スラッシュパイル・片山勝三は、なぜ「劇場へ行く」ことにこだわるのか?「配信全盛期」でも変わらない劇場の魅力

2021.6.26
スラッシュパイル片山

文=ラリー遠田 編集=鈴木 梢 写真=長野竜成


2020年のコロナ禍以降、お笑いの劇場公演、ライブは軒並み開催自粛となった。徐々に無観客でのライブ配信など、劇場へ足を運ばずともお笑いを楽しめる機会が生まれたが、同時に「劇場でライブを観る」ということを、どれだけの方が意識するようになったのだろうか?

それぞれのタイミングで「また、なんとかお笑いライブに足を運んでもらいたい」という想いから、「劇場にいつ行こう。」という取り組みが始まった。劇場での芸人たちを撮影した広告が、下北沢と三軒茶屋にポスターやフリーペーパーといった形で公開されている。広告に添えられているのは、芸人たちにとって劇場とはなんなのか、直筆で答えたメッセージ。

取り組みを始めたのは、数々の人気お笑いライブを仕かけつづけるスラッシュパイルの代表・片山勝三。吉本興業在籍時には今田耕司や極楽とんぼ、南海キャンディーズなどのマネージャーを務め、数々のお笑い芸人と共に業界を見てきた彼が今、「生のお笑い」にこだわるのはなぜなのか?


「配信で観る」と「劇場で観る」に生じる違い

——今回の「劇場にいつ行こう。」の取り組みを始めようと思ったきっかけは?

片山勝三(以下、片山) 新型コロナの問題が起こってから、いろいろな規制があるなかでライブを行ってきたんですけど、劇場に来てくださるお客さんの反応が鈍くなっているような気がしたんですね。演劇や音楽のライブをやっている方々も同じことを言っていました。

もちろんコロナの影響が大きいのでしょうが、ひょっとしたらそれは「配信で観ればいいや」という気持ちがどこかにあるからなのかもしれない、と思ったんです。配信をやる前はチケットを取れなかったら絶対観られなかったわけですから、チケット販売開始の瞬間を迎える緊張感もあったんでしょうけど、今は「チケットが取れなくても配信がある」ということで、劇場に行くモチベーションが下がってしまったのかな、という感じがしていたんですよね。

もちろん、配信でライブを楽しんでいただけるのもそれはそれでありがたいですし、遠方にお住まいの方やスケジュールが合わなかった方にとってはすごく便利なことなんでしょうけど、やっぱり配信で観るのと劇場やホールでライブを観るのは全然違うんです。そこをもう一回きちんと伝えていきたいな、という思いがあって、ライブの魅力を伝えるために呼びかけてみたんです。

——片山さんが主催するライブはすべて配信もやっているんですか?

片山 配信はしていないものもあります。そこはいろいろ試行錯誤をしていまして、生配信もして、アーカイブも無制限で発売するという場合もあるし、内容によっては配信も枚数限定発売でやることもあります。また、生配信はしないけど、編集したものを後日アーカイブで出す、という場合もありますね。今はいろいろな形を試しているところです。

——ライブによって変えているということですね。

片山 そうですね、形は変えています。でもやっぱり、劇場で観るということを中心に考えたいなとは思っていて。今は配信でも「1万枚超えました」とか、そういうことがあるじゃないですか。そうすると、どんどん配信を意識するようになったりとかもすると思うんですが、僕としてはまずは劇場ありきで考えていて。あくまでも配信はそこからの派生という感じですね。

——今では現場にお客さんがいるお笑いライブでも配信を行うことが増えていますが、配信があるかどうかで出演する芸人側の意識に変化はあると思いますか?

片山 結局お金を払っているお客様しか観れないので、最初はそんなに変わらないのかなと思っていたんですけど、やっぱり配信だと言葉を選んでいるんですよね。どこか息苦しそうなんです。

あとあと映像が残ってしまうというのがあるからだと思うんですけど。その場だけで完結して情報を共有するというのは、同じ時間と空間で一緒に過ごしたからこそできることなのかなと思います。

片山勝三

——配信に関しても、リアルタイムで生配信をする場合と、いったん収録してまずいところは編集で切ってから配信する場合がありますよね。それによって芸人のパフォーマンスにも違いは出てくるんでしょうか?

片山 そこが難しいところで。いったん収録して、それを編集して後日アーカイブで販売する方法は、芸人寄りのやり方だと思うんですね。お客さんってやっぱりリアルタイムで観たいというのがあるから、生配信よりは反応が薄くなる気はするんですよね。それはあくまでも今のところの僕の感覚ですけどね。やっぱりリアルタイムで観られるかどうかというのは、お客さんにとっては大きなポイントのひとつとしてはあるのかなと思っています。

劇場は「同じ時間と空間を共有する体験」を買いに行く場所

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ラリー遠田

(らりー・とおだ)1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わ..

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