「なぜこんなに若い方がたくさん亡くなっている?」日本人僧侶が明かす“技能実習生の実態”

2021.6.30

文=太田明日香 編集=森田真規


ベトナム人技能実習生の問題を扱った映画『海辺の彼女たち』が話題となっている。緊急事態宣言下の5月1日に初日を迎えた東京・ポレポレ東中野では、感染対策を講じながら上映を始め、初日から16日間連日チケットが完売し、好評のため7月30日までのロングラン上映が決定している。

映画は技能実習生として来日した3人のベトナム人女性のアン、ニュー、フォンが暗闇に紛れて、実習先の職場から逃げ出すところから始まる。映像は、カメラの揺れやクローズアップが多用され、臨場感にあふれており、ドキュメンタリーのようだ。実習先の職場から逃げ出した3人はベトナム人ブローカーの手配により電車や船を乗り継いで、ある雪深い漁港の町に辿り着き、そこで新たな仕事に就く。

そもそもテーマとなっている技能実習制度とはなんなのだろうか。どうして3人は帰国せずブローカーを頼って失踪し、新しい仕事を探してまで日本に居ようとするのだろうか。

今回は映画にも協力したというNPO法人日越ともいき支援会代表でベトナム人実習生や留学生の支援をしている吉水慈豊氏に、技能実習制度の実態と失踪した実習生の姿から見える制度のあり方について話を聞いた。

※7月8日、初出時から本文、写真のキャプションなどの一部を修正・変更しております。


技能実習生のリアルな実情が描かれた『海辺の彼女たち』

──映画『海辺の彼女たち』にはどのような経緯で協力することになったんでしょうか。

吉水 映画監督の藤元明緒さんからお話があり、協力することになりました。何度かベトナム人技能実習生の実態についてお話をして、それが脚本にも取り入れられています。

──映画をご覧になられて、どう思われましたか。

吉水 映画では技能実習生が安い労働力として日本にやって来て、失踪に至るまでの過程がリアルに描かれていたと思います。けれど、失踪したからといって彼女たちにハッピーなことが待っているわけではありません。新しい職場で用意された家も日本にまだこんな場所があるのかというような汚いところで、その描写もとてもリアルでした。映画にはそのような技能実習制度がどうなっているのか、という問いかけがあったと思います。

映画『海辺の彼女たち』 [本予告] Feature Film “Along the Sea”

きっかけは若年層ばかりだったベトナム人のお葬式

『海辺の彼女たち』でベトナム人女性の3人が日本にやって来るきっかけとなった技能実習制度は、発展途上地域などの経済発展のために日本で技術を身につけ、国に帰って日本の技術を移転するための「人づくり」制度として、1993年に創設された。2020年末で37万8200人いる実習生のうち、ベトナム人実習生が20万8879人で50%以上を占めている(出入国在留管理庁「【R2.12末在留】統計資料」)。

──吉水さんはお寺のお坊さんでもあると伺いましたが、どうしてともいき支援会の活動を始められたんですか。

吉水 ともいき会の活動は日本で亡くなったベトナム人のお葬式から始まりました。日本人のお葬式は高齢の80代で大往生みたいな方が多いのに、ベトナム人のお葬式は自殺や事故によって亡くなった20代や30代の若い方があまりにも多く、どうしてこんな若い方がたくさん亡くなっているんだろう、現場でいったいどんなことが起こっているのだろうと疑問を持って、ともいき支援会の活動を始めるようになりました。

──吉水さんは技能実習制度のどんな点が問題だと思いますか。

吉水 技能実習制度は、現状では実習生に足かせをつけて放り投げるような制度になってしまっています。実習生は借金を返さないことには国にも帰れません。このような状況は問題なので、まずは借金をしなくても来られるようにすることが必要ではないでしょうか。

映画『海辺の彼女たち』では地方都市の漁港で働くベトナム人女性3人の姿が描かれた

連日10件以上の相談がフェイスブックに届く

吉水氏の言うように、技能実習生の失踪が起こる理由として挙げられるのが借金だ。技能実習生は送り出し機関と呼ばれるベトナムの研修機関に研修費や渡航費などの名目で平均して80万円ほど払わなければならず、借金を背負って日本にやって来る。

もう1点、3年(在留資格の変更によって延長も可能)の実習期間中は実習先が変えられないことも失踪の原因になるという。そのため実習先でパワハラや暴力、賃金未払いといった問題があった場合、失踪が起こりやすくなるのだ。

──映画の3人の失踪の理由は長時間労働で休みもなく、賃金も未払いということでしたよね。映画の3人はブローカーを頼って失踪していましたが、吉水さんに相談する人たちはどのようにともいき支援会のことを知るのでしょうか。

吉水 ベトナム人はフェイスブックを利用する人が多くて、フェイスブックで直接連絡してくる人が多いです。ベトナム人コミュニティでは私の名前は「連絡すれば助けてくれる人」と口コミで広まっているので、フェイスブックのメッセンジャーで毎日10件以上の連絡があります。

NPO法人日越ともいき支援会代表・吉水慈豊氏

──連絡を受けたら、そのあとはどのようなことをするのでしょうか。

吉水 連絡が来たらお寺に来てもらったり、お金を持ってない場合はこちらが迎えに行ったりします。全国から連絡があるので遠隔でやりとりすることもあります。次の仕事のアテをつけてから逃げてくる人のほうが多いですが、何も持たないでお金もほとんどないような状態で逃げて来る人もいて、その場合は食べ物や住居を確保して休んでもらって、必要な場合は多少の生活費も渡します。

しばらくして落ち着いてきたら聞き取りをして、関連団体に報告しつつ、新しい職場とのマッチング支援などを行います。日本語ができない人には日本語を教えたり、技能試験を受けるためのサポートをしたり、引っ越しの手伝いなどをすることもあります。

映画『海辺の彼女たち』メイキング写真

──技能実習生の受け入れ企業が技能実習生を助けることはないのでしょうか。

吉水 受け入れ企業は実習生のことを、お金を稼ぎ出す単なる商品のように見ているので、家や職を失った人がいても助けようとしません。また、弱い立場の人につけ込んで、職を紹介するといって手数料を取って騙すようなベトナム人のブローカーもいて、さらに借金まみれになってしまうような場合もあります。

本人の自助努力だけを求めていては、お金がなくなって万引きや強盗などを犯したり、賭博や覚醒剤といった犯罪に巻き込まれるリスクが高くなります。だから保護するところが必要なんです。また保護するだけでなく、次の職場で働けるようにスキルアップを手助けすることも必要になってきます。

見直しが必要な技能実習制度


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太田明日香

(おおた・あすか)ライター、編集者。兵庫県淡路島出身。著書に『愛と家事』(創元社)。

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