『水溜りボンドのANN0』緊張と驚きの初回放送を密着レポート(写真23枚)

2020.4.9

文=山本大樹 写真=時永大吾
編集=田島太陽


トミーとカンタによる、ふたり組の動画クリエイター「水溜りボンド」。YouTubeチャンネルの登録者数は420万人以上で、再生回数1000万回を超える動画も多数。活動を始めた5年前から毎日欠かさず新作を公開しており、若者を中心にカリスマ的な人気を誇っている。

そのふたりが、この4月から『オールナイトニッポン0(ZERO)』のレギュラーパーソナリティを務めることになった。動画クリエイターとしては初めての大抜擢だ。

『クイック・ジャパン』では2019年のvol.142で、50ページにわたる特集で水溜りボンドの信念や素顔に迫り、いち早くその活動に注目してきた。YouTubeという枠を飛び越えて新たなステージに挑戦するふたりは、全国ネットのラジオでどんなトークを展開してくれるのか?

初回放送に密着し、緊張感あふれる現場を取材した。


企画力と信念の強さを発揮する

4月2日、記念すべき番組初回放送の夜。

深夜24時半、ニッポン放送にピカピカの新車が到着した。2週間前に『トミー、車を買う。』の動画で購入した新車のアルファードだ。

先に車から降りたカンタは取材陣を見つけると、ドアに手をかけて自慢げにピースサイン。それに気づいたトミーが「いやいや、俺が買った車だから!」とすぐにツッコミを入れる。

到着早々、カメラにポーズを決めるカンタ

そのままふたりは「俺“ら”の車でしょ」「俺がいくら維持費払うと思ってんだよ!」とおしゃべりをつづけながら局内へと入っていった。いつもどおりの自然体なトミーとカンタ。彼らはこれから、「水溜りボンドの原点」と語る“おしゃべり”という武器ひとつで、深夜ラジオという戦場へ乗り込んでいく。

「マジで俺が買ったんですよ」と説明してくれるトミー

「私たちも初回なんでふわふわしてると思いますけど、よろしくお願いします」と、番組を担当する小鍛冶優子ディレクターが取材陣を案内してくれた。実は小鍛冶Dも『オールナイトニッポン0(ZERO)』のレギュラー放送を担当するのは初めてのことだという。パーソナリティもスタッフも、フレッシュな顔ぶれでの番組スタートだ。

この日は新型コロナウイルスの影響もあり、局内のフロアも閑散としていた。ふたりのうしろをついて9階の会議室へ上がるとすぐに番組スタッフが集まり、放送前の打ち合わせが始まる。

ニッポン放送に入るとすぐに打ち合わせを開始

打ち合わせ中も、ふたりは小鍛冶Dや構成作家の高橋亘にどんどん意見をぶつける。「この呼び込みって、トミーが読んだほうが自然じゃないですかね?」「お知らせの時間に言うことないんで、お知らせ用のグッズでも作りましょうか?」と物怖じせずに次々とアイデアを提案するふたりに、スタッフも「いいですね、そうしましょう」と柔軟に応じていた。ゼロから自分たちをプロデュースして、自分たちがおもしろいと思うことに周囲を巻き込んできたふたりの企画力と信念の強さを垣間見た瞬間だった。

台本に目を通しながら、新しいアイデアも追加する

打ち合わせの終盤にトミーが退室すると、作家・高橋から「さよならチェーンソーの会」のコーナー企画がカンタに伝えられる。水溜りボンドが『オールナイトニッポン0(ZERO)』木曜日のパーソナリティに決まった際、前番組の『オールナイトニッポン』パーソナリティ岡村隆史は「『YouTuberなめんなよ!』って言ってチェーンソー振り回すんでしょ?」「そこらじゅうボンドだらけになるんでしょ?」「怖いです、ほんとに」と勝手なイメージを語っていた。世間から見ればまだまだ謎の多い「YouTuber」と呼ばれる職業に対する誤解や恐怖心を解いていこう、という趣旨のコーナーだ。

終始にこやかなムードで打ち合わせは進んだ

カンタはそこで牧師のようなキャラクターを演じ、水溜りボンドの怖い一面(=チェーンソーな部分)を取り除いていくのだという。作家・高橋から「絶対にキャラから降りないでくださいね」と念を押され、カンタは不安そうな表情で渋々了承していた

「人生で一番長い2分間になるかもしれない」

打ち合わせを終えると、ふたりはブースに入って再び打ち合わせ……の前に、「自撮りしよっか」とラジオのテーブルを囲んで記念撮影。

ブースに入り、まずは記念撮影をするふたり

小鍛冶Dからカフ(マイクのON/OFFを切り替えるレバー)の使い方について「くしゃみをするときにサッと下ろすと慣れてる感じが出ますよ」とアドバイスを受け、カンタは「絶対やろ!」とはしゃいでいた。

そのままブース内で番組のジングルも収録。普段の動画では流暢なしゃべりを披露しているトミーが台本のセリフを噛んでしまい、「あー、すみません!」と頭を抱えてスタッフに謝っていた。さっきまでは取材陣に笑顔を見せていたトミーだったが、意外にも緊張しているのかもしれない。

ジングル収録でディレクターの指示を聞くトミー

ジングル収録を終えたトミーに話を聞くと、「緊張感もありますけど……今まで積み重ねてきたものが試されると思うし、自分たちらしさが出ればいいなと思います」と明るい表情で答えてくれた。「おもしろいことがあったら基本カンタにしゃべっちゃうんで、ラジオのある日まで言わずに取っておくっていうのも新鮮でしたね」と、フリートークの準備もバッチリのようだ。

一方のカンタは、ジングルを録り終えるとサブ(副調整室)のイスに座ってリラックスしている様子。「準備できましたか?」と尋ねると、「できましたね。『オールナイトニッポン』はずっと聴いてたんで、本当に楽しみです!」と笑顔を見せた。「動画だと再生数とかも気にするんですけど、ラジオでは日常であったことを『こういうことがあったんだよね』ってリスナーに向けて気軽にしゃべれるのがいいですよね。いつもの生活の中でも、着眼点が変わってくるかもしれないです」

初回放送の台本

そして放送開始5分前。ふたりは前番組の『ナインティナイン岡村隆史のオールナイトニッポン』が放送されているブースへ向かう。岡村の番組のラスト2分間に、トミーとカンタが乱入するのだ。カンタは「人生で一番長い2分間になるかもしれない」と震え上がっていた。

一度しかない“初回放送”あのアーティストからもメッセージ


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山本大樹

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山本大樹

(やまもと・だいき)編集・ライター。1991年生まれ、埼玉県出身。明治大学大学院にて人文学修士(映像批評)。編集プロダクション勤務を経て、2019年に独立。現在『クイック・ジャパン』外部編集・ライターのほか、『BRUTUS』、『オードリーとオールナイトニッポン』シリーズ、『三四郎のオールナイトニッポ..

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