VTuberとはただの言葉だ。音楽ユニット「MonsterZ MATE」は「エンタメ」という区画で戦っている

2020.7.19

VTuberとはただの言葉

──なぜおふたりはVTuberで音楽をされているんですか?

アンジョー VTuberという括りを初めからそんなに意識してないんです。ぼくらは音楽をやることが生活の一部なので、「なぜVTuberでやってるのか」って言われると、VTuberじゃなくてもやってるから、っていうだけです。

コーサカ 音楽好きな人間がVTuberやってたらそりゃ音楽やるでしょ。VTuberだからこそやりたいってことも増えてきましたけど、根源的な目標として「VTuberだからできる」という意識はそんなにない。

「MonsterZ MATE」アンジョーとコーサカによるふたり組エンタメユニット。精力的にオリジナルMVをアップしつづけている。かなり頻繁にショートコント動画もあげつづけており、人を楽しませることに余念がない
「MonsterZ MATE」アンジョー(右)とコーサカ(左)によるふたり組エンタメユニット。精力的にオリジナルMVをアップしつづけている。かなり頻繁にショートコント動画も上げつづけており、人を楽しませることに余念がない

アンジョー そもそも「なぜこのふたりで音楽しているのか」というところでしか答えられないかな。

コーサカ そうなんですよ、アンジョーとコーサカとしてはVTuberが先だけど、※「un:c」と「高坂はしやん」は音楽が先。

アンジョー ぼくははしやんとだから音楽やっている、って感じですね。

コーサカ 音楽を取り巻く色んな環境を考えると、VTuberでやる意味はめっちゃあるんすけど。

※「un:c」=シンガー。「MonsterZ MATE」のアンジョー。
「高坂はしやん」=ラッパー。「MonsterZ MATE」のコーサカ

──おふたりは「魂(VTuberのアクターのこと。共通した意図を持つスタッフ全体を指す場合もある。着ぐるみアクターや声優と線引きするためによく使われる)」の名前を隠さないでやってらっしゃいますが、これは今回書いても大丈夫ですか?

コーサカ 全然問題ないです。

アンジョー ぼくは「魂」って考え方に違和感を感じるくらい(笑)。

コーサカ MZMはふたりともアバターだと思ってるので。

アンジョー 枠組みに定義づけられちゃうのが性格上いやで。ぼく自身はVTuberという名前を背負っているつもりはなくて、エンタテインメントをやっている意識のほうが強いんですよね。見え方の話で複雑になっちゃうんですけど。

コーサカ ボクシングでは右ストレートっていうけど、空手だったら正拳突きだよね、みたいな話。どうして名前をつけなきゃいけないの、って言われたら、それは界隈で一番伝わる言葉だから。あ、でも「前世(※VTuberのアクターの以前の活動を指す言葉)」はまじで嫌い。

アンジョー 「前世」はやだね。死んでねえよ!(笑)。

──となると、衣装みたいな感じなんですかね?

コーサカ 自分たちのエンタメの一種かな。

アンジョー まわりで活動されている人たちを否定しているわけじゃないんですよ。ぼくは活動のアイデンティティを奪われたくない。自分の活動の根底の部分なので、そこに負けちゃうとふたりでやっている意味がぼくはないと思う。

【コント番組】「MZMのみなさんのおかげです。〜年越しスペシャル〜」

コーサカ 「VTuber」はただの言葉ですね! 『バガボンド』と一緒。「天下無双とはなんだ」「ただの言葉じゃ」っていう名シーンがあるのよ。もっともここの感覚はMZMふたりでもけっこう違いますね。俺は「その世界でやらないとわかんない」って思ってる。格闘技のことは道場行かなきゃわからないし、バット振らないことには野球のことわからないみたいな。

アンジョー 陰口言われたことあるんですよ。「絶対VTuberって中身明かさないほうがいいよね」ってぼくがいる前で言われて、今より伸びてない時期でけっこう落ち込んだりもしたな。でも演者である以前に人間だから、やってきたことは人に言いたいですもん。「un:c」でも「アンジョー」でも根幹は「ぼく」という人間。どっちでやったとしても自分でやってきたことじゃないですか。全部言いたい。だからイコールにしているんです。なんでやってきたことを隠さなきゃいけないんだろう、と。

コーサカ こんな楽しいこと、我慢するの?ってすげえ思う。俺は中身(高坂はしやん)の活動からやっぱ一緒だね。

アンジョー 明かしているぶん、リスクはハイパー高いですけどね。

──たとえばどんなところですか?

コーサカ 単純に最初色々言われましたよ。「VTuberを使って中身に導線引きたいんですね」みたいに面と向かって言われたこともあるし。

アンジョー そんな甘いもんじゃないのにね(笑)。

──おふたりの間では意見はぶつからないんですか?

アンジョー・コーサカ ぶつかります!(笑)。

コーサカ ぶつかったとき話し合いしないとだめなんすよ。話し合いをMZMはサボることはない。

──それは音楽で? 動画で?

アンジョー すべてですね。たとえばスタッフさんとグッズの相談とかもするんですけど、ぼくとコーサカで好みが全然違う。でもなんとなくこれ推したいなってときはプレゼンテーションをお互いにする。なんでこれがいいのか、を。するとチームのほうから「おふたりの意見を汲むとこういう感じじゃないですか」とまとめてくれる人もいる。それでいい関係が保てている。

コーサカ それでもこれはもうつづかないやつだって雰囲気になったら「やめよう!」ってなる。ジョーさんが「やめよ、ピンとこないってことはだめってことだから」って止めたり(笑)。

アンジョー 本当にそれやるのはたまにだけどね(笑)。

コーサカ めっちゃたまにっすよ! 超困ったときか嫌な予感がしたときくらい。

アンジョー 本来は押し通るように精査するよね。

コーサカ おもしろい限りは投げない。おもしろくするのは自分たちだから。やらない理由なんていくらでも探せるからね。

アンジョー 逆に「やる理由を自分たちで作っていく」ほうが姿勢としては前向きだよね。

──VTuberや音楽でやる理由を決めて選択した事例はありますか?

コーサカ テレビ出演のときとか。どこ使われるかわかんないし、あとからチェックさせてもらえないのはぶっちゃけ怖いんで。やめる理由探すのは超簡単なんですよ。そこでできることとやる理由を探す。

──決め手になるのは、先ほどからおっしゃってる「おもしろい」ですか?

コーサカ そのとおりです。あともちろん義理とかはあります。

アンジョー シンプルに「おもしろい」と思ったことは、理由考えずにやっちゃうな。なんら特別なことじゃないと思いますけどね。

──いやー、社会人になるとなかなか「おもしろい」だけでは動けなくなりませんか?

コーサカ なんでかっていうと、俺たちが社会人じゃないからです(笑)。

アンジョー 社会を放棄している(笑)。

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道民ライター。『ねとらぼ』『Mogura VR』などのWEBメディアや、雑誌『コンプティーク』『Vティーク』『PASH!』などで執筆中。マンガ、アニメ、VTuber、サブカルチャー中心に活動中。『仕事のマナー「気がきかない」なんて言われるのは大問題ですっ!』などなど発売中。バーチャルプラットフォーム..

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