AKB48岡田奈々が選んだ“人生を見せる”生き方「アイドルとファンの関係を超え、人として支え合いたい」

AKB48岡田奈々が選んだ“人生を見せる”生き方

文・編集=森 ユースケ 撮影=飯田エリカ 編集=田島太陽


AKB48の岡田奈々は2016年、「自分らしさ」に悩んだ結果、何かを変えたくて髪の毛をバッサリ切った。現在は登録者数が14万人を超えるYouTubeチャンネル『ゆうなぁもぎおんチャンネル』を始めたことで、徐々に「素の自分を出せるようになってきた」と明かす。

彼女が語る言葉から、周囲から求められる「理想のアイドル像」と「自分らしさ」の距離感を探るロングインタビューの第2回(全3回)。

連載「アイドルとシスターフッド」
見る人の数だけ存在する「アイドル」のイメージに翻弄され、時にエイジズム、ルッキズムの呪縛にかかりながらも、その言葉の枠に留まらない女性たちの心の内を聞く。


前回の記事

麻友さんを目指していた。でも、なんか、ダメだった

──いろいろと悩んだ結果、自分らしさを出せるように変わっていったのはいつごろからですか?

正直、ぜんぜん覚えてないんですよね。

──2016年に髪の毛をバッサリ切ったあたりから、どんどん変わった印象があります。

あのころは本当に悩んでいた時期で、何かを変えないと、前向きな活動はつづけられないと思って。形からでもいいから、何かを変えようと思って髪を切ったんです。

──周囲からはどんな反応がありましたか?

もともと髪が長かったので、びっくりしちゃったファンの方も多くて、それで離れていってしまった方もたくさんいました。

──最大公約数的に、好きな人が多いのは、長い髪のアイドルだったと。

髪の長い私が好きだった人が多かったと思うんですけど、好かれるよりも、自分の気持ちを入れ替えることを優先して、切っちゃいました。あれだけばっさり切ると、吹っ切れてオープンになれたと思います。髪を切る前に比べて、自分を少しさらけ出せるようになったと思うんです。「みんなが求めるいい子じゃなくていい」と吹っ切れて、まじめな優等生のイメージから解き放たれた感じ。

仕事もプライベートも含めて、すべての面で変わりました。ファンの方に対しては、皆さんの望むアイドル像でいられなくなる申し訳なさを感じつつ、髪を切ることで「これが今の自分なんだよ」と提示できた。

──「皆さんの望むアイドル像」とは、非常に興味深い言葉です。ファンたちがたとえば「髪を伸ばしたままでいてほしい」と言ってくるわけではないですよね?

なんとなく、伝わってくるんです。当時、私を応援してくれていた方たちは、センターを目指して、王道、清楚でかわいいキラキラアイドルの道を極めてほしいと思ってた、と思うので。実際、私も麻友さんを目指していた。でも、なんか、ダメだったんですよね。

──本来の自分とは違ったと。期待されるイメージに、無意識に収まろうとしていたのかもしれませんね。

そうですね。でも、自分はもっと、自由に生きたほうがいいんじゃないかって、そのころからだんだん気づき始めたんだと思います。最初のうちは、清楚でお姫様みたいなアイドルになれると思ってたので、自分でも予想外だったけど。

──今ではむしろ、ボーイッシュでクール、カッコいい印象が強いと思います。

ファンの方たちにとっても、どちらかといえばファンキーなイメージに変わってきていると思います。そんな自分が好きで、今はすごく楽しいです。


悩みを明かしたことで「実は自分も」と打ち明けてくれた

AKB48岡田奈々が選んだ“人生を見せる”生き方
岡田奈々(AKB48)

──前編では、ファンの望むアイドル像に無意識に引っ張られていたという話を聞きました。髪の長さなどとは別に、応援するアイドルに対して、痩せてきれいでいてほしいと考えるファンも多いように感じます。

直接そう言われるわけではないんですが、やっぱりファンの皆さんの声も気になりますね。

──直接言われないまでも、ダイエットをすることを褒められたりすると、やっぱり細いほうがいいのかと感じる。

それはあるかもしれないですね。それ以外で大きいのは、自分とほかのメンバーを比べて、みんな細くてかわいいなあ…って自己嫌悪に陥ること。

あと、グループの先輩たちの衣装を着るときに備えて体型管理をしないといけないと考え込み過ぎてしまって。思春期は特に、体型管理の面で常に悩んでましたね。

──思春期は特にそうですが、体質によっては何をやっても痩せない人もいます。にもかかわらず、一切食べないなど、極端なダイエットをしてしまうケースも多いです。

当時の私も、それはありましたね。心身共に疲れ果ててしまって、徐々に、自分を大事にしなきゃいけないって気づいていきました。

極端な食事制限がきっかけで体調を崩したタイミングがあったんですが、それを隠しておかなきゃいけないこともつらかったです。初めて人前で言ったとき、すごくラクになりましたね。

