四千頭身・石橋遼大、コンプレックスだった<普通>を武器にする方法「100点にも憧れるけど」

2021.2.26
四千頭身・石橋遼大

文=山本大樹 撮影=青山裕企
編集=田島太陽


デビュー1年目、19歳で『新しい波24』(フジテレビ)にレギュラー出演。ここから、四千頭身のバラエティ番組での戦いが始まった。芸能界に並みいる天才たちのスキルやトークを前に、養成所を卒業したばかりの彼らはほとんど爪あとを残せずに収録を終えることもあったという。

特に石橋は、「しゃべるのが苦手」「キャラがない」という芸人として致命的な欠点と向き合うこととなる。悪戦苦闘の末に彼が見つけた、コンプレックスだった「普通」を武器に変える戦い方とは。ロングインタビューの後編。


バラエティ1年目は苦労の連続

──どの番組に出ても一番若手、という立場は本当に大変だと思います。苦労することもあったんじゃないでしょうか。

本当に、トークは苦労しました。今もですけど、僕は“しゃべらないキャラ”っていうよりは本当に“しゃべれない”んですよ。『新しい波24』に出ていたころって事務所に所属して1年目で、19歳とかなんで。しゃべれるようなエピソードも何もなくて。

一緒に出ていた同期のフースーヤとかは、飛び道具になるギャグがあったんですけど、僕らってそういうのもないですし。毎回なんとかひねり出していきましたけど……。あのときは厳しかったですね、本当に雰囲気で笑ってもらってるというか、まわりの芸人とか先輩とかにイジってもらってるっていう感覚でした。

今となっては少しずつほかの芸人さんとの関係性もできてきて、なんとなく話せるようにはなりましたけど、当時はキツかったですね。

──「笑ってもらう」と「笑わせる」って、観ている視聴者からするとそんなに違いがわからないこともありますが、芸人さんとしてはやはり「笑わせること」にこだわりがあるのでしょうか。

笑ってもらうんじゃなくて笑わせたい、っていう気持ちは常にありました。3人共平場のトークをなんとかしようっていうのはそれぞれ意識していたと思いますし。僕は一番できなかったですけど……。

まわりの芸人とか観てても「なんであんなに言葉がポンポン出てくるんだろう」って。みんなエグいですよね。最近だと『霜降りミキXIT』とかも観てますけど、すごいですよね、あの3組。やっぱ頭の回転早いなあって思います。

石橋遼大(いしばし・りょうだい)1996年9月13日生まれ。東京都出身

──トリオとして苦しい時期もありましたか?

トークとは別に、小さいズレというか、衝突みたいなのはやっぱり何回かありましたね。僕はこれをやりたい、都築はこれをやりたい、後藤はこれをやりたい……みたいな感じでちょっとしたズレが。けっこう夜中まで居酒屋で、3人で話し合ったこともありました。でも、3人とも笑うツボが一緒なんで、それでずっと仲はいいって感じですね。

3人の個性を活かした戦い方

──そういう試行錯誤を続けて、どのようにバラエティでの戦い方を見つけていったのでしょうか?

みんなキャラも違いますし、お互いの得意なところ、苦手なところを補えて、うまいことなったのかなとは思います。都築はドッキリのあとのリアクションとか返しのひと言がめちゃくちゃ上手で、テレビバラエティに一番向いてるというか、本当にすごいと思います。

(後藤)拓実もちょっと小生意気な感じとか、先輩に噛みついていく感じとかおもしろいですし、現場も盛り上がりますよね。僕は僕でなんとか、最近は千鳥さんとか霜降り明星さんに「変なヤツ」みたいにイジってもらえることも増えてきて。

それぞれ違うキャラクターを見つけられたんで、3人がそろったときに強くなれればいいなって。3人のキャラが違うからバランスがいい、って言ってもらえることもあるので、そこらへんが僕らの強みなのかなと思います。

──確かに、今の四千頭身さんは誰が前に出てもおもしろいですし、それぞれのキャラクターも世間に知られてきましたよね。

世間の目というか、テレビに出始めたころは「なんだこいつら」っていうのでおもしろがってもらえたんですけど、ここ1、2年はアンチみたいな人たちも増えてきて。

そのぶん、知ってもらえるようになったっていうのは大きいですけど、みんなが認めざるを得ないくらいおもしろいトリオになりたいですよね。3人で出たら誰かひとりでも爪あとを残して、「四千頭身、おもしろかったな」って印象づけられればうれしいです。

──トリオでやってみたい番組とか、目標はありますか?

ずっと思ってるのは、3人のトーク番組をやりたいなって。『さまぁ~ず×さまぁ~ず』みたいな感じも憧れますし。3人だけでしゃべる番組はいつかやりたいですね。


「普通」だからこそなんでもできる

──昔からしゃべるのは得意なほうではなかったんですか?

そうですね、会話するのは好きなんですけど、今までの人生でもずっと、人としゃべるときは「聞く側」だったんです。相づちを打つばっかり。たまに「こんなにしゃべらない芸人いないよ」ってイジられるんで、それはそれでありがたいですけど……。

だから、今は土田晃之さんみたいに、振られたらちゃんとオトすし、しゃべったらおもしろい、みたいな人を目標にしてます。ひとりのトークライブをつづけたり、ピンでラジオをやるとかなんでもいいんですけど、「しゃべったらおもしろい人」になりたい、というかならなきゃっていう感じです。

──具体的に対策や訓練もしているんですか?

MCやまわりの芸人に振ってもらったときにオチを作れたらな、とは思いますけど、最近はやっぱり自分からトークに入っていかなきゃって思いますね。声が通りにくいんですよ、僕。後藤は声が小さくても、しゃべり始めるとまわりがちゃんと聞こうとして静かになりますし、ひと言で刺すのがうまい。相方ですけど、そういうところを僕も学んでいかなきゃと思ってます。

──ちょっと失礼かもしれませんが、てっきり「しゃべらないキャラ」として達観しているのかと思っていました。

いや、けっこう焦ってますよ(笑)。現場の雰囲気とか話題に合わせて、ちゃんと頭の中ではコメントも準備してるんです。でも、先にほかの芸人さんに言われちゃったりして……そういうときの悔しさったらないですよ。「今の、いけたなあ」って。そういうことの繰り返しですね。

──なんだか親近感が湧いてきます。

本当に、普通の人間なんですよ。トークだけじゃなくて、何かアイデアを出さなきゃっていうときも、後藤とか都築みたいにバンバン出てこないし。でも、最近「普通の人間はなんでもできるぞ」ってスタッフさんに言ってもらって、ちょっと救われましたね。

普通だからコントだったら悪人にもなれるし、いい人にもなれる。キャラがないからできることもあるぞって言われて。それはうれしかったです。

急に変わるのは無理だけど、最終的に上がっていければ勝ち


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山本大樹

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山本大樹

(やまもと・だいき)編集・ライター。1991年生まれ、埼玉県出身。明治大学大学院にて人文学修士(映像批評)。編集プロダクション勤務を経て、2019年に独立。現在『クイック・ジャパン』外部編集・ライターのほか、『BRUTUS』、『オードリーとオールナイトニッポン』シリーズ、『三四郎のオールナイトニッポ..

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