超特急・松尾太陽、ソロ活動1周年を迎えて考える次のフェーズ

2021.9.8


無理やり終わらせなくてもいいような気がする

松尾太陽
松尾太陽(まつお・たかし)1996年9月23日生まれ。2012年6月に超特急のボーカルとしてCDデビュー、2020年9月2日にミニアルバム『うたうたい』でソロデビュー。

——『ものがたり』は、いつごろから動き始めたんですか。

松尾 2021年に入って間もないくらいに、すでに話は上がっていました。そこから、どういうアーティストさんをお迎えしようかと長い期間で試行錯誤していった感じです。

——レコーディングは、いつごろ終えられたんですか。

松尾 今日(7月末日)で終わります(笑)。いつも制作と同時進行なんですよ。レコーディングから時間を置いてリリースする人もいるだろうけど、僕はできる限り“今”の自分を作品に詰め込みたい。それに、せっかく『ものがたり』というタイトルだから、配信シングルからの流れをつなげたままアルバムにバトンタッチしたかったんです。

——曲順には、どのような意図があるんですか。

松尾 『ものがたり』は酸いも甘いもある、紆余曲折な人生のイメージ。僕も毎日のようにいろんな仕事をやらせてもらって、静かに動いているときもあれば、めちゃくちゃ激しく歌って踊っているときもある。人生ってジャンルもテンポもバラバラだから、そういう道のりを曲順で表せたらいいなって。

——あえて、凸凹感が残る曲順にしたと。

松尾 音的にハマっていることや流れがきれいなこともすごく大事だと思うんですけど、だからこそ、わざとぐちゃってしたい気持ちがあって。枠にはまらないことを大事にしているので、アルバムの収録曲も各アーティストさんの持つ世界観を尊重した上で採用させていただきました。

——アルバムのキーポイントになる曲を、強いて挙げるとしたらどれでしょうか。

松尾 最後の「起承転々」ですかね。本来だと“起承転結”で話が結ばれるんですけど、「起承転々」なので、まだ終わりじゃないんです。いろいろ迷ったり悩んだり、ずっと転がっている状態というか。みんな物事に決着をつけたがるけど、僕は無理やり終わらせなくてもいいような気がする。たとえ向いていなかったとしても、好きだから終わりない道を歩んでいきたいという願いも込めて“起承転々”だから。

——「起承転々」を聴いたとき、松尾さんが作詞・作曲を担当されていると思ったんですよ。それくらい、松尾さんの言葉に聞こえたというか。

松尾 実はレコーディングをする前に、楽曲を提供してくださったアーティストさん一人ひとりに、お話を聞かせてもらっているんです。歌詞の伝え方や込められた想い、大事にしてほしい世界観、どういった意図でこういう曲になったのか。その成果が出たのかもしれないですね。

「起承転々」は作曲が尊敬している山口寛雄さん、作詞がコピーライターの阿部広太郎さんなんですけど、阿部さんが音楽ディレクターに送ってくださったメッセージが本当にすごくって。『ものがたり』とはなんなのか、松尾太陽とはどういう人間なのかとか、僕のことをすごく調べて力説してくださったんですよ。とてもグッとくるものがありましたし、いろいろな方がいろいろな角度から見てくださる目線が、自分にとって大事なんだと改めて気づかされました。

“労をねぎらえ”の大切さ

——『ものがたり』を通して、ご自身で松尾太陽を見直した感じがありそうですね。

松尾 ずっと自分の歌声をコンプレックスに感じていたんですけど、今は個性として受け止められるようになりました。クリエイターの方々やボイストレーナーの先生が、僕の個性を最大限に引き出してくれているので。今後は僕らしさを最大限に活かした歌い方を披露できたらいいなって思っています。

——ボーカリストとして、伸び盛りですね。

松尾 ボーカリストとしてはもちろん、人としても少しずつ成長できているんじゃないかな。以前はもっとこうしないとああしないとって自分のことに必死で、まわりが何も見えていなかった。自分のことだけしか考えられなかったんです。それが次第に、まわりの人に対して感謝の気持ちを持てるようになりました。ボイストレーナーの先生にも、「労をねぎらえ」ってよく言われるんですよ。

——“労をねぎらえ”ですか。

松尾 どの人に対しても、まずは「今日来てくれてありがとう」という気持ちを持つようにと強く教えてくださるんです。暑かったり寒かったり、時には台風や雨のなか、足を運んでくださる方もいるじゃないですか。一番大変なのは、僕じゃなくてお客さんやまわりの人たち。ボーカリストとして、先生と向き合うことによって、見落としていた大事なことに気づいた部分も多いように感じます。いろいろな方と一緒に制作をしたり考えさせてもらったりして、「ありがたいな……」ってものにめちゃくちゃ気づかされた2021年でした。まだ、終わってないですけど(笑)。

——東名阪Zeppツアー(※)も控えていますしね。

※※9月13日追記:新型コロナウイルス感染症の情勢を鑑み、予定していたツアーの全公演は中止となりました

松尾 今までも単発でライブをさせていただくことはありましたが、松尾太陽名義でのツアーは初。それに、会場がZeppですからね。アーティストがひとつの目標として掲げるようなステージに立たせてもらえるのは、本当にありがたいことなので、松尾太陽の功績にとして残せるようなライブにしたいと思っています。そして、何より来てくれたみんなとコミュニケーションを取って、「今日は来てくれてありがとう!」と第一に伝えたいですね。

——最後に、今気に入っている曲と本を教えていただけますか。

松尾 この前「いいな」って思ったのは、LUCKY TAPESさんの「揺れるドレス」。僕の好きな懐かしいテイストも入っていながら、いまの流行も掴んでいらっしゃる感じがして、いつかご一緒したいなと思いました。最近はBRADIOさんも、僕の中で再燃していて。昔から聴いていたんですけど、自分のテイストと交わったら存在感のある曲を生み出せそうだな……って考えています。

本に関しては、勉強しているのもあって、英語のマンガや絵本を読むようにしています。なんとなく絵で内容がわかるし、小説とかに比べると簡潔に書いてくれているので、わかりやすいんですよね。まずはマンガから始めて、少しでも何か得られたらいいなと思っています。


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ライター_坂井彩花

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坂井彩花

(さかい・あやか)1991年、群馬県生まれ。ライター、キュレーター。ライブハウス、楽器屋販売員を経験の後、2017年にフリーランスとして独立。『Rolling Stone Japan Web』『Billboard JAPAN』『Real Sound』などで記事を執筆。エンタテインメントとカルチャーが..