シーズン1ラストの衝撃
ドラマのシーズン1は、のちのシーズンと比べれば、まだまだ原作に準じた展開だった。
まず、アンがアンだ。「11歳」「小さな顔は青白くて、肉が薄く、そばかすが散っている」「口は大きいが、目も大きく」「額が広く豊か」(『赤毛のアン』松本侑子訳/文春文庫)といった原作の描写を読んだ読者が脳内にイメージした姿がそこにある。高畑アニメ版とそっくり。
駅に迎えに行ったマシューが男の子でないことに戸惑う場面も、アンをひとまず受け入れるまでの展開も(馬に名をつけるつけないの小さな違いはあれど)原作どおり。
第2話あたりから、マシューが馬に乗って大疾走したりして、原作イメージと違う場面も出てくるのだが、紫水晶、木いちごのジュース事件、ギルバートに石板をくらわせる事件など、原作の重要な場面をしっかり押さえて展開していく。
『アンの夢の家』(第6『赤毛のアン』)のエピソードを連想させる場面がさりげなく入ってきたりして、「モンゴメリが今書いたらこうなるのでは?」という想像を大胆に駆使して作った愉悦がここにあるのだ。
だがシーズン1の最終話である第8話は、主要登場人物の生死をひっくり返した上に、原作にはない新キャラクターをふたりも突然登場させた。
孤児だったアン(エイミーベス・マクナルティ)を引き取ったマシュー(R・H・トムソン)とマリラ(ジェラルディン・ジェームズ)。作物を積んだ船が沈んでしまい、家を担保にお金を借りることに。だが、マシューが心臓を押さえて倒れてしまう。
絶体絶命のピンチだ。
マシューたちの農場で働いていたジェリー(エイメリック・ジェット・モンタズ)と一緒にアンはお金を工面しに行く。ドレスを返品して家の物を質屋に売る。
ジェリーは馬を売りに行く。だが、その直後、ジェリーは、ふたりの男に、路地裏で襲われてしまう。
殴る蹴るの暴行を受け、お金を奪われる。
このふたりが大悪党、新キャラクターだ。
募集していた下宿人も決まり、いろいろな助けもあり、手を尽くして、どうにか借金問題は解決する方向に進む。
が、下宿人となるのが、あの大悪党ふたり組だったのだ。
もちろんアンもマシューもマリラもそんなことを知らない。ジェリーも、襲われた男の顔を見ておらず気づかない。気づいているのは、視聴者だけ、という状況で、シーズン2へつづく!
いわゆるクリフハンガーだ。
海外ドラマで時々あるパターン。シーズン最終話、一応決着させておいて視聴者を満足させつつも、ぐいっとすごい展開をぶっこんで「えええー、こっからどうなるの!?」って引きを作って、シーズン2を期待させる。
製作総指揮は『ブレイキング・バッド』のプロデューサー・脚本家のモイラ・ウォリー=ベケット。
シーズン2は、さらに大胆に原作から離れて展開していく。なにしろ、シーズン2の1話目でギルバートは、村を出て、世界を冒険するために蒸気船で真っ黒になって働いているのだ。
『アンという名の少女2』がNHK総合で始まる(9月12日から、毎週日曜日よる11時〜)。今週から、毎週、放送タイミングに合わせて各話レビューを展開していく。
『赤毛のアン』の世界を大胆に蘇らせたドラマ版のシーズン2をお楽しみに!
『アンという名の少女』
原題:Anne with an “E”
制作:2017年 カナダ
原作:L・M・モンゴメリ
製作総指揮:モイラ・ウォリー=ベケット
キャスト
アン・シャーリー(エイミーベス・マクナルティ)(上田真紗子)
マリラ・カスバート(ジェラルディン・ジェームズ)(一柳みる)
マシュー・カスバート(R・H・トムソン)(浦山迅)
ダイアナ・バリー(ダリラ・ベラ)(米倉希代子)
ギルバート・ブライス(ルーカス・ジェイド・ズマン)(金本涼輔)
レイチェル・リンド(コリーン・コスロ)(堀越真己)
ジェリー・ベイナード(エイメリック・ジェット・モンタズ)(霧生晃司)
Netflixシーズン1から3まで配信中
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