「何をやるか」以上に「誰がやるか」が強かった『M-1グランプリ2021』

錦鯉/最終決戦ネタ(C)M-1グランプリ事務局

文=かんそう 編集=鈴木 梢


祭りのようなM-1だった。1番手モグライダー、2番手ランジャタイが来た時点で、完全に「田舎の奇祭始まった」と思った。『三四郎のオールナイトニッポン0(ZERO)』(ニッポン放送)にゲスト出演したモグライダーが「4本の男根がサル10匹乗ってる神輿を担ぐ奇祭」の話をしていたが、それが現実になってしまった。マヂカルラブリーが言うところの「ウンコチンコ漫才」の究極系、錦鯉がM-1チャンピオンになる世界線を誰が想像しただろうか。

彼らの優勝を受け、今大会のテーマソング宮本浩次「昇る太陽」の歌詞が錦鯉のことにしか聴こえなくなったというコメントを見たが、GERAで配信中のラジオ『錦鯉の人生五十年』12月13日放送回で、偶然なのか「太陽」についての問題が出され、長谷川雅紀は「太陽は◯から昇って◯へ沈む」の答えを終了ギリギリまで悩んでいた。

また、この楽曲が使われた動画のラストでは、ランジャタイ国崎和也と錦鯉・渡辺隆が「全員笑って観てられる大会にしたいです、あいつバカやってるみたいな」「最高の大会にしような」と語り合っている。爪あとを残したランジャタイと優勝した錦鯉、すべてはつながっているのかもしれない。

ファイナリストが決まった直後から「K-PRO主催のM-1」「M-1グランプリ魔界編」と揶揄されてきた今大会だが、開始直後から想像以上の光景がそこには広がっていた。

モグライダー「美川憲一がさそり座の女以外である可能性を全部消したい」

ランジャタイ「風がものすごく強い日に飛んできたネコ飼う?」

文章ではもはや意味さえわからないネタに、意識が飛びかけた。ほとんど脇を指でコチョコチョされてるのと同じ、おもしろいかおもしろくないかを判断する暇もなく、問答無用で脳が爆笑に支配された。モグライダーもランジャタイもお互いがちゃんと「会話」をしてるため一応「しゃべくり漫才」のていを成しているのが、本当に狂っていた。ネットを見ると去年「漫才か漫才じゃないか論争」を語っていた人間たちが灰と化していた。

しかも、ただグチャグチャでカオスな漫才というわけでもない、ふた組に共通するのは「形態模写」の凄まじさ。あの瞬間、確実に我々の目にはモグライダーの芝大輔が美川憲一に見えていたし、ランジャタイ国崎の体内に「ニャンちゃん」は存在していた。見ている人間の視神経すら狂わす魔漫才、そこからはハッキリいって夢うつつだった。

「なんのネタをするか」よりも「誰がネタをするか」が強い大会


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