寺嶋由芙が変えたいこと。アイドルを<仕事>にするために「“変だな”と思うことを我慢したくない」

2021.1.25
寺嶋由芙ロングインタビュー|アイドルを<仕事>にするために

文=森 ユースケ 撮影=石垣星児
編集=田島太陽


「古き良き時代から来ました。まじめなアイドル、まじめにアイドル」。

自ら決めたこのキャッチフレーズでアイドル活動をしている寺嶋由芙。2021年でアイドル活動10年が経ち、自身も今年の7月で、30歳になる。

氣志團やNUMBER GIRLなどを見出した名プロデューサー・加茂啓太郎とタッグを組んで名曲を生みつづけているだけでなく、カルチャー評論に定評のあるRHYMESTER宇多丸のディスクレビューでも常に絶賛されるなど、業界内部からの評価も高い存在だ。

ソロアイドルとして随一の人気と実績を誇りながら、2020年にはアイドル業界での労働問題について『ABEMA Prime』への出演やコラムの執筆などで提言も行ってきた。

「アイドル」を「仕事」にするために、そして「好きなこと」をつづけるために。彼女の決意と思いをインタビューで語ってもらった。

オーディションの連敗と“年齢制限”

寺嶋由芙は1991年、千葉県で生まれた。幼少期からモーニング娘。に憧れ、「自分はいつか必ずメンバーの一員になれる」と信じて疑わない少女だった。

「10歳のとき、ハロー!プロジェクトのオーディションを初めて受けました。幕張メッセだったかな。何万人もが全員面接をする中のひとつの会場だったと思うんですけど、誰よりも自分が一番モー娘。が好きだから絶対に通ると思っていたし、『これが私のアイドル人生の始まりだ』くらいの感覚で。受かったあとのことばかり考えていたのに、1次審査で落ちちゃいました」

小さいころは誰もが無限の可能性を胸に、将来を夢に見る。そして、いつしか叶わぬものと決め、“現実“と呼ばれる何かに目を向けていく。それでも彼女は諦めずに挑戦をつづけたが、高校3年生の春、年齢制限によって受けられるオーディションが限られていくことに気づく。

「それで、進学を考え始めました。もともと手抜きができない性格で、全教科のテストをがんばっちゃうタイプだったんです。みんなが適当にやりがちな、保健体育や家庭科のペーパーテストも全力。たまたま私が受験する年から、早稲田大学に指定校推薦枠ができて、受けたら運よく通ったんです」

早稲田に進学すると、周囲の友人たちがインターネットを使い、趣味の活動をしている姿を見かけた。それをヒントに、芸能事務所に所属する“従来の道”ではなく、個人で道を切り開く決断をする。

「大学で出会った友人が、ニコニコ動画でゲーム実況をやっていたんです。視聴者数がすごく多いわけではなかったけど、インターネットを通して好きなことを発信したり、新しい人と出会ったりしていた。ネットなら、自分の好きなことをできると思いました。そこから自分で探していろんなライブに出るようになりました」

“自分らしい活動”を模索した先に

当時出演していたイベントは、ステージに立つアイドルよりも少ない観客しかいなかった。それでも、場数をこなすうちに多くを学び取っていく。そのうちのひとつが、「自分に合った、等身大の活動をする」ということだった。

「新大久保のライブハウスで勝ち抜き戦のイベントがあって、優勝するとCDが出せる企画でした。いつも負けていたけど、ある日My Little Loverの曲を歌ってみたら初めて勝てたんです。それまでは『みんなが歌っているから』『わかりやすくて盛り上がるから』という理由で私もアニソンを歌っていたけど、本当に好きな曲を選んだらうまくいった。やっぱり『自分に合っていることは何か』を考えて、それに沿った等身大の表現をしないとダメなんだって気づきました

この経験から、オリジナル曲を作るためにネットで作曲家を募集。現在の活動につながる道を進み始める。

朝はアルバイト、昼は大学で授業、夜はアイドル。自分らしい活動を模索していると、思わぬ展開が待っていた。

「年齢制限で引っかかるアイドルは諦めて、シンガーとしてオーディションを受けたこともあったんです。そのうちのひとつの事務所で『メンバーが足りないのでやってみませんか』とグループに誘われ、思いがけず、諦めかけていたアイドルになれたんです」

当時はまだ無名だったが、徐々にファンの数を増やし、ライブ会場も大きくなっていく。観客の頭よりも高いステージに初めて立った経験は、長年アイドルに憧れていた寺嶋にとって格別だった。

「スカスカの客席を見るのが当たり前だったので、満員の会場を見ると、観客のみなさんが楽しんでくれているのが伝わってきてすごくうれしかったですね。グループに加入したことだけでYahoo!ニュースに載ったりして、自分が思い描くアイドル像に少し近づいたぞ、と思いました」

医療従事者のように、生活に必須の職業ではないけれど


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