューヨーカーで、かつては「スタジオ54(※編集部注:ニューヨークの伝説的クラブ)」あたりにも出没していたトランプが、ダサい服と髪型で「困ったオヤジ」を演じてきたのは、「トランプ政権のラスプーチン」ことスティーブン・バノンの入れ知恵である。

彼の裏には常にバノンがいたことは、『フォッグ・オブ・ウォー マクナマラ元米国防長官の告白』(2003年)や『アクト・オブ・キリング』(2012年)のドキュメンリーで政治の暗部を暴き出したエロール・モリスの『American Dharma(原題)』(2018年)を観ればよくわかる。

American Dharma (Official Trailer)

バノンにとって、トランプは「起用した役者」に過ぎなかった。そして、バノンの究極の狙いは、アメリカを燃やし、世界に火を点けることである。しかし、そのラスプーチンは、みっともないことに、メキシコ国境に壁を作るインチキクラウドファンディングで金集めをした容疑で逮捕されてしまった。

また、トランプの嘘を「オルタナティブ・ファクト」というヴィトゲンシュタインも呆然とするだろうロジックを駆使して弁護しつづけたケリーアン・コンウェイにも見放され、トランプには無能な親族しか頼る者がいなくなった。そして、おまけにコロナ感染である。バノンはどこかで別のトランプを見つけるだろう。コンウェイは、トランプの暴露ビジネスで一生食いっぱぐれがない。トランプは、道化だった。道化が道化であることを忘れた哀れさを、これから身に沁みて感じなければならない。

ところで、以上は、あくまでも「トランプ劇場」の終幕を叙述しただけであって、アメリカ政治の実相の記述としてはいささかセンチメンタルである。トランプは、減税措置によって億万長者を有利にしはしたが、億万長者にも二派あり、彼は、旧時代の産業や既存の財産に寝そべる億万長者を有利にはしたが、ハイテクとスタートアップの新億万長者には冷たかった。

だから、この数日、バイデン政権誕生の兆しが見え始めると、アマゾン、フェイスブック、ウーバーといった株が高騰し、ベゾスやザッカーバーグはウハウハだったとか。要するに、バイデンが大統領になっても格差は縮まるどころか、広がるところでは広がる。それは、資本主義の必然である。そこでは、数語のひらめきに、100語の駄文よりも高額な値がつくのが不当ではないという「不公平」がスタンダードなのだ。

70年代後半&90年代的なカルチャーに「距離の文化」をプラス

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粉川哲夫

(こがわ・てつお)メディア批評家、ラジオアートパフォーマー。著書に『メディアの臨界』『アキバと手の思考』(共にせりか書房)、『RADIO-ART』(UV Éditions, Paris)など。https://anarchy.translocal.jp/

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