──2016年の選抜総選挙のスピーチで、一時休養していた理由を語ったタイミングですね。

まわりの人たちから「言わないほうがいいんじゃないか」と言われたんですが、隠しつづけるのもいやだったので、嫌われるのを覚悟で言いました。

──自分ではどうしようもない、病気になってしまったことで嫌われるのはおかしい話ですが、アイドルはネガティブな言葉を口にするべきではないという空気もまだ根強かったと思います。

そうですよね。でも、悩みもすべてさらけ出して、人生をすべて見せる。そんな新しいアイドル像があってもいいんじゃないかと思って。

そのあとから、ファンの方が「実は自分も悩んでる」と打ち明けてくれることがたくさんありました。お互いに、ひとりの人として接することができるようになったのは、すごく大きな変化でした。アイドルとファンという関係を超えて、人としての支え合いができるようになった。今のやり方のほうが、自分には合っていたと感じてます。

人間なんだから、悩みも話していい

AKB48岡田奈々が選んだ“人生を見せる”生き方
岡田奈々(AKB48)

──同じく選抜総選挙のスピーチでは、ファンに向けて「オタク人生を貫いてください」と語ったことも話題になりました。ファンを「オタク」と言うことすら、ネガティブな表現と受け止められていたわけで、この数年間で、世間の許容度も変わったように感じます。

そうですね。少しずつ、アイドルも、生きやすい世の中になってきたような気がします。包み隠さずいられる世界になってきているんじゃないかと思います。

──先輩の宮崎美穂さんとの対談やドキュメンタリー番組『AKB48裏ストーリー 岡田奈々19歳、夢の代償』(CS「TBSチャンネル1」)では、「女の子のほうが好きかもしれない」と打ち明けたこともあり、『ゆうなぁもぎおんチャンネル』の動画でも恋愛観を赤裸々に語るなど、かなり自由度の高い発言をしていますよね。

そういう話って、アイドルが話していいの?って感じでタブーとされてるじゃないですか。私は、人間なんだから、そういう話もしたっていいんじゃないかと思ってます。だから、どんな人が好きっていうのも話す。特に『ゆうなぁもぎおん』の4人は恋愛トークが大好きなので、すぐにそんな話ばっかりしちゃうっていうのもありますけど(笑)。

──昔と違って、「期待されているであろう理想像」を意識しなくなったのでしょうか。

はい。もうファンの方たちも、なんでも言っちゃう私に慣れているから、何を言っても動じないんです。

──前回、本田仁美さんのインタビューでは、髪の毛の色を変えた際に、黒髪を望んだファンもいたそうですが、「誰かのためだけに私がいるわけじゃないですから。髪の色に限らず、まわりの声に左右され過ぎず、自分のやりたいことをやるのが一番」と語っていました。それに近い感覚でしょうか。

それ、すごくカッコいいですね。私にその発想はなかったです。私の場合はただ運がよくて、さらけ出したときに応援してくれた人が多かっただけ。もし嫌がる人ばっかりだったら、また自分を隠して生きようってなったと思います。

つづきはこちら

【関連】本田仁美「ネガティブだった私が、努力をつづけられた理由」自分を好きになるために必要なこと
【関連】「誰かのためだけに私がいるわけじゃない」本田仁美&小栗有以に聞く、アイドルにとっての“成長”

岡田奈々 INFORMATION

■AKB48 59th Single『元カレです』
価格:1,700円(税込)
発売日:2022年5月18日(水)

『ミュージカル「マギ」-迷走組曲-』(岡田奈々がモルジアナ役として出演)
日程:2022年6月18日(土)~6月19日(日)
会場:森ノ宮ピロティホール(大阪公演)

■『岡田奈々 10th Anniversary Concert ~Starting Over~』
岡田奈々、デビュー10周年記念のソロコンサートを開催。
日程・会場(東京):2022年7月3日(日)東京・昭和女子大学 人見記念講堂
日程・会場(神奈川):2022年7月10日(日)神奈川県民ホール 大ホール

【関連】本田仁美「ネガティブだった私が、努力をつづけられた理由」自分を好きになるために必要なこと


この記事の画像(全13枚)


関連記事

この記事が掲載されているカテゴリ



Written by

森 ユースケ

(もり・ゆーすけ)1987年生まれ。東京都出身。毎日ウルトラ怪獣のTシャツを着ているライター/編集。インドネシアの新聞社勤務、国会議員秘書、週刊誌記者を経て現職。近年は企業のオウンドメディア編集も担当。オリックス・バファローズファン。