【考察】なぜ『シン・ウルトラマン』にはカラータイマーがない?庵野秀明の“決別”と『シン・ゴジラ』続編説
『シン・ゴジラ』に続き、樋口真嗣監督・庵野秀明脚本による「好き」を実体化した映画というべき作品が、また誕生してしまった。それが5月13日から公開される『シン・ウルトラマン』だ。
しかし今回のウルトラマンには、胸元にあったカラータイマーがない。それはなぜか? ウルトラ怪獣を1000体以上知る映画ライターのバフィー吉川が理由を考察する。
初代ウルトラマンの原型にはカラータイマーはなかった
特撮オタクの庵野秀明が、ウルトラマンをド直球の「ヒーローもの」として描くとは考えられない。少なくとも今年の3月に公開された映画『ウルトラマントリガー エピソード Z』とは、同じ系統ではない。これは従来のファンではない一般層をウルトラマンのマニアックな世界に巻き込もうとする、つまり庵野のテリトリーに引きずり込もうとしているのではないだろうか。
かつて『ウルトラマン』(1966年)のリメイク作品として公開された、『ULTRAMAN』(2004年)もカラータイマーは付いていなかったが、エナジーコアというそれに代わるものがあった。
ウルトラセブンのように胸の位置に付いていないパターンも一部あったり、ウルトラの母やウルトラマンキングのように「らしいもの」は付いていたり、実は違うパターンなどという変化球はあったものの、ここまで明確にカラータイマーが付いていないデザインは初めてではないだろうか。
なぜカラータイマーがないかに言及するには、そもそもオリジナル版のウルトラマンに、なぜカラータイマーが付いているのかについて触れなくてはならない。
『ウルトラマン』の前作に位置づけられる『ウルトラQ』(1966年)は『アウター・リミッツ』や『トワイライト・ゾーン』などが原型としてあるため、基本的には、人間が怪奇現象に挑むというスタイルの作品であった。そこから派生した作品ということもあり、当初の企画『科学特捜隊ベムラー』ではヒーローというより鳥の怪獣のような姿をしている。
人間の味方の宇宙人(怪獣)が、悪の宇宙人(怪獣)と戦うという設定はそのままに、画家・彫刻家としても知られる成田亨は、ウルトラマンの最終デザインを完成させた。その時点では、カラータイマーはまだ付いていなかった。
その後カラータイマーが付いた理由には諸事情が関係している。
まず、子供たちが視覚的に、ウルトラマンが弱っていることを理解できるようにするため。そして、当時はまだカラーテレビが完全には普及しておらず、白黒でウルトラマンを観ている子供たちのために点滅するものとなったのだ。
デザインの変化に込められた、庵野秀明の特撮愛と遊び心
『シン・ウルトラマン』はカラータイマーだけでなく、中に人が入るためのファスナー部分(背びれ)や、のぞき穴であった黒目もなくなり、より未知の生命体としての存在を強調したデザインとなっている。
つまり『シン・ウルトラマン』にカラータイマーがないのは、中に人間が入ることを想定したデザインに変更しなくてもよくなったことと、映像技術の発展によって視覚的に誰が見ても不都合がない時代になったこと。それにより、成田亨のデザインをそのまま活かすことが可能となった、つまり成田亨に心からのリスペクトを捧げ、それを実現したいと強く願った結果だからだ。
それと同時に、庵野秀明が特撮ヒーローとしてのウルトラマンが大好きなことも伝わってくるのは間違いなく、予告を観ただけでも、ミニチュア撮影を思わせるカットをわざと入れるなど、庵野流の「遊び」が惜しみなく盛り込まれている。ウルトラマンはCGになったとしても、あくまで特撮作品であることを感じさせる仕上がりだ。
ウルトラマンのデザイン以外にも気になる点がいくつかある。それは今作に禍威獣(カイジュウ)として、ネロンガとガボラが一緒に登場することだ。ネロンガとガボラ(ちなみに『ウルトラマン』においては、もう一匹マグラーがいるが)は、もともと『フランケンシュタイン対地底怪獣』に登場したバラゴンの着ぐるみを改造したもの。
ネロンガとガボラが同じ着ぐるみであることは、特撮ファン界隈においては一般常識のような話ではあるが、裏設定として同種族とされているものもあるだけに、この2体を登場させたたことが偶然とは思えないのだ。
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