「今日帰ったらラジオ聴くし」と思ったら凹むこともない
――中年リスナーとして不安に思うのは、10代だとパーソナリティのたとえ話が理解できないこともありますよね?
奥森 知らないことを知るのが好きなんで、むしろそれが楽しいです。それこそ昭和の話とか、自分が生まれる前のことにも興味がありますし。たとえば、『東京ポッド許可局』だと当たり前のように『北の国から』の話になるんですね。番組内では知ってて当たり前みたいな雰囲気なので、知らないほうが悪いのかなとも思うんですけど、私は存在は知っていましたけど映像を観たことがなくて……。
――連続ドラマとして最初に放送されたのは80年代初頭ですから、奥森さんは知らなくて当然ですよ。
奥森 でも、芸人さんがたとえに使うから、その話を何度も聴いていくうちに、ちょっとずつ断片的に情報が入ってくるじゃないですか。
――実際に観ていなくても、脳内で自分だけの『北の国から』が形成されていきますよね。
奥森 そうなんです。いろんな世代のパーソナリティの話を聴いていると、「そう言えば、この話を別のラジオで誰かがしてたな」って、ちょっとずつピースが埋まっていく感じになるんです。
――今だったらネットで簡単に調べられるし、映像も観れてしまうぶん、そういう楽しみ方は贅沢かもしれないですね。
奥森 ラジオきっかけで興味を持ったことについて、自分で調べるのも楽しいし、あえて調べないでおくのも楽しくて。
――コラムで「大切なことはラジオが教えてくれた。大切ではないこともラジオは教えてくれた」「ラジオの存在に何度も助けられてきた」と書かれていましたが、具体的に印象に残っている出来事はありますか?
奥森 具体的な出来事というよりも、日常に溶け込んでいる感じなんです。だから、常に助けられていて。まず、大切じゃないことを知るのが圧倒的に多いなって(笑)。あとはネタコーナーって、言い方は悪いですけど、無駄の極みじゃないですか。それが楽しくて、最高なんです。クスッて笑わされちゃうとき、「今が一番幸せだなあ」って思いますね。
そういう瞬間って、ラジオ以外ではあまりない。「今日はあのラジオがあるな」っていつも考えているから、私は凹むこともほとんどないんです。「今日帰ったらラジオ聴くし。なんならここからの帰り道にすぐラジオを聴くし」みたいな(笑)。
――ラジオは常に一緒にいてくれると。
奥森 そうなんです。それに、ラジオって変わらないでいてくれるのがいいところだなって思っています。このコロナ禍でも、ラジオはわりと平常運転だった。不変でいつも一緒にいてくれる。先週分を聴いていなくてもすっと入っていける、それがラジオのいいところかなって思います。
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