誰が優勝しても納得の『キングオブコント2021』、特に注目したい5組

キングオブコント2021予想_かんそう

文=かんそう 編集=鈴木 梢


決勝進出芸人が発表され、本格的に盛り上がってきた『キングオブコント2021』(10月2日放送)。今年は「即席ユニットでの出場が可能」の新ルールが追加され話題となったが、まさかの全組敗退。そんな彼らをなぎ倒して決勝に進出した猛者たちは、いったい何者なのか。決勝進出10組の中でも、カルチャーブログ『kansou』などで執筆を行うかんそうが、特に注目したい5組を紹介する。


【10月3日追記】2日夜に行われた決勝で、空気階段は史上最高得点を獲得し優勝。QJWebでは優勝後の囲み会見レポートなど、今後も『キングオブコント』関連記事を公開予定です。

全10組、間違いなく”猛者”

9月6日、『キングオブコント2021』の決勝進出芸人10組が発表された。

今年は「即席ユニットでの出場が可能」という新ルールが適用され、いつも以上に荒れた大会になると予想していた。そもそもキングオブコントは現時点で芸歴制限がなく、どんな賞レースよりも自由度の高い大会だったのだが、それがこのルールでさらに幅が広がったことでいよいよ全芸人が一生参加できる「なんでもあり」の様相を呈していた。

これには賛否両論はあるかもしれないが、個人的には「おおアリ」だと思っていた。誰もが夢に見た「好きな芸人×好きな芸人のドリームコントを拝めるかもしれない」という期待感は、スポーツ漫画で全国大会を終えた敵同士が世界大会編で同じチームになったときのワクワクに似ている。

『キングオブコント2014』で優勝したシソンヌと、同大会で準優勝したチョコレートプラネットの「チョコンヌ」。『M-1グランプリ2020』で準優勝して一気にスターダムを駆け上がった「おいでやすこが」。『R-1グランプリ』決勝常連のマツモトクラブとピン芸人のしゃばぞう、もじゃのトリオ「マンプクトリオ」。合計年齢138歳、間寛平と村上ショージの「ヤギとひつじ」。数々のユニットコントが出場し、準決勝まで勝ち上がっていた。

が、結果としてひと組も決勝進出は叶わなかった。この時点で『キングオブコント2021』がどれだけガチなのかが恐ろしいほど伝わってくる。自分たちで設けたルールだろうと一切忖度なし、それと同時に浮き彫りになる決勝進出組の強さ。ファイナリスト決定直後会見でニューヨーク屋敷が「派手な決勝になるやろうなと蓋開けてみたら、仲間しかいなくて」と言っていたのだが、名だたる芸人たちをなぎ倒して残ったこの10組全員紛れもなく「猛者」。その中でも特に注目している芸人を紹介したい。

蛙亭

蛙亭インタビュー
蛙亭の中野周平(左)、イワクラ(右)(撮影=小野奈那子

狂気とコミカルが入り混じったコントで観る者を中毒にさせる蛙亭。イワクラの作り出す「怖い」と「おもしろい」が同居しつつもその中に人間の「切なさ」を感じさせる世界観は蛙亭でしか味わえない。そしてそれを120%表現する中野の演技力。彼の演技を初めて観たとき、映画『冷たい熱帯魚』のでんでんと同じくらいの衝撃があった。どんなに気持ち悪いキャラクターだろうが最終的に中野周平の一挙手一投足から目が離せず、コントが終わるころには愛くるしさすら感じ好きになってしまう。決勝でいったいどんな世界に引きずり込んでくれるのか。

空気階段

空気階段 鈴木もぐら 水川かたまり
空気階段の鈴木もぐら(左)、水川かたまり(右)(撮影=長野竜成

変態的なのにドラマチック、1週間後の夢にまで出てきそうなほど「濃い」コントをする空気階段。最初に感じる見た目の衝撃と、後半にかけての展開のギャップはさながら『世にも奇妙な物語』のよう。「今年でキングオブコントは最後」だと豪語している彼らだが、水川かたまりは自らのプライベートになぞらえて「独身で9位、結婚で3位、バツイチで1位」と完全な伏線回収に入っている。彼らの人生そのものが大冒険譚でありロマン。ワンピースの結末と同じくらいふたりの行く末を楽しみにしている自分がいる。賞金で鈴木もぐらの残り550万の借金を返済できるのかも見どころだが、個人的な願望として優勝が決定した瞬間に「サイコゥ!サイコゥ!サイコゥ!」と叫ぶ水川かたまりが見たい。

ザ・マミィ

殴り合いのケンカに発展するザ・マミィ
ザ・マミィの林田洋平(左)、酒井貴士(右)(撮影=時永大吾

林田洋平が作り出す変態性の中に知性を感じさせるコントは、酒井貴士のキャラクターのポップさと相まって最初の1ボケからとんでもない爆発力を生む。しかも、ただおもしろいだけでなくどのネタも物語性があり、まるで一本の映画を観たときのような満足感がある。「一人前になるまで顔を見せるな」と父親に言われている林田と、世界でも数少ないアベノマスクユーザーでもある酒井のふたりの人間的なおもしろさも注目したい。

ニューヨーク

2年連続で『M-1グランプリ』決勝進出を決めたニューヨーク(左=嶋佐和也、右=屋敷裕政)
ニューヨークの嶋佐和也(左)、屋敷裕政(右)(撮影=鈴木 渉)

倫理観がブッ飛んだ偏見ネタで観ている人間の脳をトリップさせるニューヨーク。毒だけでなく、どんな役を演じていても「その道の人にしか見えない」リアルな演技はとんでもない没入体験を生み出す。その語彙力でネタの対象を消し炭にする屋敷裕政と、準決勝出番前にトンツカタン櫻田のメガネをケツで叩き割るという凶行を犯しつつも一切引きずらなかったという異常メンタルの持ち主・嶋佐和也。公式コメントとして発表していた「去年とは全くタイプの違うネタで勝負します」の言葉をそのまま受け取るならば、エグさの極みのようなネタが披露されるのだろうか。世間の反応も含めて楽しみで仕方ない。

マヂカルラブリー

マヂカルラブリー
マヂカルラブリーの野田クリスタル(左)、村上(右)(撮影=TOWA

「お笑い賞レース三冠」がついに現実味を帯びてきたマヂカルラブリー。準々決勝の密着動画では「全ジャンル自信あります。だから全部獲ります。三冠」と豪語する野田クリスタルと、「僕は別にそこまで三冠とか思わないんで、楽しくお笑いできればいいんじゃないですかね」と謙虚を貫く村上。一見対照的なふたりだが、醸し出すオーラはどちらも圧倒的強キャラ感すらあった。小細工なしで真っ向から笑わせにいくようなストロングスタイルは、まるで『幽☆遊☆白書』の戸愚呂弟。戸愚呂が負けるのは浦飯幽助(厚切りジェイソン)だけでいい。果たして「笑い王」は爆誕するのか、歴史的瞬間に期待したい。

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