ニッポン放送・石井玄が抱くラジオへの危機感と次世代への期待「新しいものが生まれないと終わってしまう」

2021.12.27


10年後にラジオリスナーがいなくなる、という危機感

──山浦さんはラジオ業界を志望する学生として、今後に向けて不安はありますか?

山浦 いろいろ不安はあるんですけど、さっきいろいろお聞きして……。

──写真撮影のときに、オフレコでいろんな話を聞いてしまったと(笑)。

石井 事実を伝えただけだよ(笑)。でも、それでも業界をなんとか上向かせようと思って入ってこなきゃダメだと思う。その気持ちがないなら潰れちゃうから。それだったら、上向いている業界に行けばいいじゃんという話で。負けているところでも踏ん張ってやる気持ちが大事なんです。この前、映画『燃えよ剣』を観て思い出したんですけど、子供のころからめちゃくちゃ新選組が好きだったんです。ラジオ業界でも新選組みたいなテンションなんですよ(笑)。

新選組は、傾きかけた幕府を支えるために、田舎から出てきた農民出身の武士たちが決起した話ですから。幕府の旗本みたいなエリートたちは味方せずに最終的に離れていくんです。残ったのは、会津藩と新選組しかいなくて、最終決戦地の函館には土方歳三だけが残る。その光景を観たときに、「ああ、俺はこれが好きだから今もラジオを好きだって言っているんだな」と再確認できました(笑)。

石井玄と山浦暁斗

──一方で、ラジオ業界志望の人たちが増えている印象があります。以前よりもディレクターや構成作家の顔が見えるようになったからかもしれませんが。

石井 それはあるかもしれませんね。『アフタートーク』もそのために書いたところがあって。結局、下の世代がラジオを好きになってくれて、「ラジオ業界を目指します」とか、「ラジオをずっと聴きつづけます」とか、そう言ってくれる人を増やさないと。どんどん年配向けのメディアになってきていますから、そこを広げないといけないんです。

10年経ったときに聴く人がいなくなってしまう危機感はあるし、作る人もいなくなっちゃいますから。下の世代に目を向けるのは、ここ数年ですごく意識するようになりました。優秀な人が入ってくれたら僕が何もしなくてもおもしろい番組が聴けるんで、それがいいなっていう(笑)。山浦君にも作ってほしい。

レガシーメディアに必要な新陳代謝

──石井さんのツイートからスタートし、山浦さんは今日こうしてご本人と対談するところまで来ましたが、実際にお会いしてみてどうでしたか?

石井玄と山浦暁斗

山浦 こんなことが人生で起こるとはまったく思ってなかったです(笑)。

石井 僕も宮嵜(守史、JUNKプロデューサー)さんや宗岡さんに憧れて入ってきて、一緒に仕事をさせてもらってというのがあるから、その繰り返しですよね。

今でいうと、これから野上(大貴、ANNディレクター)に憧れてラジオ業界に入ってくる人も出てくるはずなんで。今、ANNのチーフディレクターをしている金子(司)は『アルコ&ピースのANN』を聴いて、ニッポン放送の番組を作りたいと思って入ってきてますし、その繰り返しでなんとかやっていってる感じはありますね。

──「会いたいです」という連絡をもらうことは、けっこうあるんですか?

石井 ありますし、ちゃんとした人には対応しています。コロナ禍なのでリモートだったりはしますけど、何人かはしゃべったことがありますね。

学生が発信していて、意志を示してきたときはできる限り協力したいと思っています。そういう行動を起こすことってなかなかできないし、僕も学生時代にはできなかったですから。そこで一歩踏み出すのって実は勇気がいるので、素晴らしいことだと思います。ただ、協力はしてあげたいですけど、忙しいときはお断りします(笑)。

石井玄

──山浦さんは、ここで石井さんに会ったことが数年後につながるかもしれないですね。

山浦 かもしれないですね……。

石井 それに『アフタートーク』を読んでいるラジオの後輩たちが増えていけば、僕にとってやりやすくなるんです。みんな僕のことを理解しているので(笑)。そうなると仕事は楽ですね。でも、そろそろ逆のカウンターみたいな人も出てきてほしい。僕らの世代とは違う方向を探す人が、そろそろ出てきてもいいかなって思います。

──かつての石井さんのような?

石井 僕も上から言われたことにすべて反発していたわけではないですけど、「そうじゃない」方向を考えてやってきたので。若い世代からもそういう人が出てきて、そろそろ全然違うロジックで作ってほしいなって見ています。ただ、そういうことをやると、だいたい上の人って認めないんです。それは自分のやり方を否定されたと思うから。

──どの業界でもそうですよね。

石井 でも、それってその上の人が作ったものがあるからこそできているだけで、否定しているわけじゃないってことがあんまり伝わらないんです。先輩たちが一生懸命やってきたからこそ我々があって、次の世代に伝える意味があると。

だから、僕は下から言われても「いいじゃん」って言えるようにしたいなって(笑)。面と向かって批判されることなんてないですけど、作っているものがおもしろければそれでいいという考え方になってほしいなと思いますね。新しいやり方をするとどうしても反発を生むので、それは大変だと思う。

山浦 はい!

石井 『アフタートーク』の解説に佐久間(宣行)さんが書いているとおり、レガシーメディアで新しいことをやろうとするとものすごい反発を受けますから、それでもやっていこうという気持ちにある人にやってほしいなって。

今、下の世代に伝えたいこと


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村上謙三久

(むらかみ・けんさく)編集者、ライター。1978年生まれ。プロレス、ラジオ関連を中心に活動。『声優ラジオの時間』『お笑いラジオの時間』(綜合図書)の編集長を務め、著書に『深夜のラジオっ子』(筑摩書房)、『声優ラジオ“愛”史 声優とラジオの50年』(辰巳出版)がある。

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