『プロフェッショナル』で庵野秀明が語る監督論「全部自分のせいにされる覚悟があるかどうか」(てれびのスキマ)


昨日観た番組、そこで得た気づきを綴る連載「きのうのテレビ」。2020年から毎日更新中の“てれびのスキマ”によるテレビ鑑賞記録です。


『プロフェッショナル』

庵野秀明スペシャル。「密着を始めてまもなく私たちは悟った。この男に安易に手を出すべきではなかった、と」「苦行のような日々の始まりだった」というナレーションで始まるのがまずおもしろい。番組史上最長の4年間の密着だという。

「自分がやるより任せたほうがいい。自分で最初からやると自分で全部やったほうがよくなっちゃう。それ以上のものが出てこない」「自分の外にあるもので表現したい。肥大化したエゴに対するアンチテーゼかもしれない。アニメーションってエゴの塊だから」と言いながらも、鶴巻和哉が証言するように「いったんは人に任せてみようと庵野さんはいつも思ってる。なのにそうならない。最終的には庵野さんが全部塗りつぶしていくし、書き換えていくことでしか庵野さんが満足いくものが作れていない」と作り手としてのエゴ全開なのが最高に庵野らしい。

スタッフが「これじゃないってことがわかった」とよく言われると言っていたように、人にやらせてみて自分の中で違うと思うものを捨てていくんだろうなと思った。9カ月かけたAパート(冒頭1/4)をイチからやり直し、公開1年半に迫った段階でDパート(終盤1/4)もやり直す。痺れる現場。庵野「監督に必要なのは覚悟だけ。全部自分のせいにされる覚悟があるかどうか」。

庵野に対し、宮崎駿は「宇宙人」、鈴木敏夫は「テロリスト」「大人になり損ねた人」、緒方恵美は「謎の人」、三石琴乃は「使徒ちゃん」、宮村優子は「少女少年」、そして妻の安野モヨコは「あんまり人に慣れない動物」と、それぞれの形容の仕方がとてもいい。特に「使徒ちゃん」が秀逸だなと思った。

「プロフェッショナルとは?」というこの番組の定形質問には、「この番組、その言葉がついてるのが嫌いなんですよ。ほかのタイトルにしてほしかったです」と答えニヤッと笑う。どこまでも庵野らしかった。

『万年2番手だった麒麟川島が転生したら千鳥おぎやはぎ山里を従えるメインMCだった件』

「俺の名前は川島明42歳。どこに行っても2番手を務める冴えない芸人だ。先輩はもちろん同期だろうが後輩だろうがきっちり盛り上げますよ~って思ってたら、なんとなんと異世界に転生しちゃったってわけ! え~っ!メインMCが俺!? いったいどうなっちゃうの!?」と「異世界転生モノ」の主人公のような口調で言いながら登場し、タイトルどおり、千鳥、おぎやはぎ、山里といった“現世”ではMCの芸人を従えるというあまりにも完璧なフォーマット。でも、4月からは川島もいわゆる“MC側”になるので本当にギリギリのここしかないというタイミングで実現した番組。

“現世”での自分のキャラがどう思われているか、それぞれに自己分析を迫る川島に、大悟はなぜか「カタカナの『ヤ』」の書き方がわからなくなるプチパニックに陥りながら「ヤンチャ」と回答。これに対し川島は「地を這う性欲」だと訂正する。

さらに「ひとでなし/向こう見ず発言」と自己分析する小木には「メンヘラ放火魔」と形容。そして、恐ろしいほど秀逸だったのは山里に対して。「女優さんと結婚した逆転芸人」と答える山里を、「MCは任されているが『山ちゃんの○○』って番組がない」「身分は高いけど出世してない」と分析した上で「今一番『足軽エンペラー』」とデビュー当時のコンビ名を使って形容。その見事さに震えた。今年は麒麟・川島の年になりそう。


『有田ジェネレーション』

最終回だが、「問題児芸人下克上ネタバトル」と題して通常どおりの企画。最後に登場してきたトンペーは、コウテイ九条と顔が似ているということで巻き込んでいく。下克上バトルはトンペーと九条が即席コンビを組み、研究生のダニエルズと対戦することに。有田の判定は最終回なのにまさかの「再試合!」。

今日観たい番組:『あちこちオードリー』に今田耕司

『マツコの知らない世界SP』(TBS)は森山直太朗による「歌姫の世界」、サニーデイ・サービス田中貴による「地方ラーメンの世界」。

『ロンドンハーツ』(テレ朝)は「全国の女子アナ132人がリアルに選んだ好きな芸人GP」。

『おもしろく入る部屋 ※東野幸治 監視中』(テレ東)、第2夜。

『にゅーくりぃむ』(テレ朝)はアルコ&ピース、蛙亭による「くりぃむしちゅーの理想の楽屋選手権」。

『あちこちオードリー』(テレ東)に今田耕司。

『石橋、薪を焚べる』(フジ)、『志村友達』(フジ)、『シタランドTV』(テレ朝)最終回。

満島ひかり主演『シリーズ江戸川乱歩短編集IV「怪人二十面相」』(BSプレミアム)、森山未來ら出演。


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  • 【連載】きのうのテレビ(てれびのスキマ)

    毎夜ライフワークとしてテレビを観つづけ、テレビに関する著書やコラムを多数執筆する、てれびのスキマによる連載。昨日観た番組とそこで得た気づき、今日観たい番組などを毎日更新で綴る、2021年のテレビ鑑賞記録。

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てれびのスキマ

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てれびのスキマ

1978年生まれ。ライター。テレビっ子。著書に『タモリ学』(イースト・プレス)、『1989年のテレビっ子』(双葉社)、『笑福亭鶴瓶論』(新潮社)、『全部やれ。日本テレビ えげつない勝ち方』(文藝春秋)など。

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