2020年も性差別やジェンダーにまつわる話題が次々と湧いては消えていった。アニメやイラストを使用した広告表現が議題に上がることもたびたびあり、声を挙げるフェミニストにとっても、フェミニズムを目の敵にする側にとっても「またか」と思う案件も多かったのではないだろうか。
アニメ絵の広告問題だけでなく、アダルト動画の暴力的な表現、避妊用ピルの市販解禁、性的同意年齢の引き下げ、性犯罪法の改正など、長年議題にのぼりつづけている多くのテーマは、10代の少年少女たちに直接関わりの深い問題も多いように思われる。
そのような意識の高まりの結果か、2020年はかつてないほど多く性教育についての良書が出版された。私の知る限りでは2~3年前までは、悩める保護者の役に立つような性教育の本を探すのに苦労したし、せっかく見つけても10代の性行為について「責任が取れないうちは慎重に」などと抽象的に書かれているだけでがっかりしたものだった。責任とは、いったいなんだろうか。
最近の本は考え方がアップデートされているだけでなく、子供にどのような言い方で教えるか、子供のよくない言動にどう対応するかなど、実践の場をイメージしてかなり具体的に深く斬り込んでいる印象だ。実際に子供がいても、自分の自信のなさや面倒くささから、また「自然と知るもの」「学校で教えてくれるのでは」「もっと大人になってから」という言いわけの常套句を借りて、つい性教育すべき場面から逃げてしまう人も多いのではないだろうか。
そんな人にこそぜひ読んでほしい本を今回は3冊紹介させていただこうと思う。
女児を育てる父親がまず読むべき本

現在もテレビなどでコメンテーターとして活躍中の現役産婦人科医、宋美玄(そん・みひょん)さんの監修によるコミックエッセイ。特に女の子を育てている保護者に必須の生理、妊娠、ピル、性暴力、また性感染症とLGBTQに重点を置いて押さえるべきポイントをわかりやすく解説する。
この本の最大の魅力は、産婦人科医だからこその豊富な知識、そしてたくさんの患者と関わってきたからこそ描かれる思いやりだろう。私たちが陥りやすい迷信(例:生理は自然現象だから痛くても薬を飲まないほうがいい)をばっさりと切り捨て、生きやすさへと導く。
個人的に目から鱗だったのが「娘の生理は自身のプライバシーなので報告を義務づけないこと」というアドバイス。親からすれば「きちんと知っておくのが当然」とつい思ってしまいそうだが、本書の《生理をチェックし過ぎてはいけない理由》を読めばなるほどと納得がいく。母親はもちろんのこと、女児を育てる父親がまずはじめに読むべき本としてもおすすめだ。
「ピンチのときに頼ってもらえる親になることを目指して」という本書内のフレーズが示しているように、この一冊を理解するだけでかなり頼もしく、娘の味方になれるような実践的な対応が身につけられる。もし子供がLGBTQかもしれないと思ったら、もし子供が自傷していたら……など、対応に迷いそうな問題にもしっかり触れ、子供だけではなく自分自身の今後の人生にもプラスになる考え方に出会える。
最新にして最強、男児向けの性教育本

小学校高学年になったある日、女子だけがカーテンを閉め切った暗い教室に集められる──という性教育の「あるある」は、よく考えてみれば慣れるべきではない不可解な趣向だ。生理や妊娠のある女子にだけ特に性教育が必要という考え方は、今も私たちに悪影響を及ぼしてしまっているのかもしれない。
性被害に遭う12歳以下の男児の割合は、ほかの年代に比べて多い。また、性についてAVからしか学べなかった男児よりも、性について正しく学ぶ機会を得られた男児のほうが、大人になってから自分自身や他者を大切にし、豊かに生きるアドバンテージを手に入れられるだろう。男児にも絶対に性教育は必要なものだ。
本書はふたりの男の子を育てるシングルマザーであり弁護士として離婚問題などにも取り組む著者によるエッセイだ。リアルな子育ての日々に笑ってしまったり共感したりつつ、社会学、男性学としても読むことができる。
家でどんなに気をつけていても幼稚園や学校で取り入れてくる「男なんだから」「男のくせに」という価値観からどうやって自由になればいいのかと有害な男らしさの呪いについて考察し、また、ネットで話題になるアニメの性的な表現やポルノコンテンツとの向き合い方にもじゅうぶんにページが割かれ、「なんとなくだめ」「とりあえず禁止」ですませることなく核心に迫る論旨を展開している。男の子を持つ親でなくてもメディアと性表現の問題に興味がある人には必読の内容だ。歴史が浅いだけになかなか語られていない男児向けの性教育だが、最新にして最強、自信を持っておすすめできる本だ。
共感と発見の連続、「子供のため」を知る実践的コミックエッセイ
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