SKY-HI『八面六臂』ツアーで見せた“共生”への決意「俺が一歩目を踏み出すとき抱えていた想いを君に捧げます」【ネタバレあり】

2022.4.10
『SKY-HI HALL TOUR 2022 -八面六臂-』より

文=坂井彩花 撮影=ハタサトシ 編集=森田真規


2020年9月末にCEOを務めるレーベル兼マネージメント会社「BMSG」を設立し、2021年11月3日にデビューした7人組ボーイズグループ「BE:FIRST(ビーファースト)」を輩出したオーディション『THE FIRST』では主催者を務め、去る2月21日に配信リリースした楽曲「JUST BREATHE feat. 3RACHA of Stray Kids」ではiTunesワールドワイドソングランキングで3位を獲得するなど、獅子奮迅の活躍を見せているラッパーのSKY-HI(スカイハイ)

そんな彼が2021年10月27日にリリースしたアルバム『八面六臂』を引っさげ、約3年ぶりのホールツアー『SKY-HI HALL TOUR 2022 -八面六臂-』を2月5日より行っている。ここでは2月26日に東京・LINE CUBE SHIBUYAで開催された公演の模様をレポートする。

※本記事は『SKY-HI HALL TOUR 2022 -八面六臂-』のライブ内容の詳細に触れていますので、公演をこれからご覧になられる方はご注意ください。


居場所も行く当てもなかった男のストーリー

2020年9月23日に『SKY-HI’s THE BEST』がリリースされてからの約1年間、SKY-HIは激動の毎日を駆け抜けてきた。コロナ禍というただでさえ変化が多い環境下であるにもかかわらず、レーベル兼マネージメント会社「BMSG」の設立やオーディション『THE FIRST』の開催など、さらなる変化に自ら飛び込んできたのである。

2021年10月27日にリリースされた『八面六臂』は、そんな日常の記録ともいえる作品だ。忙しい日々の中で“やりたい人とやりたいように”作られた曲たちは、生身のSKY-HIをそのまま落とし込んだようなピュアな作品へと昇華された。結果として、どのアルバムよりもコンセプティブでジャンルをクロスオーバーした一枚へと仕上がったのである。

2月26日、LINE CUBE SHIBUYAで観た『SKY-HI HALL TOUR 2022 -八面六臂-』は、『八面六臂』にさらなる奥行きを与えるようなエンタテインメントであった。各セクションに厚みを持たせると共に、この1年を語る上で抜けていたエッセンスを追加。ライブ前の影アナで説明していたように「居場所も行く当てもなかった男のストーリー」を、丁寧に描いていったのである。

『SKY-HI HALL TOUR 2022 -八面六臂-』より
『SKY-HI HALL TOUR 2022 -八面六臂-』より

このライブを観ていく上でのポイントはふたつある。

ひとつ目は、これまでのホールツアーでは当たり前のように身にまとっていたスーツを前後編どちらにおいても着ていない点だ。スーツスタイルはライブのみならずアートワークでも多用されており、エンターテイナーSKY-HIを語る上で欠かせない要素のひとつ。一方で今回は前編でまっさらな状態から始める意志を感じさせる白のセットアップを着用し、後半では『八面六臂』のアートワークを想起させる花柄のロングジャケットを羽織っている。これは「エンターテイナーSKY-HIはかくあるべし」というイメージから脱却し、フラットな自分として新たなスタートを切ったことを提示しているのではないだろうか。

ふたつ目は、約2時間のステージをひとつの物語としている点だ。過去のライブでは前後編の内容を別軸で展開することもあったが、今回はセットリストの最初と最後に「To The First」(最初はremix)を置き、メインテーマとして展開していた。また、アルバム上では4つに分類されていた気持ちの動きを6つに広げ、アルバム時点では拾い切れなかった感情を丁寧に補った構成──そんなふうに読み解くことができると感じた。

『SKY-HI HALL TOUR 2022 -八面六臂-』より
『SKY-HI HALL TOUR 2022 -八面六臂-』より

“俺”から“俺たち”へと変化した視点

長々と前置きをしてきたが、ここからは本公演について具体的に触れていこう。「To The First remix」で幕開けしたライブは、「Simplify Yourlife」によりひとつ目のブロックである“孤独”へと突入する。描かれているのは、局所的なコロナ禍で人に会えない……といった類の孤独ではなく、本質的な同士や仲間、理解者がいないという孤独だ。<一人のままでもいい>という虚勢は虚しく響き、XR技術により映し出された蜘蛛の糸がさまざまな呪縛のようにSKY-HIへ絡みつく。

『SKY-HI HALL TOUR 2022 -八面六臂-』より
『SKY-HI HALL TOUR 2022 -八面六臂-』より

<俺は俺のままだ>と「Doppelgänger」で叫んだかと思えば、<自分が自分で無ければ俺は笑えないぜ>と皮肉る「Persona」では仮面をつけた「BLUE FLAP QUARTET」(4人組のダンスチーム。以下、BFQ)が登場。本音をひた隠しにし、仮面を外せなくなった人々がさまよっている様を描いた。極めつけは、<勝てる所あるなら探してみな>とすべてを蹴散らす「Mr. Psycho」である。深いところで誰にも理解されない苦悩を、単なる哀しみではなくボースティングとして表したのだ。

『SKY-HI HALL TOUR 2022 -八面六臂-』より
『SKY-HI HALL TOUR 2022 -八面六臂-』より

ここまで「俺が俺が……」と一人称で語られてきた物語は、「Sexual Healing」をきっかけに“俺たち”へと広がりを見せる。次のブロックを名づけるならば、“覚醒”とでもいえるだろうか。『THE FIRST』で新たな才能と出会い、改めて自分自身を見つめ直す瞬間も増えたのだろう。

トガっていた気持ちが丸くなっていく様を、アルバムには入らなかったインタールードを入れることで丁寧に追っている。体は離れていても深いところではつながっていると歌う「#Homesession」、origami PRODUCTIONSへのリスペクトを感じさせ、Michael Kanekoが客演した「Tomorrow is another day」、『THE FIRST』で出会ったAile The Shotaと共に歌った「me time remix」。徐々にほぐれていく心を、オープニングとは対極な温かい言葉で紡いでいった。

『SKY-HI HALL TOUR 2022 -八面六臂-』より
『SKY-HI HALL TOUR 2022 -八面六臂-』より

「君の生きる意味も価値も俺がこの音楽で証明しよう」


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坂井彩花

(さかい・あやか)1991年、群馬県生まれ。ライター、キュレーター。ライブハウス、楽器屋販売員を経験の後、2017年にフリーランスとして独立。『Rolling Stone Japan Web』『Billboard JAPAN』『Real Sound』などで記事を執筆。エンタテインメントとカルチャーが..