新生King & Princeについて──アイドルとは【&】のことである。
2023年5月23日より永瀬廉と髙橋海人の2人体制となったKing & Prince。そして、新体制での初めてのシングル『なにもの』が6月21日にリリースされる。
「King & Princeの『シンデレラガール』はラブソングの決定的な理想であり、国民的グループという呼称すら霞んでしまうほど、不滅の輝きで煌めいている」と評するライターの相田冬二が、アイドルとは何か、さらに新生King & Princeによる新しいラブソングについて紐解いていく。
不滅の輝きで煌めいているラブソングの理想「シンデレラガール」
平野紫耀の、かぐわしき永遠のダンス。神宮寺勇太の、かけがえのない笑み。岸優太の、限りない頼もしさ。3人のいないKing & Princeは、寂しい。
けれども。
デビュー5周年を迎えた2023年5月23日、永瀬廉と髙橋海人の2人体制での新たなスタートを切ったKing & Princeに、ひとつの発明を見る。少なくとも、私には、それは小さくて大きな発見である。
*
アイドルは、ラブソングばかりを歌っているわけではない。
たとえば、SixTONESの最新シングル「こっから」はファンキーなサウンドに、ヒップホップ的な韻踏みまくりのリリックがたたみかけ、快調に突っ走る【名乗り】の唄だ。自己言及であり、自己紹介であり、ボヤキであり、自虐であり、開き直りであり、現状肯定であり、なによりもステートメント=声明だ。わたくしはこうしたものでござい、というイントロデュース。個性豊かな6人グループだからこそ、【主観】が束になる爽快。
だが、まず、アイドル(ここでは男性アイドルを指す)という花が、ラブソングで咲く瞬間について考えてみたい。
2018年、6人グループとしてデビューしたKing & Princeの最初のシングル「シンデレラガール」。この曲は2023年、平野、神宮寺、岸が脱退する直前に「シンデレラガール2023」としてセルフリメイクされた。
<キミは シンデレラガール>
そう歌い出されるこの曲は、魔法には期限があることを明示しながら、
<ボクはキミを守り続ける>
と宣言する。
究極の女性賛美を、恋の刹那を、永遠の誓いを、すべて捧げる王道のラブソング。限られた時間の中に、終わらない想いを託すのが、いつの世も(『万葉集』のころから)変わらぬ恋心の具現にほかならない。その、言の葉。
恋心の表現は、楽曲によって、アイドルによって、グループによって、違う。その違いこそが、個性。だが、いつだってラブソングの普遍は、【キミ】の一語に宿る。そして、男性アイドルグループが発する【キミ】には独特の情緒がある。
【キミ】と呼びかけるのは【ボク】である。
【ボク】がいて【キミ】がいるのではない。
【キミ】がいて【ボク】がいる。
【キミ】がいて初めて【ボク】は存在できる。
「シンデレラガール」が優れている点は、【キミ】から始め、【ボク】が出てくるのはサビの最後という構成にある。つまり、【キミ】は【ボク】の存在証明。聴き手にとっては疑似恋愛にもなり得るし、憧れが永久機関として成就もするだろう。ひとつの極み。
King & Princeの「シンデレラガール」はラブソングの決定的な理想であり、国民的グループという呼称すら霞んでしまうほど、不滅の輝きで煌めいている。だからこその、セルフリメイクだったのだと思う。
魔法の言葉である「キミ」
男性アイドルグループが発する【キミ】には、独特の情緒がある、と書いた。
なぜなら、主に複数の男性によって【キミ】が発語されているからだ。歌詞の上では単数形の【ボク】でありながら、それを口にしているのは(それぞれ異なる魅力を有した)男性たち。
だから、正確に言えば【ボクたち】だが、あくまでも言葉は【ボク】。つまり、【主観】は複数。逆に、【主観】が語りかける対象=【キミ】が単数であることが際立つ。
これが、ときめきの根底にあるものだと考えられる。
【キミ】と【ボク】。それは、女性と男性であり、お姫様と王子様であり、ファンとアイドル(たち)である。
【ボク】が【キミ】と口にすることで、【キミ】に【主観】が与えられる。そのとき、【ボク】は、【キミ】という【主観】を下支えするための【客観】となる。
ヒロインの誕生。シンデレラの誕生。
【キミ】は、魔法の言葉である。
King & Princeのみならず、アイドルたちは、多種多様な方法で【キミ】を贈ってきた。【キミ】のためのラブソング。【キミ】を【キミ】にするためのラブソング。
【ボク】は、【キミ】を【キミ】にするためのアイドル。
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