テレ東P・佐久間宣行は中年深夜ラジオリスナーにとって最後の“兄貴”である

2020.2.19
佐久間宣行のオールナイトニッポン

文=村上謙三久 編集=森田真規
トップ画像=『佐久間宣行のオールナイトニッポン0』公式ホームページより


2020年2月18日から21日の4日間、‪ニッポン放送の20時~21時50分というゴールデンタイムの帯番組のパーソナリティをテレビ東京のプロデューサーである佐久間宣行が務めることになった。しかも、聴取率調査週間いわゆる「スペシャルウィーク」の期間にである。

テレ東のバラエティ番組『ゴッドタン』のプロデューサーとしてお笑い好きには知られていた佐久間Pは、2019年4月から『オールナイトニッポン0』の水曜深夜のパーソナリティを務めている。そんな佐久間Pが「アラフォーの深夜ラジオリスナーにとって最後の“兄貴”」である理由とは――。

テレビ、音楽、本、80年代の文化、シモネタも、すべてラジオから学んだ

深夜3時に、本業はテレビ東京のプロデューサーである44歳のオジサンが、年下のオジサンリスナーに刺激を与える――。こう書くと笑い話にも感じるが、『佐久間宣行のオールナイトニッポン0』には中年リスナーが長年味わってきた「真夜中に年上の話をちょっと背伸びして必死に理解する」という深夜ラジオの魅力が詰まっている。

さまざまな‪エンターテインメントを熱っぽく語るトークに感化され、私はいちリスナーとしてAmazonプライム・ビデオで『モダン・ラブ ~今日もNYの街角で~』を観て涙し、劇団・ヨーロッパ企画のチケットを取り忘れたことを悔い、ジングルで紹介された新宿御苑前のうどん屋に足繁く通った。長年見てきた『ゴッドタン』(テレビ東京)に「好きなパーソナリティがプロデューサーをやっている」という特別な思い入れを持つようになった。

ラジオでの活躍はオールナイトニッポンだけにとどまらず、このコラムを書いている現在は4夜連続の特番『佐久間宣行の東京ドリームエンターテインメント』が放送されている。1日目(2月18日放送)は極楽とんぼがゲスト。残念ながら加藤浩次はインフルエンザで欠席となったが、山本圭壱とふたりだけのトークが実現し、14年前にお蔵入りとなった番組の裏話を語り合った。『ゴッドタン』の人気企画「この若手知ってんのか!?2018」がブレイクのキッカケになったEXITも出演。テレビ東京のサラリーマンが本業のラジオパーソナリティさながらに特番を取り仕切った。2日目以降も、秋元康、飯塚悟志(東京03)、東野幸治、春日俊彰(オードリー)ら豪華ゲストが出演する。

佐久間宣行はアラフォーの深夜ラジオリスナーにとって最後の“兄貴”である。

突然、そんなことを言われても、ほとんどの人は失笑するかもしれない。ラジオを聴いていなければ「理解できない」「気持ち悪い」と思う人もいるだろう。今からそう感じる理由を説明するので、引かずに読んでほしい。いち中年リスナーとしては、受け止めなければならないけっこうヘビーな問題なのだ。

60年代後半に生まれた深夜ラジオというジャンルは、学生向けに作られ、その自由さから“深夜の解放区”と呼ばれた。学生リスナーから見た年上のパーソナリティたちは、誰もが寝静まった真夜中に、自分が触れたことのない文化を教えてくれ、人生相談にも乗ってくれる兄貴・姉貴的存在だった。学生向けゆえに、当時のリスナーは社会人になると同時に深夜ラジオから“卒業”していき、聴取者層は常に入れ代わっていたことにも触れておきたい(もちろんずっと深夜ラジオを聴きつづける人たちも少なからずいたが)。

現在のアラフォー世代がラジオに初めて触れた90年代は、もう深夜ラジオが“クラスのみんなが聴いているメジャーなもの”ではなくなっていたが、それでもその世界には兄貴・姉貴があふれていた。彼ら彼女らはラジオを通じて、見たことのないテレビ番組、知らなかった曲、読んだことのない本、間に合わなかった80年代の文化を教えてくれた。シモネタもすべてラジオから学んだ。

「真夜中に年上の話をちょっと背伸びして必死に理解すること」がたまらなく刺激的だった。そうしてパーソナリティと共通言語を育んでいく感覚は深夜ラジオが持つ魅力のひとつだろう。若者が深夜に時間を潰す選択肢が増え、ラジオ離れが進んだ今も、やはり10代のリスナーは、年上のパーソナリティにそんな思いを抱いているのではないだろうか。


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