“中年ラジオ”こそが『オールナイトニッポン』の原点?
翌週の放送。佐久間は自身のインスタグラムに、親と子、両方の立場から今回のラジオをキッカケに親子で行動したという報告のDMが殺到したことを報告し、「これはほかのANN0じゃできませんよ。これはできない。本当にオジサンラジオだからできるっていう」と満足げ。妻からは「ここまでハードル上がっているんだったら、それに見合う家事をやらないといけなくなってきますね」と言われ、家事の負担が増えたことを明かし、しっかりとオチをつけていた。
また、前述した高1女子リスナーも、のちに佐久間の助言どおりに父親を誘って外出し、仲がよくなったとことをツイッターでつぶやき、佐久間やリスナーを喜ばせた。
この「神回」は親子の話のみならず、同時に「就職してすぐに辞めてしまう人」話でも盛り上がり、学生、母親、自衛隊員、消防士などさまざまな立場のリスナーからメールが届いた。これが、世の中が寝静まった深夜3時にリアルタイムで起こっているのは特筆すべきことだと思う。現在のANN0は過去最大の全国27局ネット。4時半から放送の『上柳昌彦 あさぼらけ』を目当てにしている年配の方からメールが届くこともあり、リスナーの幅は驚くほど広いのだ。
佐久間のフリートークを聴き、若いリスナーは娘に共感しつつ親世代の思いを知る。中年リスナーは親目線で共感しつつ、過去の思い出が蘇る。もっと年上の老年リスナーはそんな反応を見守る。そこに佐久間やスタッフ陣も加わり、番組が世代間の架け橋となって、優しい連鎖が生まれている。かつての「学生リスナーが兄貴・姉御の話を背伸びして聴く」というかたちから、今は一変しているのだ。
深夜ラジオの雰囲気を伝えるたとえとして、よく「放課後の部室トーク」が使われる。以前ならリスナーはパーソナリティと年齢が近く「同じ部員」だったのだろうが、今は違う。同じ部室トークだったとしても、そこには世代の違うOBやその子供たち、現役部員の父兄、練習を眺めている通りすがりのオジサン、部室棟を管理する用務員さん、学校見学に来た進学希望の中学生まで含まれるのだろう。これまでとはまったく違うのだけれど、今の居心地も悪くない。そんな広がりを生んでいるのが中年ラジオ現象なのだろう。
考えてみれば、ニッポン放送に深夜ラジオの概念を植えつけ、ANN初代パーソナリティにも就任した糸居五郎は、その当時ですでに40代だった。50歳にして『50時間マラソンジョッキー』に挑戦し、ANN2部を60歳まで担当している。さまざまな時代を巡ってきたが、もしかすると佐久間のような“中年ラジオ”こそが『オールナイトニッポン』の原点なのかもしれない。
「今、ラジオで活躍する中年パーソナリティ」第2弾では、『鈴村健一のラジベース』を取り上げる予定です(6月28日公開予定)
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