圧倒的な物量『庵野秀明展』に思う。文化とは「90%のカス」のほうが本体である(藤津亮太)

2021.11.3
藤津ジャーナル

文=藤津亮太 編集=アライユキコ 


国立新美術館で開催中の『庵野秀明展』に足を運んだアニメ評論家・藤津亮太は、庵野の原点を形成する特撮の模型やスーツ、アニメの原画などの膨大な展示に感銘を受ける。痛感したのは、文化とは「残す」ものであること。今「残そうとする」行動が求められている。

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『ギンガイザー』など多様な作品を残す意味

『超合体魔術ロボ ギンガイザー 全28話保存プロジェクト』というクラウドファンディングに参加した。『ギンガイザー』は1977年に放送されたロボットアニメ。同作を今後長く活用できる状態にするため、2K以上のクオリティでフィルムスキャンを行い、データ化しようというのがこのクラウドファンディングの趣旨だ。締切が11月5日に迫っているので、気になった方は、是非急いで申し込んでほしい。

『ギンガイザー』は、小学校低学年の時に毎週楽しみに見ていた番組だ。主題歌 「超常スマッシュ!ギンガイザー」のサビを耳コピしてリコーダーでよく吹いていた。ミソドドドー/ファファラドドドドー。そして『アニメージュ』の付録「スタジオぬえのデザイン・ノート」で、メインのロボットのデザインをスタジオぬえが担当していた(そして本編よりデザインのほうがかっこいい)ことを知ったのも印象深い思い出だ。

超合体魔術ロボ ギンガイザー

とはいえ『ギンガイザー』が、アニメ史上の“重要作品”かというと決してそんなことはない。むしろ最近だと、必殺技「超常スマッシュ」の形状がゴテゴテと過剰だったりすることがネタとして取り上げられ、“時代の徒花”として触れられることも多い印象だ。

そんな『ギンガイザー』だが、先に書いた個人の体験を抜きにして、僕は『ギンガイザー』のクラウドファンディングが成功してほしいと思っている。というのも、作品を利用可能な状態で残していくのは結構難しいことで、しかも“重要作品”だけではなく、多様な作品を残していかないと「文化」を後に伝えていくことは難しい、と改めて感じているからだ。

ここでいう「文化」とは「人の営みの中で生まれた様々なものの総体」といったような意味合いだ。1970年代は『マジンガーZ』(1972)から始まり、様々なロボットアニメが登場した時代だ。ロボットアニメは合金製玩具が主力商品で、子供に訴求するため様々なプレイバリュー(遊びたくなるような仕掛け)が追求された。『ギンガイザー』の「超常スマッシュ」もそうした時代の中で生まれたプレイバリューのひとつだ。こうした作品を構成する要素は、当時のアニメ番組を取り囲む大きな流れの中の一部分なのである。“重要作品”には“重要作品”の意味があるが、そこだけ見ていても「文化(ここでは1970年代のロボットアニメ文化)=大きな流れ」は見えてこない。当時存在した文化を伝えるなら、なるべく実物が検証可能な状態で残されることが望ましい。『ギンガイザー』のクラウドファンディングも、大きく言えば、そういう意義の中に位置づけることができる。

庵野秀明監督が生まれた文化的背景


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