BE:FIRST「Bye-Good-Bye」楽曲レビュー。サビに刻み込まれた“宙吊りの瞬間”が生み出す言外の意味(imdkm)

2022.4.16
BE:FIRST「Bye-Good-Bye」楽曲レビュー

文=imdkm 編集=森田真規


SKY-HI(スカイハイ)主催のオーディション『THE FIRST』によって誕生し、2021年11月3日に音楽チャート40冠を達成した『Gifted.』でデビューした7人組のボーイズグループ「BE:FIRST(ビーファースト)」。彼らの2ndシングル『Bye-Good-Bye』が5月18日に発売される。

ここでは3月7日に配信リリースされた表題曲「Bye-Good-Bye」を、『リズムから考えるJ-POP史』の著者であり批評家のimdkm氏が分析した楽曲レビューをお届けする。


サビに刻み込まれた宙吊りの瞬間

2021年に開催された公開オーディション『THE FIRST』発のボーイズグループ、BE:FIRST。近年国内でも盛り上がりを見せるボーイズグループの勢いを象徴する新鋭グループのひとつだ。プレデビュー曲「Shining One」やデビューシングル『Gifted.』を経て、着々と歩みを進めてきたBE:FIRSTの最新楽曲が「Bye-Good-Bye」だ。5月のCDリリースに先駆けて3月にはデジタル配信が始まっていて、もう耳にしたことがある方も少なくないのではないかと思う。

BE:FIRST / Bye-Good-Bye -Music Video-

ちょっとローファイで柔らかい手触りを残したビートと、それとは対照的に抜けのよいボーカル。そんな対比が印象的な「Bye-Good-Bye」は、3分ちょっとというやや短めの尺も相まって何度もリピートしたくなる一曲だ。「別れ」の切なさを正面から受け止めながら未来を見ようとする歌詞は、ともすればヘヴィな印象になりかねない。

しかし、しっかりと地面を踏みしめるような4つ打ちのキックが楽曲をダンサブルに駆動することで、停滞ではなく確かなステップを感じさせるのが巧みだ。そして何より、ビートという背景の中、ふっと自然に浮かび上がるようなボーカルの存在感。曖昧に揺れる心模様を声の響きに封じつつ、メンバー各々のカラーとスキルをしっかりと伝えている。

何よりこの曲で最も印象的なのは、サビに刻み込まれた宙吊りの瞬間だ。サビ前のブレイクを経た冒頭、<だけどきっと/Bye Bye だけじゃ終わんない>のくだり。サビに入って3小節目にして、4つ打ちのグルーヴは少し乱れてふっと歩みを止める。スパッと音が止まってキメが入るわけでもなく、まさに少し宙に浮くような不思議な感覚が生まれる。フィルインと共に<Yeah Yeah>と軟着陸して改めてグルーヴは歩み出すけれども、再び<精一杯の Bye Bye/君は止まんない>でまた宙に浮く。

シンプルで飾らない曲に現れたグループとしての実力

なぜこの宙吊りの瞬間が深く印象に残るかといえば、この曲、サビ以外はむしろ少し息が切れそうなくらいに言葉がつながって連なっているからだ。わかりやすいのはAメロで、リズムのアクセントと言葉の意味の切れ目がちょっとずつズレて紡がれることで、実際の歌唱のいかんはともかくとして、まるでひと息に言葉を吐き出しているかのように感じられる。

だからこそ、サビの宙吊り感は何か言外の意味をふんわり持ち始める。それが戸惑いやためらいから立ち止まる様子なのか、それとも深く息をついて次の一歩を踏み出す決意なのかは聴く人によるかもしれない。いずれにせよ、「サビであえてグルーヴを宙吊りにする」ことによって、「Bye-Good-Bye」は一直線な別れの歌とは違うニュアンスを醸し出している

BE:FIRST
BE:FIRST

デビュー曲の「Gifted.」が、グループのスタートを告げる気合いと気負いを感じるドラマチックな楽曲だったことを思うと、こうした「Bye-Good-Bye」の表現はもっとさり気なくて密やかなものに思える。けれども、ぱっと聞きシンプルで飾らない曲でこそ実力は嘘偽りなく現れてくる。彼らは実際、そこに間違いなく答えているように思う。

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