「自分には個性がないと感じていた」AKB48岡田奈々が“自分らしさ“を見つけるまで

岡田奈々

文・編集=森 ユースケ 撮影=飯田エリカ 編集=田島太陽


人はいかにして「自分らしさ」を獲得するのか?

AKB48加入初期から期待の若手メンバーとして扱われ、ファンからの人気も獲得した岡田奈々。「渡辺麻友さんのような王道アイドルを目指していた」と語るが、次第に、周囲から期待される「まじめな優等生」というキャラクターと、自身の性格に乖離を感じ、悩むようになっていったという。

AKB48岡田奈々が“自分らしさ“を見つけるまで
岡田奈々(AKB48)

何かを変えたくて髪の毛をバッサリ切り、現在は登録者数が14万人を超えるYouTubeチャンネル『ゆうなぁもぎおんチャンネル』を始めたことで、徐々に「素の自分を出せるようになっていった」と明かす。彼女が語る言葉から、周囲から求められる理想のアイドル像と自分らしさの距離感を探るロングインタビューの第1回(全3回)。

連載「アイドルとシスターフッド」
見る人の数だけ存在する「アイドル」のイメージに翻弄され、時にエイジズム、ルッキズムの呪縛にかかりながらも、その言葉の枠に留まらない女性たちの心の内を聞く。


YouTubeを始めて気づいた「自分でも思わぬ本性」

──2020年1月に始めたYouTubeチャンネル『ゆうなぁもぎおんチャンネル』(※AKB48のメンバーの向井地美音、村山彩希、茂木忍と運営)が好評で、これらの動画がきっかけでファンが増えているそうですね。

そうなんです。『沼にハマってきいてみた』(Eテレ)で、AKB48にハマったきっかけのランキングが発表されたんですが、第1位が私たちのYouTubeチャンネルでした。昨年はありがたいことに、「根も葉もRumor」がたくさんの方に聞いていただけたのですが、それより順位が上だったのでびっくりしましたね。

オンラインお話し会や最近いただいたお手紙でわかったんですが、昔ファンだった方たちが出戻りしたパターンが多いみたいです。

──今回はアイドルにとっての「自分らしさ」というテーマでお話をお聞きします。AKB48の初期は舞台裏も赤裸々に見せていくスタイルでした。SNSやYouTubeが当たり前となった今では、自分たちが撮影・編集をするため、過去に比べて自分らしさをある程度コントロールしやすくなったと思います。その変化は感じますか?

スタッフさんが撮ってくれる舞台裏の写真や動画もよかったと思いますが、それよりも素に近い、本当の自分をお見せできている実感はあります。自分ひとりでもチャンネルを持っているんですが、どちらかというと『ゆうなぁもぎおんチャンネル』のほうが、プライベートの素を全部出してるかも。

でもそれは意図したことではなくて、むしろひとりだったら、もっと猫を被っちゃうんです。あの3人とどんどん仲よくなって、楽しく過ごすうちに、自分では思いもよらなかった本性が暴かれることもあるくらい。あ、自分ってこんな感じだったんだって。

こんなに自由でいいんだ、こんなに思ったことをなんでも言っていいんだと、日々感じています。自分らしさを出せるようになったきっかけとして、YouTubeはすごく大きいです。

──自分でも思わぬ本性とは?

みーおん(向井地美音)の誕生日ドッキリで、顔をケーキに押しつけるっていう企画をやったんですけど……。私自身、人にそんなイタズラをする日が来るとは思っていませんでした。昔の自分なら絶対にできなかったはずなのに、これが私の本性か……って(笑)。

ほかにもいろいろあるんですけど、特にドッキリ系の動画では本性が出ると思います。それを見たファンの方たちが、「こんな一面もあるんだね」「子供みたいでいいね」って言ってくれたんです。

ステージで見せるアイドルとしての姿と、YouTubeで見せる素の姿のギャップがいいって言ってもらえたのは、意外でした。

「岡田奈々=まじめな優等生」というイメージから離れて

AKB48岡田奈々が“自分らしさ“を見つけるまで
岡田奈々(AKB48)

──好意的な反応は予想外だったと。

完全に予想外でしたね。『ゆうなぁもぎおんチャンネル』での私は全然アイドルらしくないので、こんな素を出してもいいのかな?って思ってたんです。最初のうちは特に。

──岡田さんの考える「アイドルらしい」とは、どんなイメージですか?

