大切なことはいつもラジオが教えてくれた。コロナ禍をタフに生き抜く視点と想像力

2020.4.20


声優ラジオ・アニラジでは「デジタルお渡し会」も!

声優ラジオ・アニラジと呼ばれる番組についても触れておきたい。このジャンルは独自の進化を遂げていて、WEBラジオやニコニコ生放送で展開されている番組が数百も存在する。一般的な地上波とは違い、スポンサーがついていない場合が多く、グッズやイベント、有料配信などの収入で番組が成立している。それだけに、新型コロナウイルスの余波をもろに受けていて、地上波以上に番組の休止や更新頻度の減少が目立っている。

ラジオ大阪の元東京支社長である兼田健一郎が運営する制作会社ベルガモも大きな逆風にさらされた。2019年に立ち上げたばかりの会社で、主にニコニコ生放送で番組を展開しているが、収入の7割はイベントとそれに伴う物販によるもの。日本最大級のアニメイベント『AnimeJapan 2020』が中止となり、グッズを販売をする機会が失われたのは死活問題だった。

しかし、長年この業界でしぶとく生き抜いてきた兼田はすぐに動く。3月半ば、急速に広まっていたオンライン会議アプリ「Zoom(ズーム)」を利用して「デジタルお渡し会」を行ったのだ。

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声優ラジオの企画として行われた「デジタルお渡し会」の模様

「お渡し会」とは、購入したグッズを直接タレント(今回の場合は声優)から受け取り、その間に会話もできるというスタイル。そのデジタル版はグッズを郵送し、一定時間だけZoomを介してタレントと会話してもらうという時勢に合わせた非接触型だ。兼田は自ら“デジタル剥がし”を担当し、参加者と声優のトークが円滑に進むよううまくさばき、ほかの参加者に声が聞こえてしまうなど問題点はあるにせよ、一応の成功を果たした。

リモート放送など感染拡大防止に最大限努めつつ、兼田は非常事態宣言を「この極端に家にいる1カ月。ベルガモのような新参者にとっては絶好のチャンスだと思ってます」と前向きに受け止め、新たな企画を熟考中だという。ほかにも、文化放送が運営するWEBラジオ局「超!A&G+」では、急遽空いた枠でディレクターと構成作家がパーソナリティとなってリクエスト番組を放送していた。ジャンルは違えど、やはりラジオはどんな苦しい状況にも図太く順応する。

バランスを崩して倒れてしまいそうになる今こそラジオが力になる

テレビのワイドショーを見ていてつらく感じることが増えてきた。コメンテーターは視聴者たちの代弁者のはずなのに、連日コロナ問題の渦中にいるせいか、その口から発せられる言葉がきつくなってきているのだ。代弁者なのに、とても遠い存在に思えてくる。しかし、ラジオのパーソナリティたちは違う。どこまでも等身大の存在で、自分の言葉を使って語りかけてくれる。やはり「ラジオは寄り添ってくれるメディア」だと改めて実感している。

この緊急事態宣言下で、深夜ラジオのパーソナリティたちは突然生まれた暇を潰す方法を熱心に話していた。伊集院光は熱中している『あつまれ どうぶつの森』について語り、星野源はヒゲを伸ばすチャレンジに挑んでいることを語り、霜降り明星のせいやはこのタイミングで彼女と別れたことを語り、オードリーの若林正恭は新婚の嫁に白い目で見られながら、自室で替え歌を熱唱していることを語っていた。コロナ問題には直接的に言及していないけれども、そんなありふれた日常の話こそ、日々を過ごす力になってくれる気がする。環境や状況は違うし、どんな表情をしているのかは想像するしかないが、彼らは私たちと同じ時間を確かに生きている代弁者だ。

あるパーソナリティにインタビューしたとき、「僕の座右の銘は『人生捉え方次第』なんです」という話を聞いたことがある。まさにラジオは人生の違った捉え方を提示してくれるメディアだと思う。

もちろん「捉え方次第」と言い切るには、新型コロナウイルスに揺れる今この状況はあまりにヘビーでシビアだ。この文章を書いている最中にも赤江珠緒アナに新型コロナウイルスの陽性反応が出たと報道された。歯を食いしばっていないとバランスを崩して倒れてしまいそうになるが、それでもラジオは電波やインターネットを介し、タフに生きるための視点と、たとえ強がりだとしてもそれを楽しむ想像力をずっと伝えつづけてくれている。

4月7日深夜、初めて自宅からオールナイトニッポンを放送した星野源は終了間際に「同じ時間を生きましょう。ラジオという媒体を通して同じ時間を過ごしていきましょう」と呼びかけてから、こんなメッセージを送っていた。

「苦しいことに対抗するのはいろんな方法がありますが、僕が一番好きなのは楽しむことです。ものを作ったり、ものを見たり、楽しくなることで、僕はいろんな苦境を乗り越えてきました。なんで、みんなで一緒に乗り越えていきましょう。バラバラの場所で」

▶︎【総力特集】アフターコロナ
『QJWeb』では、カルチャーのためにできることを考え、取材をし、必要な情報を伝えるため、「アフターコロナ:新型コロナウイルス感染拡大以降の世界を生きる」という特集を組み、関連記事を公開しています。

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村上謙三久_プロフィール

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村上謙三久

(むらかみ・けんさく)編集者、ライター。1978年生まれ。プロレス、ラジオ関連を中心に活動。『声優ラジオの時間』『お笑いラジオの時間』(綜合図書)の編集長を務め、著書に『深夜のラジオっ子』(筑摩書房)、『声優ラジオ“愛”史 声優とラジオの50年』(辰巳出版)がある。

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