好奇心を奪われる前に観たい、有事を描く映画3選(川田十夢)
開発ユニット「AR三兄弟」の公私ともに長男で、開発者の川田十夢。AR(拡張現実)技術を駆使し、多くの人々を魅了する世界をつくり出している。
新型コロナウイルスの蔓延で人々が混乱し、疲弊しつづける日々。前回の記事で川田は、自宅で楽しめるおすすめのゲームを紹介した。今回は映画編。あえて“有事のプレイリスト”として、フィクションの中でウイルス蔓延と危機管理を描く映画たちを紹介する。
有事のプレイリスト、映画編。
晴耕雨読。の、「読」が「毒」に脳内変換されてしまう今日このごろ。いかがお過ごしですか? 通りすがりの天才、川田十夢です。僕の本領は開発なのですが、何を可視化して、何を不可視化するべきか。考えて実装する日々です。10年前から採用していたテレワークを、照れながら続行しています。
日々更新される新型コロナウイルス感染症関連のネットニュースに一喜一憂するだけでは、魂が疲弊してしまう。優れた作家は、世間の関心事とは別の個人的な有事を常に持っており、その豊かな感性によって事象を先回り。未来を予見、予防している。たとえばオノ・ヨーコは、1964年にコフ・ピースという作品を発表。白い空間のあらゆる場所から咳き込む音が聞こえてくる。人々が過剰反応するずっと前に、パブリックスペースにおける咳が人間に与える影響をユーモラスに可視化していた。
心が荒み切って明日へ向かう好奇心が奪われる前に、まだ遊び心のあったころの危機管理に目を向けてみてはどうだろう。まずは映画についてまとめた。有事のプレイリストとするべく、作品の中で行われた報道を細かく整理してある。ご参考まで。
『コンテイジョン』(2011年)
製作国:アメリカ
ウイルス名:不明
ウイルス発生源:香港
ワクチン:MEVワクチン
潜伏期間:48時間
被害者数:全世界で2600万人が死亡。
正常化までにかかった期間:90日で初期ワクチン、流通までに1年間。
利用した配信サービス:Netflix
病名が明らかにならないまま世界へ広がる感染症。海外出張の隙に不倫を試みる母親、感染症の経路を示すために証拠を当局に渡したことでその不倫を知ってしまった父親。保健局で働き、ウイルス発生源の究明とワクチン開発に勤しむ人々など。現在のコロナウイルスの伝播と諸対応に一番近いストーリー。
学校閉鎖、スーパーでの暴動、閑散とした水族館やスポーツジム、国境の封鎖などなど。現実と近しい順番で感染対策が取られるなか、情報通ぶったブロガーが登場。レンギョウという、いかにも効きそうな薬草がウイルスに効くとデマを流す。単なるパンデミック映画に終わらないところがスティーブン・ソダーバーグ監督作品。
ウイルスの恐怖と同じくらい、人間の醜いところ美しいところが描かれている。有事にだって思春期はあるし、名誉を捨てて愛する人へ特効薬を届けようとする人もいる。個人的に一番印象に残っているのは、ハリウッドの大作に名を連ねるビッグネームの俳優たちが、序盤でバタバタ死んでゆくところ。ウイルスの横殴りの恐怖を、こういう形でフィルムに収めているのは珍しい。映画業界のスターシステム、不文律さえ崩壊させるウイルスの猛威を、こういう形で作品にしたところ。評価したい。