「佐久間さん、“おもしろい”ってなんですか?」佐久間宣行×テニスコート神谷×ダウ90000蓮見

2022.5.14
佐久間宣行、神谷圭介、蓮見翔

文=早川大輝 撮影=赤羽佑樹 編集=鈴木 梢 制作進行=ヤマグチナナコ


『ゴッドタン』(テレビ東京)や『トークサバイバー!』(Netflix)など、お笑いをフックに数々のヒットコンテンツを手がけ、劇団ひとりやおぎやはぎ、東京03などをフックアップしたことでも知られるテレビプロデューサーの佐久間宣行。

佐久間が注目した人やコンテンツがヒットする現象も珍しくはなくなってきたが、ここ数年彼に注目されながらも、今一歩現状の活躍に満足できていない人がいる。コントユニット・テニスコートの神谷圭介だ。

2002年、武蔵野美術大学在学中に吉田正幸、小出圭祐と共にテニスコートを結成した神谷。現在では小劇場だけでなく誌面やテレビまで活躍の場を広げ、俳優としての活動はもちろんのこと、テレビドラマなどの演出・脚本を手がけ、最近では「画餅(えもち)」というソロプロジェクトを立ち上げるなど、マルチに活躍している。

今回は、同じくコントユニットを主宰する蓮見翔(ダウ90000)も迎え、3人で「演劇やコントで売れるには」をテーマに語ってもらった。後編では、『トークサバイバー!』(Netflix)や『ゴッドタン』(テレビ東京)といったヒットコンテンツにも触れながら「おもしろさ」について考える。


インタビュー前編

「佐久間さん、売れるにはどうしたらいいですか?」佐久間宣行×テニスコート神谷×ダウ90000蓮見

『トークサバイバー!』は「マジ歌」のドラマ版? マジなほうがおもしろいという構造

─演劇好きだけではなく、より幅広い層にリーチするためには、テレビというメディアの可能性はいかがでしょうか。テレビでコントをやろうとするのはやっぱり難しいんですか?

佐久間 うーん、テレビって昔ほど万能じゃないから、いい組み方をしないとあまりメリットにはならない気がする。

─たとえば、テレビではなく配信番組ですが、『トークサバイバー!』は「役者の演技×芸人のトーク」のかけ合わせが見事だったと感じました。あの企画やキャスティングにはどんな意図があったんですか?

佐久間宣行
佐久間宣行(さくま・のぶゆき)1975年11月23日、福島県生まれ。テレビプロデューサー、演出家、作家、ラジオパーソナリティ。『ゴッドタン』、『あちこちオードリー』(いずれもテレビ東京)、『トークサバイバー!』(Netflix)などを手がける

佐久間 実は、あれ「『ゴッドタン マジ歌選手権』のドラマ版」なんだよね。マジでやってるのにツッコめるっていう、「マジ歌」の構図を作るつもりだったから、監督にも「自分のプランの中で一番ダサい、マジを持ってきてもらっていいですか」と伝えて、できたのが『トークサバイバー!』。

そのニュアンスがわかる人に出てほしかったから、お笑い好きの間宮祥太朗くんや東出昌大くん、高橋ひかるちゃんをキャスティングしてる。特に東出くんには、記号として、出てきた瞬間に笑っちゃうような役割も担ってもらってるから、それをシャレとしてわかってくれるセンスも大事で。そうじゃないと、完パケ観たあとに、「笑いものにしてんじゃねえ」って言われちゃうから(笑)。

─「『マジ歌』のドラマ版」っていうのは納得感あります。確かに、役者さんがドラマパートでガチになればなるほど、おもしろくなる構図でしたもんね。それで言うと、佐久間さんは『ゴッドタン』の番組内コントでも、芸人さんではなく劇団所属の役者さんを起用していますね。

佐久間 あれも同じ理由だね。「マジなほうがおもしろい」という構造がわかる人。あと、コントに芸人を起用すると、振りの段階で笑いが欲しくなっちゃうというのもある。小笑いを入れちゃうんだよ。もちろん、役者でも笑いは起きるんだけど、芸人の“欲しがる笑い”とは違うから(笑)。

─役者だと振りに徹することができるってことですか。

佐久間 振りに徹しつつ、笑いを取ってくれる人となると、小劇場でお客さんを笑わせてる役者が一番得意なんだよね。

神谷 その発想で人を呼んでる人、テレビ観ててもあんまいないですよ(笑)。


矢沢や長渕がおもしろい。突き抜けたカッコよさは笑える

蓮見 佐久間さん、ちょっといいですか。自分の話で申し訳ないんですけど、僕、「マジ歌」がすごい好きで。武道館ライブにも行ったことがあって。

(フットボールアワーの)後藤(輝基)さんとかだとダサイ要素もありますけど、カミナリさんのラップはマジでカッコいいじゃないですか。それなのにおもしろいって意味がわからなくて。実はそのときの気持ちから、ダウ90000を始めたところがあります。

『ピーク』というコントが、まさにそれを体現してて。別にボケもツッコミもないけど、本当にいいものを見せたら笑ってもらえるんだ、って思って作ったんです。

ダウ90000 コント「ピーク」

佐久間 へーー!

蓮見 「マジ歌」の発想って、どこから来てるんですか?

佐久間 もともと「マジのほうがおもしろいかも」って気づいたのは、『ゴッドタン』の「キス我慢選手権」。劇団ひとりがマジなセリフを言うのが、なんでおもしろいんだろうなって考えてて。で、それから少しして、オークラさんから「(東京03の)角ちゃんが離婚したばっかなんだけど、離婚を歌にしたやつがあって、それがすげえおもしろい」と教えてもらって。要はブルースなんだけど、これがなんでおもしろいんだろう、とオークラさんと考えたの。

そこで出た結論なんだけど、よく考えると矢沢永吉さんとか長渕剛さんっておもしろいよなと。カッコいいんだけど、あそこまでいくとカッコいいを越えるというか。その人以外がやるとカッコ悪いというレベルになると、おもしろさが生まれる。

神谷 なるほど。

蓮見翔(ダウ90000)
蓮見翔(はすみ・しょう)1997年4月8日、東京都生まれ。8人組コントユニット・ダウ90000主宰

蓮見 わかります。ロッキンに行ったとき、松任谷由実さんが出てて。「真夏の夜の夢」のイントロが流れて、歌い出しで松任谷さんがパッと袖から出てきたんです。そしたら、すごい短いズボン履いてて、その瞬間、ステージに炎がバンって上がって。これユーミンじゃなかったらとんでもないぞって(笑)。

佐久間 俺は一度、矢沢さんをフェスで観たことがあるんだけど、まだ矢沢さんがステージにいないのに、ヘリの音だけしたんだよ。バリバリバリ!!って。

蓮見 会場は、「おい嘘だろ?(笑)」って感じでしょうね。

佐久間 そういう演出だと思うんだけど、それがおもしろかった。マジは突き詰めるとおもしろいんだよ。

「おもしろい」は一番伝えるのが難しい


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早川大輝

(はやかわ・だいき)92年生まれ。WEB系編集プロダクションを経て、フリーの編集者/ライターとして独立。生粋のテレビドラマっ子であり、メモ魔。インタビュー記事の企画と編集、たまに執筆をしています。

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