キラキラしてかわいくて、おしとやかで、歌とダンスが素敵で華がある、THEアイドル。私ももともとはAKB48のファンだったので、昔でいえば前田敦子さんや渡辺麻友さんみたいな、アイドルの理想像……っていうイメージですかね。

だからこそ、ファンの方たちはキラキラしている姿を見たいのであって、素を見せるべきでないのかなって思ってました。

──西野未姫さんとの対談動画では「YouTubeではアイドルとしてではなく、人間として活動している」と語っていましたが、その違いはどこにあるのでしょうか。

確かに言いましたよね。え〜、どう違うのかな。ステージなら、決められた歌、ダンス、台本があるけど、YouTubeでは自分で思い浮かんだ言葉を口にして、やりたいと思ったことをやってる、という感じです。

──アイドルは、主にパフォーマンスの面で決まった演出をしっかりこなすこと、人間としては、自分の思ったことをするのが重要だというわけですね。

そうです。

──自分ひとりのチャンネルだけだったら、歌やダンスをしっかりこなす姿のみを見せていたかもしれない、と。

そうだと思います。トークをするにしても、優等生的な、アイドル的な回答しかできなかったんじゃないかな。でも『ゆうなぁもぎおん』の4人でいるときには、プライベートに近い感じになっちゃう。

──素を出せるようになったことは、結果としてよかったと思いますか。

気持ちがラクになった部分もありますね。ファンの方にとっての「岡田奈々=まじめな優等生」というイメージから離れて、むしろふざけるのが大好きで、小学生男子みたいな発言もしちゃう、自由な人ってイメージが当たり前になってきた気がする。


「自分には個性がないと感じていた」

AKB48岡田奈々が“自分らしさ“を見つけるまで
岡田奈々(AKB48)

──グループのファンにとっては、「優等生」「まじめ」というキャラクターが浸透していましたが、そのイメージが重荷になっていた部分もあるんでしょうか?

ありますね。「まじめだね」なんて言われることが多かったんですけど、その言葉のあとに「カタブツだね」ってニュアンスも入っているように感じて。言われるたびに、自分はそんな人間じゃないのにな〜って思ってました。

おかたいキャラじゃなくて、もっと仲よくしたいのに「まじめだね」って言葉で距離を置かれちゃうみたいな。

──ファンからのイメージだけでなく、メンバー同士でも距離感が難しかったと。

メンバー同士でも「この子はまじめだからさ」って言われるたびに、そんなことないのに〜って思ってました。特に、小嶋真子ちゃん、西野未姫ちゃんと私で“三銃士”って言われていたころは、ふたりが天真爛漫で無邪気な感じなので、先輩たちもヨシヨシってかわいがっていて。私はまじめなイメージがあるからか、ふたりのようにかわいがってもらうという感じではなかったので少し寂しかったのを覚えてます。

──「まじめ=ノリが悪い」みたいなイメージがついてしまった。

みたいな感じですかね。「まじめだね」って言われるたびに、おもしろみがない、個性がない、人としておもしろくない……。そんなふうに思われてるんだろうなって感じてました。

でも、みいちゃん(峯岸みなみ)だけは、私が研究生のころから「あなた変だね」って見抜いてくれて、愛でてくれました。私のアイドル人生ですごく大切な人です。

──学校や会社を含め、組織に多くの人がいるなかで、キャラクターが付与されて、存在感の大きさが変わっていくことも多いと思います。AKB48では、自己紹介のキャッチフレーズを含め、ほかのメンバーと被らないキャラクターを確立する悩みも多そうです。

私も悩みましたね……。三銃士の中ではしっかり者でまじめなキャラだったけど、もっと大きな枠でいうと、自分には個性がないと感じていて。先輩から趣味などを聞かれて答えたときに、「麻友さんみたいだね」って言われたんです。麻友さんに憧れていたからうれしかった反面、同じグループに似た人がいる時点で、埋もれちゃうってことでもある。まじめだけが取り柄ではここから上には行けないだろうと思って、どうすればいいのかすごく悩んだ時期もありました。

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岡田奈々 INFORMATION

■AKB48 59th Single『元カレです』
価格:1,700円(税込)
発売日:2022年5月18日(水)

『ミュージカル「マギ」-迷走組曲-』(岡田奈々がモルジアナ役として出演)
日程:2022年6月18日(土)~6月19日(日)
会場:森ノ宮ピロティホール(大阪公演)

■『岡田奈々 10th Anniversary Concert ~Starting Over~』
岡田奈々、デビュー10周年記念のソロコンサートを開催。
日程・会場(東京):2022年7月3日(日)東京・昭和女子大学 人見記念講堂
日程・会場(神奈川):2022年7月10日(日)神奈川県民ホール 大ホール


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森 ユースケ

(もり・ゆーすけ)1987年生まれ。東京都出身。毎日ウルトラ怪獣のTシャツを着ているライター/編集。インドネシアの新聞社勤務、国会議員秘書、週刊誌記者を経て現職。近年は企業のオウンドメディア編集も担当。オリックス・バファローズファン。