人気お笑いライブの主催者がコロナ禍で見出した「オンライン」の価値と「オフライン」の共存

2021.6.27

お笑いにおけるオンラインとオフラインの共存

——2020年からライブ業界は新型コロナの問題に直面していると思うんですが、それにはどのように対処してきたんでしょうか?

片山 昨年の3月に小劇場で1週間の連続興行をやっていたんですけど、ちょうどその時期にコロナのせいでお客さんを入れてはいけないということになって。早い段階で無観客の有料配信に踏み切って、なんとか乗り切ったりもしていました。正直なところ、配信のおかげで経営的なところはなんとかなっているというのはあるんですよね。

でも、それの代償として劇場やリアルでのエンタテインメントというものがちょっと希薄になっているような感じもします。『さらば青春のBAR』というZoomを使ったオンライントーク企画があるのですが、それが発展して今度、五反田に実際にお店を出すんです。やっぱり最終的にはそういうリアルなところと結びつけて、人との出会いの場を作っていこうかなと。

そういうオンラインとオフラインの共存というのが大事なんだというのも、コロナが教えてくれたことかなと思います。人との出会いって楽しいよね、人としゃべりたいよね、ということを改めて気づかせてくれたような気はしますね。

片山勝三

——配信を導入するかどうかは、ライブ業界でもそれぞれ反応が分かれたところだと思うんですが、片山さんの会社ではそれを始めるのがけっこう早かったんですね。

片山 早かったと思いますね。というのも、もともとコロナとは関係なく、配信はやろうと思っていたんですよ。東京でライブをやっていても、地方の人はなかなか観に来られないという声もあって、なんとかそういう人にも届けられないかな、という思いはあったので、配信に踏み切る準備はしていたんです。

たまたまそのあとで新型コロナが来たので、ちょっと計画が早くなっただけなんです。僕は「劇場に来てほしい」ってずっと言っていますけど、そのためには東京だけじゃなくて、もっと全国いろいろなところにこちらからも伺って、生のお笑いを積極的に届けていかなくちゃいけないなとは思っています。

——お笑いライブは東京と大阪が中心なので、地方の方は観る機会自体がほとんどないですよね。

片山 なかなかないと思います。僕は芸人が団体になって地方に行くような営業の現場に同行したこともあるんですけど、そういうところで客席に行くのがすごく好きで。老若男女が集まっていて、家族連れの方もいらっしゃって。おそらく、かなり前から今日という日を楽しみにしていると思うんですよ。それを考えると、僕ら主催者が手を抜くことはできないですし、芸人にも手を抜いてほしくない。そこは常に意識しています。

——たしかに、コロナ禍によって人と直接会うことの価値が高まっているというのはありますよね。

片山 そうですね。僕は昔、吉本興業から内定をもらったあと、心斎橋筋2丁目劇場(大阪・心斎橋にあった吉本興業の劇場)に行ったことがあるんですよ。そこで、ぴのっきおさんのネタを観て、もうひっくり返るくらい、これは笑い過ぎて演者さんに迷惑かけるわ、というくらい笑ったんですよ。そのときにやっぱり、生の笑いってすごいな、次元が違うな、と思いました。きっとお客さんはこういう感じなんだろうな、と今でも思い返すときがあります。

片山勝三

——コロナ禍もつづいていて、ライブ業界は大変なことも多いと思いますが、今後の活動としてはどのようなことを考えていますか?

片山 ちょっと質問の答えとして合っているのかわからないですけど、おもしろいけど社会的に不器用な人はたくさんいると思うんですね。そういう人たちが集まれるような場所として劇場とかライブを用意することができたらな、と。

単におもしろい企画をやりたいということだけじゃなくて、寄り添える場所を作っていきたい。それが自分の残された人生の時間の使い方として最優先にしなくちゃいけないことなんだろうな、とは思っています。自分のやりたいことを貫き通すのではなく、いかに場所を用意するのかということが、僕がプロデューサーとして取り組む大事なことなのかなという気はしています。

——それは、そういう芸人の居場所を作りたいということですよね。

片山 そうです。僕、最近思うんですが、もちろんお笑いは好きなんですけど、それだけではなく「芸人」が好きなんだろうな、って。もちろん笑かしてくれてありがたいんですけど、やっぱり芸人という生き物が、その生き方がすごく好きなんですよね。だからそこに寄り添いたいです。

片山勝三

——会社として今後の目標はありますか?

片山 大きくはふたつあって。ひとつは、やっぱり劇場が欲しいです。世代問わず、いろいろな芸人に立ってもらえるような、若手の方にとっても精進の場となるような劇場は欲しいです。

あとは、日本全国に生の笑いを定期的に届けるようなことができたらな、というのはあります。自分の劇場から生まれた企画や出会った人がいて、それを地方でいろいろ展開できたらすごくいいんだろうなとは思っていて、そこに向けていろいろがんばっているところです。

本記事の画像ギャラリーでは、スラッシュパイルによる取り組み「劇場にいつ行こう。」の全ポスタービジュアルを公開!

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