コロナ禍できょうだい子猫3匹の里親を探す日々〈猫を飼う条件:思っていたのとはちがうすべてを楽しめること〉

2021.11.19

お届けまでの日々

「ぶん」の譲渡が決まった後は「なな」、「よう」と仲よくしているところを見ると、ちょっとだけ申し訳ないような気持ちになった。でも、それはもう仕方ない。ごめんな。

そんなこちらの気持ちも知らず、「ぶん」は相変わらず絶好調だった。

ある日、「ぶん」が見当たらなくなったのだ。どこにもいない。そんなはずは……と思いながら、散々探していたら、嘘でしょう? というようなところにいた。突っ張り式の棚と天井の間の隙間から、探している僕を眺めていた。どうやって登ったの? という場所だけれど、おそらく猫タワーから跳び移ったのだ。こんなに跳べるもの? と、にわかには信じられない距離なんだけど、それしか考えられない。

あわてて登れないように応急処置を施した。もう譲渡は目前だと言うのに。

〈猫を飼う いいことも困っちゃうこともこんなはずではなかったことだ〉

きょうだい猫
お気に入りのトンネル

いよいよ明日がお届けの日。寂しくなる。寂しい。

〈こちらから決めてお別れする猫で泣く意味がなく泣くわけがない〉

……で、お届け当日。お届けは妻と動物病院の先生にまかせて、僕は留守番をしていた。

〈にぎやかが移動しただけ 里親に猫を渡した日の静かさは〉

その後
「ぶん」改め「寅」くんは、ほどなく里親さん宅に馴染んでくれて、今ではすっかり「寅」くんである。譲渡後も写真や動画で様子を伝えてくれて、とてもありがたい。
とにかく、元気で! 健康と長生きが一番の飼い主孝行だよ!

最後にもう1冊、本を紹介して終わります。その名も『職場の猫』(たきりょうこ/KADOKAWA)。
猫歌人なので、自分の著作もそうなのだけれど、「猫」がテーマの本って「猫と作者との距離感」が重要だと思っている。だいたい「飼い主と猫」の話を「飼い主目線」で語るか「猫目線」で語るか、みたいなところに収まるのだけれど、それとは全然異なる距離感の猫マンガなのだ。

『職場の猫』たきりょうこ/KADOKAWA
『職場の猫』たきりょうこ/KADOKAWA

作者のたきさんは、漫画アシスタントで、職場は漫画家ユニット「うめ」さんの自宅兼仕事場。そこで飼われている2匹の猫との他愛もないあれこれをマンガにしている。この距離感がすごくいい。いい意味でベタベタしていないし、一緒に暮らしているとスルーしちゃうようなことも描かれていて、目の付け所が新鮮。セリフのないサイレントマンガが、猫マンガにはなかなかないちょっとドライな距離感ととても合っている。色使いもとてもかわいい。ツイッターで見かけたときからすごく好きで書籍化されて、すぐ購入してしまった。オススメ!

さて、残るは「なな」と「よう」の里親さん探しなのですが、これはまた次の機会に改めて……。

寅になったぶん
寅になったぶん

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