SKY-HI『八面六臂』ツアーで見せた“共生”への決意「俺が一歩目を踏み出すとき抱えていた想いを君に捧げます」【ネタバレあり】

2022.4.10


アーティストの前にひとりの人間

ラストスパートを前にしたSKY-HIは、胸中に秘めていた想いをぽつりぽつりと語り始めた。直接会えることの喜び、海外にいる友達のこと、そしてロシアとウクライナの戦争のこと──「リリースして1週間しか経ってないのに、今日で、ロシアで1万7000人とか2万人が(『JUST BREATHE』を)聴いてくれている。ウクライナでも2000〜3000人が聴いてくれている。そんなのさあ、何か思わないってほうが無理じゃない」と口にした。

昨今の緊迫した情勢にも、自身の体験や今までの経緯を踏まえながら、「言うべきことだと思ってることすらステージで言えないラッパーであってはいけない」と改めて言及。

BMSG設立時、「人間として生きるということは、社会に属しながら生きることと同義。結果的に発言が社会や政治に触れることも、当然のことだと思っています」(「SKY-HIが今、新会社とボーイズグループを作る理由。大切なのは未来へバトンをつなぐこと」)と発言していたSKY-HI。“アーティストの前にひとりの人間”というのが、彼のスタンスなのだ。ここでの発言も、実体験をもとに、手の届く範囲で歩み寄っていった事柄のひとつがロシアとウクライナの問題だっただけなのである。

『SKY-HI HALL TOUR 2022 -八面六臂-』より
『SKY-HI HALL TOUR 2022 -八面六臂-』より

仲間と共に歩み始めた男のストーリー

<世界は広くて狭いし 人生はオチまでクドいから どうせなら遊ぼうや good for you>と「Good 4 You」を1バース蹴ると、ラストのセクションとなる“共生”へSKY-HIは足を踏み入れていった。つづく「Marble」が大きな意味を成していたことは想像に難くないだろう。全部違うものが調和した美しさをなす花鳥風月に「多様性を愛そう」とメッセージを重ねたナンバーは、こんな状況下だからこそ平和を祈る歌として柔らかく心に降り積もる。

君と過ごすいい日がつづくことを願った「仕合わせ」を経て、ショーの大詰めとなる「One More Day feat. REIKO」へ。REIKOが放つ<怖くても独りじゃないから>という歌声は、教会に鳴るパイプオルガンのように温かく響き、SKY-HIが抱えていた孤独を包み込んで溶かしていくかのようだった。曲が終わるころにはステージに出演者がそろい、大団円を迎えていた。もうSKY-HIが孤独でないことを示唆すると共に、物語のエピローグを感じさせた。

『SKY-HI HALL TOUR 2022 -八面六臂-』より
『SKY-HI HALL TOUR 2022 -八面六臂-』より

「カミツレベルベット 2020」で最終ギアをグッと踏み込み、「俺が一歩目を踏み出すとき抱えていた想いを、最後に君へ捧げます」の言葉で結ばれたのは、このライブのメインテーマといえる「To The First」。<怖くても進め>というリリックはここまでのストーリーを踏まえると、<(独りで)怖くても進め>から<怖くても(仲間と共に)進め>という意味に変化しているのだろう。

最後には会場全体に向けて「次に会うときまで、たくさんつらいこととか嫌なこととか不安なこととか、ひょっとしたら昔の俺みたいに『もう嫌になっちゃうな』って思うことがあるかもしれないけど、何回だって思い出してほしい。どんな状態でも一歩を踏み出した俺みたいな男がいること、そして、その男がほかでもない君のことを心から応援してることを。音楽で出会った縁なんだ。最後まで付き合うぜ。せっかくだ、最高の人生を一緒に送ろうぜ。愛してるぜ、FLYERS!」と声をかけ、ステージから退場。本質的な孤独から脱却して「仲間と共に歩み始めた男のストーリー」を、SKY-HIは2時間で濃密に描き切ったのである。

『SKY-HI HALL TOUR 2022 -八面六臂-』より
『SKY-HI HALL TOUR 2022 -八面六臂-』より

新たな才能と出会い覚醒したSKY-HIから、“自分らしく生きる覚悟”と“君が君らしく生きることを肯定する覚悟”を感じた。仲間と交わることで“自分の人生を一生懸命に愛そう”と決意して、“まわりの人を愛し、共生していく美しさ”を再認識した。

『SKY-HI HALL TOUR 2022 -八面六臂-』は、いわば現時点でのSKY-HIの総括だったのかもしれない。コンセプトを感じさせながらも固執はしない演出、楽曲を鮮明に描くパフォーマンス・映像・照明の融合、そして会場に集った仲間たち。『THE FIRST FINAL』で『THE FIRST』のけじめをつけたように、このホールツアーで自身が抱えてきたトラウマを消化し、「生きること・死ぬこと・愛すること・戦うこと」と向き合ってきたアーティストSKY-HIとしてのけじめをつけたのだ。

『八面六臂』の物語はこのツアーをもって完結するのだろうが、SKY-HI自身の物語は今もリアルタイムでつづいている。本作を通して正真正銘のポジティブに辿り着いた彼は、今後どのようなアプローチをするのだろうか。「最高の人生を一緒に終えようぜ」という誘いを真に受け、ロングタームで彼の活動に胸を躍らせる人生も一興である。

『SKY-HI HALL TOUR 2022 -八面六臂-』より
『SKY-HI HALL TOUR 2022 -八面六臂-』より

『SKY-HI HALL TOUR 2022 -八面六臂-』セットリスト(2022年2月26日、LINE CUBE SHIBUYA)
01. To The First remix
02. Simplify Yourlife
03. Doppelgänger
04. Persona
05. F-3
06. 何様 THE FIRST TAKE Ver.
07. Mr. Psycho
08. Sexual Healing
09. Blue Monday
10. #Homesession
11. Seaside Bound
12. Tomorrow is another day feat. Michael Kaneko
13. me time remix feat. Aile The Shota
14. Name Tag
15. Walking on Water
16. フリージア
17. JUST BREATHE
<センテンス>
18. Dive To World
19. Limo
20. TOKYO SPOTLIGHT
21. Tumbler
22. Double Down
23. Snatchaway
24. 14th Syndrome feat. RUI, TAIKI, edhiii boi
25. そこにいた
26. Over the Moon
27. 創思創愛
28. アイリスライト
29. Good 4 You
30. Marble
31. 仕合わせ
32. One More Day feat. REIKO
33. カミツレベルベット 2020
34. To The First

【関連】SKY-HIの新たなデビューアルバム『八面六臂』を“オリジナルアルバム”と“客演”という視点から読み解く

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ライター_坂井彩花

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坂井彩花

(さかい・あやか)1991年、群馬県生まれ。ライター、キュレーター。ライブハウス、楽器屋販売員を経験の後、2017年にフリーランスとして独立。『Rolling Stone Japan Web』『Billboard JAPAN』『Real Sound』などで記事を執筆。エンタテインメントとカルチャーが..

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